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妖狩  作者: 定春
第一章 東編
8/30

EPISODE8「化猫」

  

         

 列車での異変を解決し、正式に一之瀬 光が妖狩陣営に仲間入りした。


    ー7月3日(土)AM10時30分頃ー

風雅とヒカルはコンビニに昼食を買った帰りで街を歩いていた。

「いやー今日は実に平和だ。」

「先生、真の平和を感じたいなら荷物持ってください。」

「平和やなー。」「誤魔化さないでください。」

と談笑していた時であった。

          ドサッ!

と二人の上にあったマンションから何かが落ちてきた。「げ、人間!?」

落ちてきたのは女の子であった。

辺りは騒然となって悲鳴が飛び交う。

風雅だけは冷静だったので、一目散に女の子を助けに向かった。

「おい、しっかりしろ!ヒカル病院に連れてくぞ、救急車呼んでたら手遅れになる!!」「はい!」

風雅は女の子を抱え、たまたま近くにあった病院に駆け込んだ。

     

      ーAM11時50分 入院ー

        「ここは…どこ…」

病院のとある病室で少女は目覚めた。「あっ起きた?」隣で少年の声がして、見ると少女の視界の先にはヒカルがいた。

「良かったぁ目が覚めt…」

「アンタ何してくれてんのよーー!」

「ぎえぇぇぇぇぇぇ!?」

少女は自分を助けた1人であるヒカルの顔に渾身の一発を打ち込んだ。

「え、ヒカル!?」

隣で漫画雑誌を夢中で読んでいた風雅は、ヒカルが殴られたことで事態に気づいた。

「せっかく死ねると思ったのに、なんて事してくれんのよ!」

「お嬢ちゃん、取り敢えず落ち着こう。君は落下の衝撃で気が動転しているんだ。」「うるっさい!」

少女が怒号をとばすと、突然風雅とヒカルの身体がゆっくりと宙に浮いた。

「うぉぉ身体が!」「え、何これ!」

少女が浮かせたのであろうが、彼女も自分の力に驚いていた

「いやお前も知らないんかい!早くこれ解け。」「アタシも解き方分かんないわよ!」

「ゆっくりと深呼吸するんだ!そうすれば落ち着くだろ?」

ヒカルは少女に深呼吸を促し、それに従うと次第に二人の身体はゆっくりと床に近づいた。

「ごめんなさい…またやっちゃった。」

少女は涙目になりベッドの上で土下座をした。

「君、妖だったのか。どうりでビルから落ちても軽い出血だけで済むはずだ。」

「それにしてもすごい術式ですよ。花瓶どころか大人二人浮かせるなんて…」

少女は謝り続けた。

「ごめんなさい。色々と混乱しててそれで…カッとなっちゃって。傷付けるつもりは無かったの!」

「分かったから、もうベッドに頭付けるのやめとくれよ。」

風雅はなぜ自殺未遂をしようとしたのか少女に聞いた。

少女が言うには「クラスメイトを傷つけたから。」と証言した。

「いくらアタシのことを散々イジメていても、クラスメイトには変わらない…だけど傷付けちゃったんだ。この体になって最近不便過ぎて、いっそのこと自分で終わらそうと思ってたんだけど…」

少女の名前は“東雲 琥珀こはく

ヒカルと同じ中間一貫校に通う中等部の生徒だ。

「何か最近中等部の方治安悪いって聞きますね。」

「まじか。終わってんなお前らの学校。」


その時だ。風雅のケータイに一通のメールが届いた。

風雅は病室を出てメッセージを確認した。

宛先は「あづま」。

        「化猫に気をつけろ」

この一言だけが記されていた。ケータイを無言で閉じると病室でヒカルと話す琥珀を覗いた。

(まさかな…)

