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妖狩  作者: 定春
第一部:東編
41/55

EPISODE41「天使」

財団HANDのアジトに潜入するもあっけなくバレた哀れな妖狩エージェントたち。

雷牙と琥珀は風雅と合流するため地下室へ急ぐ。しかし風雅は人造人間ホムンクルスの一人であり、邪智暴虐な王である“キング”と対峙するも彼の術式「“逆襲者(The Revenger)”」の効果で今まで自分が与えたダメージを全てその身に返され、廊下は崩れ、風雅は暗い奈落へと落ちてしまった。


 凱と龍我は正門で戦闘員たちを圧倒していた。戦闘員たちもそろそろ数が少なくなってきたが、この戦闘狂二人は息も上がらず倒し続けている。

「もう終わりかい?プール泳いでるみたいに気持ちよかったのになぁ。」

「まったくだぜ。なんかこう張り合いがないよなぁ一方的過ぎて。…!」


その時だ。凱は持ち前の獣のように鋭い勘で何かを感じ取り、龍我の前に立って大剣を構えた。

その直後、弾丸の雨が二人を襲う。獣の勘がはたらいてとっさに大剣でガードしたのは良いものの、もし1秒でも遅れていたら二人ともアウトだった。

龍我は凱が前方に割って入ったので無傷だったが、数発の弾丸をその身に受けた。不死の能力で完治したが、前方の煙の方を見る二人。その先に居たのは…


「ほう…この連射に耐えるとはな…!」

撃った方向はアジトの倉庫からであり、シャッターを破りながらの攻撃であった。そこにいたのは迷彩柄の服を着て、葉巻を咥え、巨大な機関銃を構えた屈強な大男。凱たちがいる距離から見てもかなりの大きさで2メートルは軽く越えているだろう。

「ありゃ人間の身長じゃねぇな…。」

「凱くん、アイツ結構ヤバいよ…見たことないオーラ出てるもん!」

龍我は怯えるどころかどこか楽しそうであった。


 雷牙たちは風雅の後を追って地下室までやってきた。

「ここが地下?ずいぶんと広い倉庫ね。」

「ここに風雅の反応が無い…もっと下か…。」

 

          ドゴォォン!!


地下室全体が揺れ、埃が落ちる。二人は突然の衝撃で倒れてしまう。

「何!?」

「下からだ!」

そう、この時最深部では風雅がキングの術式攻撃を受け、床が砕かれ風雅は奈落に落ちていったのだ。

地下室の保管庫にもその衝撃は伝わり、一部ヒビが入っていた。

「どうなってるんだ…。」

「おたくの弟さん、うちの実験室でめちゃくちゃやってくれたらしいねぇ。」

「!?」

雷牙たちの前には先程の科学者の男とライフルを構えた戦闘員たちが行く手を阻んでいた。

「お前どうやって…!」

「別の入り口から来たに決まってるじゃない。ほい。」

と軽い口をたたきながらも手から突風を出して、雷牙たちをエレベーターまで吹き飛ばす。

(雷、氷の次は風…どうなってんだ!)

「うーーーんホントは君たちのこと殺したくないんだよねー、面白いし。」

「じゃあ見逃してくれる…?♡」

「それはダメ。」

命乞いが全く通じず琥珀は涙を流した。

「で、こうしたんだ。君たちは死ぬけど灰化する前に肉を切り取って、研究することにしようってね!シェフ!」

科学者が手を叩くと、財団仕様の白い和服を来た男が現れた。


「こちらが財団HANDが誇る26人の“エンジェル”の一人、人斬りの伊蔵いぞうさんでーす!」

「こやつらか…我が財団を嗅ぎ回るネズミとは。」

渋い顔をした侍のような堅い口調で話し、白色の妖力のオーラが全身に立ち込める。

すると袖に隠れた伊蔵の両腕が太刀へと変化した。


エンジェル”。財団HANDに所属する26人の強力な妖の集団であり一般の構成員よりも上位の存在であることが示唆されている。メンバーが持つ能力はA〜Zであり、この人斬り伊蔵が有する能力は…


       ー「“刃(The Edge)”」ー


自身の身体を刃物に変え、対象を切り裂く能力。つまり伊蔵は“Eのエンジェル”となる。


「じゃ、後はよろしくー。」

科学者の男は伊蔵と戦闘員に全てをまかせて去ってしまった。

「切り捨て御免…。」

伊蔵が刃になった腕を軽く振るったと同時に二人は飛び上がる。上手く避けられたと思いきや、エレベーターや爬虫類の入った瓶が細切れになってしまった。

「拙者の術式は…空間まで斬り裂くゆえ、覚悟されたし。」

琥珀は即座に黒い玉を作って伊蔵に投げつける。

「“超重力”、コイツは切れないわよ!」

「ふん!」


           シャキン!


