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妖狩  作者: 定春
第一部 東編
38/51

EPISODE38「潜入」

ヒカルを失い失意のどん底に沈んでいた妖狩エージェントたち。しかし下を向いてばかりではいられないと

前を向き、決意を固めたとき、風雅が財団HANDの人造人間ホムンクルスこよみから貰った赤紙より、文章が送られた。


       『ヒカルのコアは生きている。』


 敵勢力である暦が何故この紙を風雅に渡して文章を脳波で送ったのかは分からないが、文章の最後に財団アジトまでの地図を残してくれた。

作戦決行は2日後の8月27日。それまでに先の戦いの傷を癒やし、鍛え、力を蓄えること。

風雅は万が一に備え、琥珀とヒカルを休学にした。

凱と龍我は風雅からの日程の聞き、憂さ晴らしを兼ねた修行を続行している。


その日の夜のことだった。風雅たちは壊滅した東京の街を高台から眺め、近くの避難所に立ち寄った。

避難所の体育館には子を失った家族、親を亡くした子供、体力の無いお年寄りばかりであった。テレビには亡くなった人たちの最期の笑顔が映っていた。風雅たちは立ち直っていると口で言うものの、やはり後悔と悲しみが襲ってくる。風雅は血が滲むほどの力を入れて拳を握った。

避難所には生き残った数少ない牛鬼会の仲間達が夕飯を作ったり傷の手当てを行っていた。もちろんかしらである凱も相当重傷なはずなのに寝る間も惜しんで尽力していた。

風雅が近づいて凱の肩に手を置いた。

「お前ちょっとは休めよ。そんな酷い傷なのに…後は俺らがやっとくから。」

「兄弟、世話焼いてくれんのは大変ありがてぇが、これは俺がやるべきことなんだ…俺のダチが、俺のせいでこの街を泣かせた。その贖罪は俺が一生掛けて背負うさ。」

「ガっちゃん何カッコつけてんのよ!あんた一人じゃないわ。ウチら皆で背負ってくの!」

凱は一度涙目になったが、頭たるもの涙は流さないと心に堅く誓い、すぐ引っ込ませた。


その時、琥珀が面倒を見ていた赤ん坊が泣き出してしまった。

「あ~よしよし大丈夫だよぉ。風雅どうしよ~。」

風雅は颯爽と赤ん坊に駆け寄り、顔を近づけた。

「よ~し見てろよぉ…ほい!」

風雅は自分が器用なことを利用し、何もない手から赤い花をポンと出した。すると赤ん坊は泣きやんだ後、「キャッキャッ」と笑ってくれた。

「すごい…あんなに泣いてたのに!」


「あら笑ったねぇ。笑顔可愛いなぁおい。」

と赤ん坊の小さな小さな指を人差し指と親指で優しく握ってあやし、サムズアップを送った。

「一回ヒカルにも言ったことあるんだけどさ、俺が人間を護る理由。…人の笑うところを見るとさ、こっちまでクシャッって感じで笑顔になって、心が和むんだ…笑顔それを奪う妖が許せないのさ。」

その言葉を聞いた時、琥珀の心もなんだか暖かくなったような気がした。

(やっぱすごいなぁ…風雅って。)

場は和み、被害者、遺族の方々も笑顔になってくれた。

そしてなんやかんやあって2日が過ぎた。


       ー8月27日 AM9時15分ー


「ねぇ、なんでアタシたちの頑張りをスキップしたの〜風雅〜♡」

「いや、それは…色々と尺ってのがあってな?」

琥珀の言葉に重い怒りを感じた。風雅は冷や汗を流しながら状況を説明した。

「ほらその内皆の出番くるからさ、ね!?」

「まぁそれだったらいいわ!」

琥珀は泣く泣く許してくれた。そして風雅、雷牙、凱、琥珀、龍我が居るのは、財団アジトが下から覗ける小さな崖の上だった。


財団HANDのアジトは衛星写真にも写らない樹海の中にあり、関係者以外入る者はいなければ、入った者は全員帰ってきていない神隠しの森として近隣の住民には恐れられていた。

