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堕天使の君と、恋に堕ちるまで  作者: ラストジェネレーション


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第三話 天使の掟

 堕天使と、森の中を散策している。空腹も疲労も覚えないこの身体では一日に進める距離も段違いに長いためか、周囲の景色は目まぐるしく変わる。


「天使、来ないですね」


「今日が日曜日だからよ」


「え..? それと何か関係があるんですか?」


「天使の掟。神様が定めた安息日には、働いてはいけないの」


「へぇ....」


「何? 貴方は毎日働いてませんけど、って言いたいわけ?」


「ち、違うよ! 勝手に解釈すんな!」


「..。そう、なら良いわ。とにかく、今日は敵も襲ってこないから、ここでのんびりしましょう....」


「本当に大丈夫なんですか? その掟って奴にどれだけの強制力があるのかーー」


「破ったら堕天使になる。それだけよ」


「......」


 気まずい空気になってしまった。僕と堕天使は、知り合い以上友達未満の関係で、今まではそつなく上辺の会話だけで乗り切っていた。


 こんな些細な話題が、彼女の地雷であったとは..。


「ねぇ」


「何よ..」


「ミカエルは、暇な時は何をするの?」


「別に。神を殺す方法を考えているくらいよ」


「....」


 暗い。たまにあるんだ。普段の何気ない対話から一転して、どんな質問をしても必ず裏目に出てしまう時が..。


「ミカエル」


「だから何よ..。今日の貴方少し変よ。いつもそんなに話しかけてこないでしょ」


「え....、そうだっけ?」


「貴方、私の事を嫌いだって前に言ってたじゃない」


「あ....」


 確かに僕は、彼女の事を嫌いだと生前に一度だけ言った。執拗に話しかけてくるから、もう構わないでほしくて、思ってもない事を口走ってしまったのだ。


「....そうだった。ごめん、あの時は、、」


「言い訳は聞きたくない..」


 でも、そんな前の出来事をずっと引きずって、彼女は僕と距離を置いていたのだろうか? あれは本心じゃなかったと、伝えるべきなのだろうか....。


「ううん。僕は君の事、嫌いじゃないって伝えたかった」


「....」


「僕は、ミカエルの事を、、と、友達だと思ってる」


「......」


「だから、これからもよろしく....」


「..........」


「..........」


 昼間のほぼ一方的なやり取りはそれで終わりだった。僕とミカエルは互いに沈黙を貫いたまま、川の近くの、苔の生えた岩の上で簡単な手作業をしていた。


 夜が来た。手元が暗くなって完全に見えなくなった時、獣の鳴く声も、虫の囀り一つしない完全な無音の空間で、その声はした。


「..。私ね、なんで堕天使に堕ちたと思う?」


「......」


 見当が付かず、不意に胸元を握り締めると硬い感触があった。


「....。ごめん。今言った事は忘れて」


「うん..」


「でも、あともう一つだけ君に伝えなくちゃいけない事があるの....」


 その後に続く言葉はなかった。何時間経ったろう。暗闇に目が慣れ始めたものの、ひとまず身体を横にすると眠気が襲ってくる。


 意識が朦朧としてきた。僕はまだ、彼女の答えを聞けていない。


 僕が死んでから、初めての日曜日が終わりを迎えた。



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