EPISODE55「戦禍」
最終回!
今まで10年以上協力関係を築いていた警察が財団HANDと協力関係にあると判明し、財団HANDに占領された警視庁本部にて妖狩たちは強制解散&抹殺対象にされてしまう。
嫌な予感がした風雅は家まで向かうが案の定家が“妖狩・律”という新たな組織によって囲まれていたのだ。
その中での隊長と思わしき赤髪の青年、紅 悠介と風雅は対峙する。
悠介は特殊警棒のような剣を武器としており、向かってきた風雅を軽くあしらう。さらには至近距離から炎を掌から放ち、風雅のマフラーに引火した。
「くそ!」
さらに悠介は剣に触り、そこから炎が伝わり、刃が熱により赤く染まり、刀身を炎が覆った。そんな悠介の術式は…
ー「“焔”」ー
文字通り炎を操る術式。自身を巨大な点火器に見立て妖力を炎に変換、点火することで発動する。さらに悠介は術式を独自の発展させ、物体に炎を伝わらせ武器にすることを可能とした。
「炎の妖…自然系の術式とはまた珍しい…。」
「昨今の妖は現代に染まった術式を身につける…自然の脅威を知らないからな。」
悠介の炎はただ赤いだけではない。青や紫といった鮮やかな色も混ざった紅蓮の炎。
周りにある看板や道路標識の柱が熱によって溶け始めた。
その温度じつに約2000℃。鉄の融点1538℃を超えていた。
「こりゃやべぇな…。」
風雅はマフラーを取り、右手に巻き付けた。
「『神狼』“超変身”!!」
マフラーと右腕を媒介にして“武装”を展開。さらに髪色、瞳の色も変化。
(これなら母様のマフラー燃えないな…。)
再び風雅は悠介に向かって攻撃を仕掛ける。悠介は前方一帯に炎を放つ。しかし風雅は跳び上がって背後に回る。そして体が逆さの状態狼のオーラを纏った“疾風弾・V3”を発動。狼が悠介に噛みつき吹き飛ばす。
「くっ!」
剣を道路に刺してストッパーにしたおかげでダメージは浅い。
「さすがは最強の妖、一筋縄では行かないか…!」
剣の炎はさらに火力を増した後、全て吸収されはたから見ればただの剣にしか見えないが、その刀身の温度は2000℃を保ったままである。
「俺は全ての仕事において、常に全身全霊で取り組む…。」
「“焔斬り”!!」
技を出す一瞬、刀身から炎が吹き出し、風雅に向けて振り下ろした。風雅は横道に逸れて難を逃れたが、剣が当たった場所は炎の道が出来た後真っ二つに裂かれた。
「危ね!」
風雅は跳び上がって空中からの攻撃を仕掛けようとする。
だが悠介は次の一手を既に用意していた。
悠介は両手を合わせて左手をゆっくりと後ろに引いていく。すると炎の弓矢の完成だ。
「“灯矢・V2”。」
炎の弓から三本の炎の矢が放たれ、一本が風雅の顔をかすり、風雅の右脚の太もも、胸に突き刺さった。
そして地面に落下、1000℃の炎に藻掻き苦しむことになる。
「一手遅れたな…妖狩・『神狼』。」
悠介は剣先をコンクリートの地面にに擦り付けながら風雅に迫る。
やがて刀身に熱が蓄積され赤熱し、振り上げた時だった。
バシュ!!
風雅の影から何かが飛び出し、悠介の剣と鍔迫り合いを始めたのだ。
そしてその何かは風雅を追い込んだ悠介をいとも簡単に弾き返し距離をとることに成功した。
「なんて様だ、妖狩ともあろう奴が…。」「お前は…!」
風雅を助けてたのは人造人間の一人、“騎士”の称号を持つ円であった。
「お前なんで…。」
「何故かは知らんが暦が助けに行けとうるさくてな。このまま見殺しも検討していたが、このまま騒がれても迷惑だと思ったから助けた。ま、助けて正解だったな。」
「…お前は財団の…何故そいつを助ける。」
「別に助けたくて助けた訳ではない。こいつに死なれちゃ色々と面倒らしいからな。 」
円は風雅にボソッと「行くぞ…。」と囁いた。悠介は再び“灯矢”を撃つが、円の“黒穴”によって全て闇の穴の中に消えてしまった。その間に風雅と共に影に入り、家の中にいる花と合流。
「風雅くん、円!?どっから来たの!」
「話は後だ緋月 花。」
花と合流した後、円は花の影に入り、暦が術式を使って出現、風雅、花の手を握って人造人間たちの隠れ家へ瞬間移動した。
悠介は八雲邸の戸を蹴って中に侵入したが、そこには人っ子一人おらぬもぬけの殻だった。
「うお、ここどこ!」
「俺たちの隠れ家だ。」
ここはどうやら東京郊外のどこかの山にある小屋らしい。
「兄弟も来たか!」
風雅が振り返るとそこには仲間たちがいた。
「実は暦ちゃんが作戦室まで来てアタシたちをここまで移動させてくれたのよ。」
一方の暦は術式の過剰使用で口と目から血を吐いた。
「暦!」