なんと伊蔵はブラックホールが込められた琥珀の“超重力”まで切断してしまった。

「少々重たいがどうということではない…!」

「うそ…ブラックホール切っちゃった…。」

伊蔵は両腕を振るって再び二人を狙うが左右に分かれて避けた。エレベーターは大破してしまう。

「琥珀、ここは俺に任せて風雅の所へ行くんだ!」

「え、雷牙一人でこの人数を!?」

琥珀は最深部へ行くためのエレベーターを目指す。ライフルを持った戦闘員たちが一斉射撃を浴びせるが“斥力リパルジョン”で床に弾き、さらに手を突きだして戦闘員たちを吹き飛ばした。

雷牙は伊蔵の刃を手斧で受け止め、蹴りをくらわせる。


 屈強な大男と対峙する凱たちはその男の放つ機関銃の弾丸を防ぎながら倉庫に向かっていく。

「行け、我が雑兵よ!」

男が右手を挙げて命令すると虚ろな目をした戦闘員が片膝を抱えてライフルを発砲した。

倉庫まで辿り着いた二人はコンテナの影に隠れて銃撃が収まるまでやり過ごした。

「さすがの俺でもあの数の弾は防げねぇ…。」

「『玄武』じゃだめなの?もしくは“武装アームド”とか。」

「確かに『玄武』は便利で硬いが初動の動きが遅いし、“武装アームド”は時間制限が付くから今使う訳にはいかねぇんだよ!3、2、1で左右から飛び出すぞ…」

「いや、そこはイー、アール、サン、スーで。」

「どこにこだわってんだ!」


「1、2、3…今だ!」

二人は飛び出し、銃弾の雨を躱していく。凱は大剣で銃弾を防ぎつつ、隙を狙って振るい、戦闘員を薙ぎ倒していく。龍我は腰から青い棒を取り出してそれを折って伸ばすとヌンチャクになり、銃弾を弾いて凱のように薙ぎ倒していく。

「おま、いつの間に武器を!」

「師匠がくれたんだよ、でも武器使うのオレの趣味じゃないからずっと隠してたんだ。」

戦闘員は倒した。残りは巨漢のみ。

「思ったよりはやるじゃねぇか…だが、コイツは止められん!!」

巨漢は機関銃をスライド移動させながら連射を放つ。凱は走って回避し、壁まで跳んで足場にし、飛び出したと同時に大剣で機関銃の銃口を真っ二つに切り裂いた。

「よし!」

「遅いわ!」

巨漢とは思えぬスピードで機関銃を切断した後の凱を鉄の塊のように巨大な拳で殴り飛ばした。

床に激突した時に鉄の床が大きく凹んだ。一度のパンチで背骨は砕け、床には血溜まりが出来た。

「なんて威力だ…凱くんは不死身だから何とかなるけど…オレが喰らえばどうなるやら…。」


「銃は消えたが、俺様にはまだ優秀な雑兵どもがいる!!」

巨漢が声を上げた時、先程二人に倒されたはずの戦闘員たちがまるで糸に吊るされているかのような姿勢で起き上がり、再びライフルを握った。


「俺様は、シュヴァルツ将軍!!財団HANDの“エンジェル”の一人だ!!」

「おいおい嘘だろ…冗談だろ?あんなゴツいオッサンが天使って…もろシュワちゃんじゃん。」

凱は頭を抱えながら起き上がり、龍我と合流した。


     ー「“司令官(The Commander)”」ー


自分に恐れを抱いた相手を支配し、操ることができる能力を有する“Cのエンジェル”シュヴァルツ将軍の術式。

さらに自身の経験を共有することが可能で、剣や銃を握ったことのない人間もプロ並みに動かせることができる。


「お前強いくせにわざわざ他人の力借りてしか戦えねーのかよバーカ!」「…!!」

と龍我はシュヴァルツに対してキレキレの煽りを効かせる。しかしその言葉が元ナチスドイツ軍人の逆鱗に触れてしまったのだ。

「貴様ぁ…部下を指揮する将軍に対してなんと無礼な!!貴様だけは許さん!」

「お前怒らせんなって!」

「オレは真実を述べたまでですよー。」

龍我は走り出し、シュヴァルツの元へと向かっていく。シュヴァルツは巨大メリケンサックを装備し、拳を振り下ろすが、軽い身のこなしで軽々と回避し、腕の上を駆け上がり顔に蹴りを入れるが当然のごとく効かない。

