EPISODE40「逆襲」
妖狩たちはすでに財団側からバレていた。そして全員が財団職員と対峙し、場は混沌を極めていた。
ー財団HANDアジト ロビーー
財団の科学者から「妖は僕の発明」という衝撃の一言が飛び出した。
財団HANDからの支援を受けた者はその報酬として妖に改造されるというのだ。
妖には2種類あり、悲劇的な死をとげ、自力で覚醒した者を“オリジナル”といい、財団からの支援者は手術により後天的に覚醒し、術式を与えられた者に分かれていた。
二人の後ろにも財団HANDの戦闘員が駆けつけてしまった。
「琥珀…ここは分が悪い、地下へ逃げて風雅と合流する。」
「そうね…今さらココで退けないもの!」
琥珀は雷牙の手を叩く合図と共にエレベーターに向けて走り出した。
しかし科学者の男がそう見逃すはずが無く、雷牙の行く手に一瞬で移動した。
「ちょいちょいちょーい。なんで行っちゃうのさ!」 「すまないな、お前と話してる暇はないんだ!」
雷牙は得意の蹴りを繰り出すが、その足を科学者は素手で受け止めた。
「ほぉ君の蹴りは重いねぇやっぱオリジナルの方が僕の模造品より強いね!」
左手に電撃、右手に別の妖力を込め、雷牙に放つ。
(これは…氷!さっきの電気といい何だコイツの能力は!同じ術式はこの世に二つとないというのに…。)
右手から放たれた冷気は一瞬で前方を凍結させ、左手を振り下ろすと、どこからともなく雷が落ちた。
間一髪で避けるものの青い電撃は追ってくる。その時体がものすごい速さで移動し、一瞬にしてエレベーターに辿り着いた。
「このままエレベーターぶち破るわよ!」
「結構ワイルドなんだな…」
重力で圧を掛けてエレベーターの扉を潰して侵入。そして中のエレベーターの箱もぶち破って地下へ急ぐ。
「あーあ、逃げちゃった…。みんなー地下行っちゃって〜。」
財団の戦闘員は無言で敬礼し、別の入口から地下へと入った。
ー最深部 ???室ー
一方地下よりも深い階層で、風雅は自らを王と名乗る人造人間に狙われていた。
キングの一撃は重くて早く、風雅のスピードをもってしてもいなすことは難しい。
しかし一瞬の隙を狙って連撃から抜け出し、キングの背中をハイキックで蹴り上げる。
「王の背中を蹴るとは不敬な…。」
「お前どうせ自分に危害加えるなら全部不敬だろ!」
キングは反撃のパンチを繰り出すがそれよりも速く風雅の拳がキングの顔に届いた。
「ウオラァァァァ!!」「ぐっ!」
拳が顔にめり込んでキングを倒した。しかしすぐに立ち上がる。
顔をよく見ると先程拳の跡がくっきり残るほどに殴ったのに、傷は無くなっていた。普通の妖の再生速度にしてもおかしい。
「お前らまじでナニモンだよ…でも教えてくれないよな…。」
「我々は!」「え、教えてくれんの?」
「我々は財団HANDが再創せし6体の人造人間!そして余はその頂点・王!!」
と背景に花火が現れるかのような豪華なイメージを出すも、風雅には何も刺さらなかったどころかさっきの自己紹介とほとんど同じ文言なので何も分からなかった。
しかし僅かに分かったのは二人の称号。先の戦いで風雅と戦った神威の称号は“騎士”。そして今対峙している明らかに傲慢すぎて女子にまったくモテないであろう男の称号は“王”。残りは四人。そして風雅がこの目で見たのは三人。残りの一人は謎である。
「お前が前世でどんな王様だったか知らないけど、ぶっ飛ばさなきゃいけない奴だってことは分かった!」
「余に楯突いたこと、後悔させてやる。殺されに来い愚民よ!」
そうやって無駄口を叩いているのも一瞬だ。風雅はすでにキングの頭上で足を振り下ろす準備をしていた。
「おしゃべりだぜ?」