と心の中でつぶやき、再び二人の元に戻った。


琥珀は風雅のことを見て、口を開いた。

「ねぇ、何でアタシのこと助けてくれたの?」

唐突に質問をした。風雅は上手く言葉に表せず、少し考えた末に答えた。

「まぁ人として当然のことをしたっていうか…あのまま助けなかったら一生後悔する気がしたんだ。まだ届くはずの手を二度と離したくなかったから…って感じかな。」

「ふーん」

ほんの少し琥珀は嬉しそうな顔だった。


     ー7月3日 PM20時02分ー

密かに琥珀の動向を探っていた風雅は見舞いを装い、病室にやってきた。

「琥珀ー何好きか分からんからとりあえずいちご牛乳2パック買ってきt……!?」

風雅が病室に入った時、そこに琥珀の姿は無かった。

ただ、ご丁寧に窓が空いていた。風雅はいつもよりも焦り気味で窓から体を乗り出して辺りを見回した。

「おい、どこ行ったんだよ!」

しかし、ただ地道に探しても見つからないため、風雅は一度目を閉じた。

再び開くと風雅の瞳孔は水色に光り、その視界は建物や生物がモノクロに映り周囲には水色に輝く玉が浮いていた。下を覗くと、水色の玉が塊となって一本の道になっていた。

元をたどると、風雅が今居る窓から繋がっていた。

風雅は窓から飛び降りて水色の玉の道をたどった。

「霊子を視るために使うこの眼、普通に疲れるんだよな…巨大な霊子の塊がこの先の道を記してくれる。琥珀の場所も分かるはず。」

この眼は妖全員に備わっているが、一つ欠点がある。それは霊子以外の背景がモノクロになるので大変視界が悪いのだ。

       「いてっ、いだ!痛い…」

転んだり、電柱にぶつかりしたが霊子の道は一つのマンホールの上で途切れていた。

「ここか…」

風雅は霊視眼を解除し、マンホールの蓋を開けた。そしてマンホールの内側に付けられたタラップに足を引っ掛けて降りていく。

          ー下水道ー

「うえ臭っせ。帰ったらいつもより洗濯と風呂は倍だな。」

再び、一瞬だけだが霊視眼を使用し、下水道の道を確認しようとした時、突如体が床から離れた。

「おろ?」

風雅の体の向きが横になり、そのまま右向きに高速移動を始めた。

「これ違う…横向きに移動してるんじゃあねぇ、横に“落ちている”んだ!!」

本来横に行くべき道は壁などない一本道。純粋に減速する術はない。しかし風雅は冷静に考え、壁に拳をぶつけストッパーの役割を持たせるというブッ飛んだ方法で回避した。

ガリガリと音を立てながら横へ下る最中。突然重力が元に戻った。

「お、戻っt…あぎゃゃぁやぁや!!!」

戻った瞬間風雅の体がベタン!と床に張り付いたように突っ伏した。

「次は圧力!?潰れる潰れる、この下水道はダンジョンですか!?」

顔を床にひっつけながらほふく前進で先を目指していく。


次第に重力が弱まり、少しずつ立てるようになった。

次の仕掛けが来ない内に走って先を目指す。

先の道から何やら怒号のようなものが聞こえた。

ついに最深部へと辿り着くと、巨大な人型を模した化猫が壁をひっかき、よだれを垂らしうなっていた。

「ふぅ…ふぅ…ふぅ…!」

「お前…もしかして琥珀なのか…?」「!!」

風雅の存在に反応し、ゆっくりこちらを向き脚に力を溜めて風雅に突進を仕掛けてきた。

ここで東刑事から受け取ったメールの文面を思い出した

      ー「化猫に気をつけろ」ー


とっさに化猫の爪を回避し、胴体に回し蹴りを入れた。

化猫は壁に激突し、猫の型ができた。

「死んじゃえ、死んじゃえぇぇぇぇ全部死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

化猫の悲痛な叫びが下水道内に響き渡り、同時に紫色のオーラが一帯に広がった。

「これがさっきのトラップの正体か!」

一瞬風雅の体が沈み込んだが、化猫の精神が不安定なのか重力が弱く、何とか歩ける程のレベルだった。

「琥珀、しっかりしろ!今お前は自分の式神に支配されているんだ、気をしっかり持て!」

重くなった体を引きずり風雅は琥珀の肩をつかんだ。

「お前もどうせアタシから離れていくんだ!せっかく友達になれると思ったのに!」

「おい、落ち着け。何があったか分からんが俺はお前を見捨てない!これだけは信じてくれ!」「!?」


化猫は風雅の声が聞こえたのか我に帰った。

うめき声を上げて頭を抑えて壁にもたれかかった末、化猫の装甲がドロドロと解けて中から琥珀が現れた。

「はぁ…はぁ…ありがと、たまに発作でなっちゃうの。」

そのまま座り込んで膝を抱えた。

「アタシね、友達が欲しいの…でも気づいたらみんな傷ついててどんどんアタシから離れていくのよ…そんなアタシも気づいたらこんなバケモノになってて…もうおかしくなりそう!」

「そうか…じゃあ俺友達になるよヒカルも巻き添えな。」

「え、でもそんなことしたらまたアタシが傷付けちゃう!」

「大丈夫、俺強いから!」

とサムズアップでアピールした。


 「じゃあ…アンタのこと、信じる…」「なら良かった。」

「明日さ、」

琥珀は頬を染め、体をもじもじと動かす

「明日一緒に遊ぼ!」「……あぁ」

「あれ?けっこう勇気出して言ったつもりだったんたまけど…もしかしてだめだった?」

琥珀は返答がないことに不安を覚え涙目になっていく。

「明日色々持ってくるよ。」「へ?」

「なに鳩が豆鉄砲食らった顔してんだよ。明日は遊ぶんだろ?トランプぐらいだけどな。」

琥珀の顔はどんどん赤くなり、唇も震えた。そして

「いやったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

と嬉しさのあまり飛び上がった。だが、飛び上がったまま下に降りてこない。嬉しくて術式が暴走し、無重力状態になってしまったようだ

「あの……降ろして?」「ごめん無理だわ。」

               

               EPISODE8「化猫」完

 

          次回 「泥々」

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