椛が慌てて駆け寄り、体を支えた。そして元妖狩たちの方を振り返る。
「あんたらのせいでまた暦が能力使っちゃったじゃない!腹立たしい奴ら…あんたらも財団と同じね、散々利用した挙句捨てるのよ!」
「よい椛…彼らの事をそんな悪く言わないでおくれ…。」
暦は目から垂れた血を拭って小屋のドアを開けた。
「ノブナガが…遂にやりよった…。」
「どういうことだ…。」
「先の警察との騒動、妖狩・律の活動開始、それら全てにノブナガが関わっておる。」
なにも知らない一同は衝撃を受ける。
「たしかに、オレたちを切ろうと思えばいつでも出来たのに、タイミングが良すぎる。」
「おい嬢ちゃん、あの戦争野郎何しでかしたんだ?」
「奴は自身の術式を使い、世界を創り変えてしまった!」 『!?』
この知らせばかりは一同だけではなく、人造人間たちも衝撃を受けた。そこで雷牙が口を挟む。
「奴の術式は術式のコピーじゃないのか?」
「それは第一の術式なのじゃ。奴のもう一つの術式は…」
ー「“戦禍”」ー
一度だけ使うことを許された術式。大量の妖力を消費するのと引き換えに自身が望む世界に創り変えることが出来る。
「んだよそのデタラメな能力は!」
「奴は一体なにに創り変えたんですか…。」
『それについては俺から話そう。』
突如隠れ家内に世界を創り変えた張本人であるノブナガの声が聞こえた。風雅たちは臨戦態勢で構えるが、ノブナガはこちらの状況が分かっているかのように一同を宥めた。
『今日はお前らに知らせを持ってきたやった。俺は俺の能力を使い…』
『“この星に住む人類の半分を超人に変えた!”』
「何だと…!」
「それをしてお前は何をしてぇんだよ!!」
風雅は激昂し、ノブナガに怒鳴る。
『これより俺の、俺による俺の為の“ウォーゲーム”の開催を宣言する!!!!』
この宣言は全世界にいる新参の妖、日本国内にいる全ての妖に通達された。
「いかにも戦争の厄災がやりそうなゲームだぜ。」
『全世界からLEVEL2以上の妖が集い、ルール無用の妖同士の殺し合いを行ってもらう!!』
「お前にメリットはあるのか?」
『大アリだ…俺が楽しむ。ただそれだけだ。条件はLEVEL2以上であること。細かいルールは特に無し、戦えれば何でも良い。チームだろうが個人だろうが、人数も制限はない。』
ここから簡単にウォーゲームの概要を知ろう。
①特に細かいルールはない、ルール無用の殺し合い。
②チームでも個人でも参加は自由。参加しないことも選択可能。
③予選開催期間は約5か月間。予選会場は“露・モスクワ”、“米・ニューヨーク”、“中・上海”、“独・チェルノブイリ”、“英・ロンドン”、“日・北海道”。
予選期間を過ぎた後、勝ち残った妖はノブナガに挑戦する権利を得る。
④特に決まったルールはないが時間経過により1ヶ月ごとに罰則として運営側からルールが一つ追加される。
「クソゲーじゃねぇか。」
雷牙のゲーマー側の視点からは何にもそそられないのだ。
『今西洋の妖から質問が来た。報酬がなければ参加しないと。では勝ち残った者には己の理想を叶える権利を授けよう。もちろん嘘だがな。たった今参加許可は下りたぞ。』
「馬鹿しかいないのか…殺し合いだぞ。」
円は私欲だらけの妖たちに完全に呆れていた。
何が楽しくて同族同士で意味のない殺し合いをしなくてはならないのか風雅は意味が分からなかった。
「開催日はいつだ…。」
龍我はおくせずに質問した。
『予選は明日から始まる。』
明日から全世界を会場として全世界で超能力に目覚めた人間たちが罪の無い人たちを巻き込みながらの殺し合いが始まるのだ。なにも知らない新参の超人たちは妖による被害を知らない。だから簡単に報酬に釣られて参加することが出来るのだ。妖による被害を知っている者こそ、一歩踏みとどまる。
『ではお前たちの血肉が飛び交う姿を見せてくれ…』
そこで全世界通信は途絶えた。
元妖狩たちは何とも言えない空気感に襲われる。喜んで良いはずはない。進んで人を殺さなくてはならないからだ。今までなら悪事を働きそれでも更生しない妖たちを粛清していたが、今は誰が妖で、誰が純粋な人間か分からぬ状態なのだ。
風雅はノブナガが言っていた“種は蒔いた”という発言を思い出し、このことだったとは思わなかった。
「わしらもこのことについては予想外じゃった…。このままだと始まってしまう。」
「何が始まるんだ。」「第三次大戦じゃ!」
EPISODE55「戦禍」完
次回から新連載「妖狩第二部:北編」が始まります!乞うご期待!!
次回から新連載枠の第二部スタート!




