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妖狩  作者: 定春
第一章 東編
7/30

EPISODE7「幻想」

 ヒカルを自分の教え子とすることを断固拒否していた 風雅だったが、まんまと甘味に釣られて弟子入りさせる ことに。別館にある道場で修行を始めようとした時、東 刑事から一本の電話が入った。内容は山手線を走る特急 電車で相次いで起こる事件を調べて欲しいとのこと。

     

      ーAM9時30分 列車到着ー

        

          「来たぜ。」

ヒカルは足取りが重く、風雅は獲物を見つけた獣のよ

うに舌で唇をなめた。

「さ、任務開始だ。よろしくお願いしまーす!」 

恐る恐る乗車する。しかし列車に入って乗客を見渡すと何の変哲もないただの電車だ。大学生、会社員。皆眠気を我慢し、電車に乗っていた。すでに眠っている人もいる。

「問題が確認されたのは3号車だ、行こう。」

「ちょっと、待って…!」

ヒカルは小声で話し、風雅について行った。

         ー列車発進ー

風雅は2号車と3号車の間にある通路を通り過ぎると同時に妖と戦うために着る特殊防護服へと着替えた。

ヒカルはあまりの早業に呆気をとられた。

「いいなぁ。僕にはそういう服ないんですか?」

「お前にこの防護服はまだ早ぇ。市販のジャージで我  

慢しな。」

そういう服って僕が一番必要なはずだけど…と疑問を持ったが風雅は先へとぐんぐん進む。

      

       ー9時32分 列車内ー

異変は起きた。ヒカルが風雅の後を追って歩いていると彼の背中にぶつかってよろけた。

「ど、どうしたんですか?!」風雅は少しを間をおいて冷静な声で話した

「血だ…。」「!?」

ヒカルが風雅の体から少し顔を出して床を覗くとそこには数滴の血痕が付いていた。


「!、3号車にいる皆さん。床に血痕があります!ここにバケモノがいるかもしれないので気を付けてください!自分の身を守るんだ。」

正義感に駆られ突然3号車の乗客に向けてヒカルは注意喚起をし始めた。が、誰も彼の言う事に耳を貸さない。それどころか無反応であり、

耳があるのに無いようなそぶり。床の血痕も誰も見ない。目があるのに無いようだ。まるでマネキン。

「ヒカルくんよぉ、せっかく注意してくれたのは悪いが3号車の人達はもうダメみたいだ。すでに全員ヤツの術中さ…。」「そんな…!」

その時二人の目の前に光る謎の触手が列車の床や壁から現れた。

風雅は一回だけ瞬きをした。それだけだ。彼は何故か座席に座っていた。

「!?」

先程まで午前中で日光が車内までさして暖かったが、風雅が外を見ると空は橙色の夕焼けに変わっていた。

「まさかこの俺が術中にはまるとはな…」それは風雅自身も気づいていた。長年積み上げたキャリアがこれは幻と言い張っている。


 この幻を振り払おうとするものの、やり方も結果の保証も出来ないから下手に手が出せない。出せないから座って考えることにした。

「あーこれ絶対俺やられた後にヒカルもやられたパターンだ。絶対そうだ、うん。」まったく暖かくない夕陽を背に受け考えていると

「まーた1人で考えてんの?」「?!」

彼の目の前には同じ年代ぐらいか年下ほどの少女が目の前に座っていた。そして目を見開き、座席から立ち上がった。

「お前…“ハナ”か…!」

「恋人の顔も忘れちゃったの〜」

花と呼ばれる少女は風雅を嘲笑ったかのような態度を見せた。少し冷静になって再び座り、花と話した。

「お前は大正の時代に死んだんだ。なぜここに居る。」

「ひっどーい!君が大好きな彼女ちゃんが目の前に居るんだよー!」

「答えになってねぇぞ。見た目、性格は花そのまんまだ。だが彼女は俺を庇って確実に目の前で死んだ!それが証拠だ。」

風雅が血相を変えた後、沈黙が列車に伝わり、走行音だけが響く。

花は突然人が変わったように勢い良く席から立ち上がった。

「恋人だって言い張れば簡単に騙せると思ったのに!」

「やっぱてめぇ別人じゃねえか!ここは幻術の世界、早くここから出せ!」

「毒の効果が切れるまでは無理なんだよ!」

「じゃあ残念だったな!妖にはあまり毒効かねぇんだぜ!」「何だと!」

その時夕焼け差す列車の世界がバリバリと音を立てて

崩れ始め、風雅が目を開けると元の朝日差す世界に戻っていた。

      ー「幻想(The Illusion )」ー

「先生!」「おう、すまねぇ。まさか敵の術に掛かるとは…」

二人の目の前には女体とクラゲが合体したかのような妖が触手をうねらせていた。

「私の聖域を脅かす者は…許さん!」

触手を風雅に向けて伸ばし攻撃しようとしたが、難なく掴まれ、体を引き寄せられた後風雅の強烈なパンチで3号車の後方まで吹き飛ばした。

「信じられん…私の力を凌駕する妖がいるとは!」

「そりゃ長年引きこもってりゃ何も分からんわな。俺は警察の命を受けて来た、妖狩エージェント・『神狼』!そして俺の弟子、妖狩エージェント・『ボーイ』だ。」「ちょ、僕だけダサくないっすか!?」

