EPISODE48「厄災」
妖狩たちは地下にある“神子の間”にて敵であるはずの人造人間の暦の協力を得て集合することが出来た。
だが人造人間の内、神威とナユタは妖狩たちに牙を向けるも、ナユタは雷牙のテクニックにより簡単に懐柔されてしまい、戦意消失。神威は風雅に刃を向ける。
風雅は神威を一時退けた後、電撃や冷気を操る科学者に狙いを定め、攻撃を仕掛ける。
「てめぇが持ってんだろ?ヒカルの核!」
「へー何の根拠が?」
「こういうのって大体マッドサイエンティストが何か握ってるってもんだろ?」
「参ったね。」
科学者は右腕の電撃を解除し、新たに突風を巻き起こした。
「なっ!」
「これで君とお揃いだね。」
一気に悪寒と違う恐怖を感じたが、この科学者は風、雷、氷の三つのエレメントをすでに扱っている。
「同じ術式はこの世に二つも無いはずだぞ!」
「じゃあ、もしそれが全て合わさった別の術式があるとしたら?」「…!」
ー「“天候(The Weather)”」ー
財団HANDの科学者の使用する術式。全ての気象現象を再現することが可能である。
「ほーら、これはどう!?」
科学者は目の前に黒雲を作りだし、雨の弾丸を放つ。
その水はとてつもない威力で、当たっただけで床には窪みが出来る程だ。
風雅は両腕を交差して風のバリアを作り、雨粒を弾いて回避する。
バリアを解いて瞬時に科学者の間合いに入り、顎をスレスレで蹴る。しかし右手に風を纏った科学者は風雅の身体に触れ、吹き飛ばす。
「ぐっ!だけどよぉ…頂いたぜ?核!」
風雅は紐に括られたカプセルのような形をしている核を手に取っていた。
「まさか…ぼくが攻撃した時にくすねたんだね…。」
「八雲殿、その核をあの素体に!」
暦は風雅に呼びかけ、風雅は真後ろにある培養槽に入った全身真っ白のっぺらぼうの素体が置かれた台に登り、培養槽のガラスを素手でぶち抜いた。
「よし…これでヒカルが…!」
その時だ。再び背後に神威の凶刃が迫る。
風雅は素手で刃を握って止め、押し返す。
「お主さっきから何故八雲殿の邪魔をする!お主にヒカル殿は関係ないじゃろ!」
「いいや、あるね。光は元々俺の“友”だった!」
神威の口から衝撃の事実が放たれた。神威が存在していたのは戦国の時代。風雅の知るヒカルは平成生まれの高校生。
「人違いじゃないのか…?」
「人違いなどではない。そもそも貴様の知るヒカルは本来存在しない人間。俺の知る光こそが本物。その核を差し込んでもお前の知るヒカルは帰ってこない。」
「どういうことだよ…。」
簡単に例えるなら完全変態だ。風雅の知るヒカルは中の核を育てるための容器。いわば外見は幼虫だ。
そして情報をある程度仕入れた後、自動的に核は抜かれ、眠りにつく。これは蛹の状態に等しい。そして新たな素体に成長した核を差し込むことで、核に記録されて本来の人物が顕現する。こうして羽化する。だが記憶は引き継がれるという。
「だが貴様に光は復活させない!今ここで斬る!」
「友達だったんだろ?何故止める必要があるんだ!」
「奴が再び蘇ればこの世界は終わりの始まりを迎えるんだ!」
風雅にはあまり神威の言う事の重大さは分からず、ずっと理解に苦しんでいた。しかし暦は何かを悟り、顔が青ざめる。
その時だ、突然花の身体から血のように赤い妖力が立ち昇り、“神子の間”全体を震わせる。
そして花は目を覚ますが、何か違っていた。
髪は赤色のメッシュ混じりの白髪になり、鬼のような角が二本生えていた。
「我が名は“赫夜”!“支配”を司る第一の厄災なり!!ひれ伏すがよい!」
口調も前のゆったりとして和やかな花と違い、赫夜と名乗るこの者は厳かで圧が強い。
そしてその強大な妖力にあてられたのか、人造人間たちは皆血相を変えて、片膝をついた。
(あれ…なんで?私膝なんてつきたくなかったのに…!)
椛を含め、神威やナユタは無意識の内に膝をついていた。
「成熟した女の肉体…これじゃ。私はこれを求めいたのじゃ!!あーはっはっはっ!!!!」
赫夜は笑いをやめ、辺りを見渡す。
「なんじゃこのつまらぬ景色は…雑魚ばかりでせっかくの目覚めが悪くなってしまったわ…。」
赫夜は風雅を見つけると宙に浮きながら彼に迫る。
「お前か…花の伴侶とは。妖力がとても強い、幾多の死線をくぐり抜けてきた妖の顔だ…。」
赫夜は風雅の頬に手を伸ばし、なで回す。
「お前誰だよ。お前が本当の“女王”様かい?」
「私にそんな口を聞いたのはお主が始めてじゃ…ますます気に入ったぞ。」
「そりゃ話が早くて良かった。この場にいる全員の緊張を解け。それとあんた何者だ。」
「私は赫夜。“支配”を司る第一の厄災…はさっき言ったのぉ。大正の世に花と共に生を受けた四つの厄災の一人じゃ。」
そして赫夜が指をクイっと動かすとその場で固まっていた財団HAND、妖狩、人造人間の緊張が解かれた。
「よし、花に戻してくれ。」
「ならん。」「は?」
赫夜はきっぱりと断った。
「ようやく手に入れた肉体じゃ、手放してたまるか!」
「ようやく逢えた俺の嫁だ、手放してたまるか!」
二人が言い争う中で、暦はひどく汗をかき、呼吸が荒くなっていた。
「暦、大丈夫!?」
椛が駆け寄りよろける暦を支えた。
「はじまってしまった…世界の終わりが…!厄災は四つ、その内の一つは女王だった!わしは平安で生きていた時、いつ復活するか危惧していたが今とは…よいか椛、わしらはこの為の軛としてこの世に再び生を受けさせられたのじゃ!!」
「何ですって…!そんなふざけた理由のために…私たちを地獄から戻したの…?!腹立たしい……!!」
「花に戻すんだ。」
「嫌じゃ!殺すぞ!」
「花の体と声でそんなこと言わないでほしい、ほんまに。」
「あーもう五月蝿い!!こんな世界私が早く滅ぼしてやるわ!!」
花、もとい赫夜は十本の指先から巨大な真紅の針が飛び出し、一直線に伸びるかと思えば突然直角に曲がり続け、避けきれなかった戦闘員たちを串刺しにした。
「これは血か!?」
「なんて威力だよ…」
雷牙と龍我も衝撃を受け、軽く立ち入れない。
「へー君たち夫婦ほんと面白いね!」
科学者は隙を見て風雅から核を奪取、培養槽に登り風雅の空けた穴から核を押し当てる。
「さぁ目覚めろぉぉぉぉ!!」
核は素体に吸い込まれ、培養槽を突き抜ける程巨大な光の柱が出現。
その日、日本の中心から放たれた光の柱がテレビからも衛星からも全世界から確認された。
EPISODE48「厄災」完
次回「戦争」
近々第二部を「新作」という枠でなろう小説で書いていきます!第二部が始まったらまたお知らせしますのでお楽しみに!