「なんだこの蹴りは…豆鉄砲か?」 

「さすがに効くわけないか! “龍尾”!!」

水流を妖力に変換し、連撃を繰り出すものの全く効かず一時撤退するが、次は操られた戦闘員たちと戦うことになる。

「俺様の軍は最強だ。いくらやられても蘇る、いくら死んでも代えがきく!!」

そのシュヴァルツの自分の保身まかせの弁論に凱は腹が立った。

「そんなのただの使い捨てだろうが…!自分を犠牲にしてでも仲間を守るのが、軍を率いるリーダーがするべき行動じゃねぇのか!!」

シュヴァルツは凱とは対照的で仲間を大切に扱おうとはしない。彼にとって部下や弱者は“支配対象”に過ぎないのだ。

「貴様ら害虫どもに思い知らせてやろう、将軍というものを!!!」

シュヴァルツは緑色の妖力のオーラを銃に変換し、自分の体の至る所から生えてきて、ショットガン、マシンガン、ピストルなどの様々な銃である。

「こいつ、味方ごと撃つつもりか!!」

「『玄武』、“武装アームド”!」

そしてシュヴァルツの身体かれ無数の弾丸の嵐が一斉射撃として襲ってくる。操られた戦闘員たちも巻き添えで蜂の巣になるが、凱は素早く武装し、龍我にはドーム状のバリアを展開した。

自身にもバリアを付与し一斉射撃から身を守った。

「く…!うぉぉぉぉ耐えろ俺のバリアぁぁぁぁぁ!!!」


           2分後


ようやく一斉射撃が収まった。辺りには血痕と戦闘員と思わしき灰が残されていた。倉庫内のコンテナも車もボコボコ。凱はバリアの持続時間を超えてしまい、かなりの体力を持っていかれてしまった。

「何とか止まったぜ…坊主、アレ使うか?」

「もう四の五の言ってられない…使ってやる!」

龍我の妖力が急激に高まっていく。より強く、より大きく、より熱く、そんな思いを込めながら上げていると、武装解除したシュヴァルツが息を切らしながら立っていた。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!俺様こそが最強だぁぁぁぁエンジェルの頂点など夢ではないわっ!!」

そう高笑いをしていた時であった。突如自分の体が揺れた。

「ん…?」

シュヴァルツが下を向いて確認すると、自分の腹部に綺麗な風穴が空いていた。それもズレもなく本当に綺麗な円としてくり抜かれていた。

「なっ!何……!貴様…」


『!?』

龍我も妖力を上げるのを止め、目の前の突然の出来事に目を丸くした。

二人は見えた穴の先にいる全身を白い布で覆った謎の人物がいることを。

シュヴァルツは口から血を吹き出し、体がよろける。さらには頭に光がポツンと現れ、それが動いて徐々に円が作られていく。


「やめろ…やめろぉ…俺様はぁ最強の…ソルジャーなんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

円が完成した瞬間、それはまさしく天使の輪。その輪から光が照射された時、シュヴァルツは悶え苦しみ体が膨張し、二人の目の前で灰化消滅することなく爆発四散した。

「凱くん!」「中に入れ!」

凱は再びバリアを展開し、爆発に耐え続けた。

爆発が収まると、残っているのはシュヴァルツにトドメを刺した謎の人物。爆炎で布が消し飛び中身が姿を現す。


その素顔とは、水色の髪で目には朱いアイシャドウ。容姿は限りなく女性に近いが、体型は華奢な男性のような印象を受けた。両手には巨大なアームカバーをしており、ぴょんぴょんとウォーミングアップのように飛び跳ねていた。

「坊主…油断すんなよ…冷や汗すげぇぞ?」

「こんな空気、今まで感じたことねぇ…まるで蛇に睨まれたカエル!」

龍我は得体の知れない空気感に一度目を逸らしてしまい、再び見つめたが、すでにその戦士は消えていた。


「……!龍我、目の前だっ!!」「!?」

「えい。」

その謎の戦士が軽く拳を当てただけで龍我の体からバキバキという音が鳴り響き、コンテナまで吹き飛んで気を失ってしまった。

「あの子弱かった。次あなた。」

「やべ、俺死んだ。」

                EPISODE41「天使」完  

   

           次回「黒龍」

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