『海月』は触手を巻いて3号車から飛び出し、後方車両を目指して移動し始めた。

「まずい、3号車以外の乗客はシラフだ。危害が及ぶ可能性がある!」

「先生はアイツを追って倒してください!僕は乗客を!」「お前……分かった!」

ヒカルは先に4号車に飛び入った時、『海月』は触手で乗客を掴み、人質を取り、投げつけてきた。

「うわぁぁぁ!」「危ねぇ!」

ヒカルは人質の男性をキャッチしてまだ安全な2号車への避難を呼びかけた。

「このクラゲ女が!」

風雅はアッパーカットで『海月』を列車の外に出したが、この時列車はトンネルの中に入っており、風雅は追いかけて電車の上でお互い睨み合った。

『海月』は不適な笑みを浮かべ、トンネル天井部分を触手で剥がし、列車内に投げた。「ヒカル!」

この時ヒカルは乗客を後ろに避難させていた。残るは母と娘の親子のみ。その時だった。列車の天井からコンクリートが正確に親子の上に落とされた。母親は娘を庇って頭に大怪我を負った。外したことに腹を立てた『海月』は舌打ちし、再度新たなコンクリートを投げた。

娘が頭を抑えて自分の身を守ろうとした時

「大丈夫?」

頭の上で男の声がした。

ヒカルがギリギリでコンクリートを背中で受け止めていたのだ。

「ケガ…無いかな?」

頭から血を流しているのにも関わらず、ヒカルは娘の心配をし続けた。娘は泣きながら「うん!」と頷いた。瓦礫と化したコンクリートをどかし、ヒカルは母親を担いで安全な場所に運んだ。

         ー9時47分ー 

列車がトンネルを抜けた

“海月”は触手を伸ばして風雅の顔を殴った。この時も少し幻を見るのだ。しかし負けじと気合いで幻を払い、進んでいく。

「心配するのは自分以外にしときな!」「何だと!」

“海月”は列車の車輪に触手を生やし、列車を大きく脱線させたのだ。

       ー9時47分 列車脱線ー

3号車にいた乗客は脱線の衝撃で幻が解け、全員怪我を負ったが、軽傷である。他の乗客も運よく軽傷で済み、ヒカルが扉を開けて、乗客、車掌を逃がした。

風雅と『海月』は列車の中に入り、睨み合っていた。

「あんたしつこいよ!だから女が死んだんだ。」

「おい、今の戦いに関係ねぇこと言うなよ…乗客を危険にさらした俺にも責任があるが、この列車内で度々殺人を繰り返したお前を必ずここで倒す!」

「この若造が!この列車が走り始めた頃からいる私に勝てるもの…か……!?」

この時彼女が目にしたのは、たかだか20年積み重ねた霊力とは比べほどにならない霊力。50年いや、それ以上高められた強者のオーラ。

彼女はまるで狼に睨まれたウサギに等しい。

風雅の右足に強烈な風が溜まっていく。“海月”は触手を盾にして“何か”を防ごうとした。

     「一発で決めるぞ…“鎌鼬かまいたち”!!」  

サマーソルトキックから放たれた風の刃は『海月』の触手の壁と体の防御を無視して縦に真っ二つに切り裂いた。

「はへ…」

『海月』は血飛沫と臓物を撒き散らしながら灰化消滅した。

「東さん、任務完了したが思ったより損害が激しい。すぐに救急車呼んでくれ。」

風雅は電話を切り、ヒカルと合流した。

「先生、お疲れ様です!」「あーそのさ。」

風雅は何かを言おうしているが、ちょっと恥ずかしがっていた。

「その何だ…今回でお前が、結構動けるって分かったから…その、うーーん。」「先生?」

風雅は自分の中で迷った末、ヒカルに向けてサムズアップをした。

「俺人褒めるのとか苦手なんだよ!だからこのサインをお前に送る。古代ローマ時代、と称賛に値する行動をした者に与えられたサインだ!忘れんな!!」 

ヒカルもサムズアップサインを真似して、不思議そうに自分の指を見つめた。そして「はい!」と元気よく返事をした。

「あっ、コンビニでスイーツ奢ってくれよな。約束だろ?」「は、はは…了解」

言ったからには守るしかない。と自分の残り少ない小銭の入った財布を見つめるヒカルなのであった。          

               EPISODE7「幻想」完



         次回 「化猫」

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