足が頭にクリーンヒット、首がありえない方向に折れたが即座に再生、動揺しつつも“旋風・V2”を発動。
様々な壁をぶち抜いて、大量の培養槽がある部屋までキングを吹き飛ばした。
ー正門 龍我 凱ー
二人は正門で戦闘員たちを蹴散らし、好きなように暴れまわっていた。
凱は回転しながら大剣で戦闘員たちを巻き込んで一気に吹き飛ばし、龍我は得意の拳法と流水の術式で戦闘員たちを牽制していく。
「しゃらくせぇい!!なんだその戦い方は、お前ら女の子かっ!?」
凱は地面に手をついて地面をせり上げて拳で砕いて破片を飛ばした。
「なんて乱暴な戦い方だ…品がないなぁ。」
「馬鹿野郎、祭に気品を求めるな!楽しんだ奴が得するんだよぉぉぉぉぉ!!!!」
「それもそうだね…こいつら全員潰すぞぉぉぉぉぉ!!!!」
初対面から犬猿の仲である二人が唯一息が合う瞬間である。狂気の笑顔を見せ、戦闘員を血祭りに上げていく。命を奪うことに対して、敵とみなせば容赦のない龍我は妖力をさらに膨れ上げさせて発剄から放つ“流水”で戦闘員たちを押し流す。
さらに今まで身につけた“龍飛翔”、コマンド入力戦闘法で十人、また十人とまとめて薙ぎ倒していく。
「ホワタァ!アチョ!ホㇹワタァァァァ!!」
「“祭”だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
まさに狂喜乱舞、二人だけの独壇場。誰も邪魔することを許されない。
「くそ!おい、あのお方をお呼びしろぉ!…お…。」
戦闘員が死に際に放った“あのお方”が二人の前に現れようとしていた。
ー最深部 培養槽ー
この部屋には大量の培養槽が置いてあるが、培養液はまだ入っているようだ。おそらく最近まで使われていたようだ。
キングは培養槽の一つに突っ込んで粉々に割り、体にもガラスが刺さっている。
「『神狼』…“超変身”…!」
風雅は警戒してゆっくり近づきながらLEVEL2に“武装”した。制限時間は一分半。
(よし、一分半…それ以内にアイツを倒さなきゃ、まずいことになりそうな気がする…!)
そしてキングは動き出し、刺さったガラスを払って落とした。そしてゆっくりと顔を上げたと同時に風雅に近づき反撃の一打を打つも、武装した右腕でガードされ“疾風弾・V2”を食らい、腹を抑えて怯んだ。
しかしキングの顔は何故か笑っていた。それもどこか余裕を感じさせるような顔をしている。
「は、はは…ようやく温まってきたぞ…!」
「何だと…!」
キングの体から紫色の妖力が炎のように立ち昇る。
「とくと味わえ、余の術式!」
妖力がキングの身体の表面に収束し、右腕に集中する。
そして風雅の胸に拳を当てる。
「感謝しよう愚民よ。よって貴様の力、全て返そう。」
「!?」
その拳から巨大なエネルギーが全て風雅の体に注がれ、その余波は培養槽を全て破壊し、体は耐えきれず吹き飛んだ。
風雅が飛ばされた場所は先程居た廊下。ほとんど自分と同じ威力、妖力、で返されたのだ。
ー「“逆襲者(The Revenger)”」ー
自身が受けたダメージを相手にそっくりそのまま返す能力。受けたダメージは治る分、受ければ受ける分だけ強くなる。しかし対象の力を超えることはない。対象が強者であれば自然と術式効果が強化されるのだ。
キングは追撃で全てのダメージが込められた拳を放ち、風雅を追い詰める。風雅は自分の力の衝撃で血反吐を吐き、身体の骨は砕け散る。
「がぁぁぁぁ!!」
「貴様の冒険もここで終わるのだ愚民よ…最期は奈落でくたばれぇぇ!!」
そのカウンター攻撃の威力で地下室の廊下は砕け、大穴が空き、気を失った風雅は暗い奈落へと落ちていく。
EPISODE40「逆襲」完
次回「天使」