アジトの周囲半径30メートルは赤外線センサーがはたらいており、感知されれば何をされるか分からない。

では何故範囲内に侵入できたかと言うと、それは特殊防護服に備え付けられたステルス機能である。

肉眼で見れば確かにそこに存在するが、カメラなどの機器を通して見れば、風雅たちの姿は写らない。


「兄弟、何か作戦は?」

「まず遂行するのはハッキングだ。」

風雅が持ってきた赤い紙にはアジト内の細かい間取りが書いてあった。

「このアジトには無数の防犯カメラが部屋中にある。まずはそこから抑える!」

風雅と琥珀と雷牙が外にあるダクトから侵入、そこを伝って最初に警備室に入って気づかれずにハッキング、これで監視カメラは使い物にならない。


次はとある科学者の部屋に侵入、パソコンからデータを抜き取るこれで奴らの企みを警察に突き出し白日の下に晒し上げる。

「最後にヒカルの居場所を特定してコアを回収、最後にアジトをぶっ潰してみんなで帰る!」

「馬鹿の俺でも分かる作戦だったが、果たしてそんな上手く行くのか?兄弟よ。」

凱ですら少し心配に思うほどの作戦だったが、龍我が手を挙げた。

「あっ、はい!」

「はい、龍我くん。」

「オレ達は何すればいいんすか?」

「お前達はなぁ…」


龍我と凱はアジトの正門前に移動した。


   「お前たちは俺の合図で存分に暴れろ!」


「で、正門ここでスタンバっとけばいいのね。」

正門をくぐったすぐ後には刀や銃を装備した財団HANDの戦闘員が見回りをしていた。

「おい坊主、ヘマすんじゃねぇぞ?」

「キミには言われたくないね。」

「んだとこ…!」「静かにしろって!先輩たちの合図があるまで動けないんだからね?」

「すまん…」


一本本筋の作戦では風雅たちはダクトに侵入し、狭い通路をくぐり抜け、上から警備室を探す。

「兄貴、琥珀、この中には神威みたいな妖がいるかも知れないから、妖力は全てシャットダウンしろ…。」

「了解。」

そうこうしてる内に警備室の前に着いたのか、風雅はいきなり通路の中で止まり、玉突き事故が起きた。

「いったい…!」

「着いたぞ…。」

下を覗くと白い制服を着た財団HAND構成員が監視カメラをチェックしていたり、パソコンで何かの作業をしていた。

風雅は蓋を外し、音を殺して警備室に侵入。一人の構成員の背後に近づき、後ろから首を絞めて気絶させ、あとは雷牙に任せ、雷の如きスピードで警備室にいる全ての構成員を気絶させた。

「殺してないよな?」

「心配すんな峰打ちだ。」

では何故雷牙の手刀から血がたれているのか、風雅と琥珀は何も聞かないことにした。

機械いじりが得意な雷牙が監視カメラをハッキング。自分たちの姿がカモフラージュ無しでも映らない様に細工をした。

しかし直接姿を見られれば衝突と報告は避けられないので細心の注意を払うべきだ。


「よし、ここから別れよう。俺はここの地下にある保管庫っぽい場所に行く。琥珀は雷牙について行ってくれ。」

「アンタ一人で大丈夫なの?」

「正直心配。でもやらなきゃダメだし、犠牲は少ない方がいい。」

その返答に心配を感じつつも3人は2グループに別れ、ミッションを進める。


 風雅は特殊防護服の擬態機能で財団構成員の服をコピーし、着用。さらに眼鏡を賭けて堂々とアジト内をうろつく。

(どうだ、ジャパニーズニンジャ方式だぞ。にしても…財団の中って何か…博物館みたいだな…あと床も天井も真っ白で頭おかしくなりそうだ。)

アジト内のロビーは一面真っ白な空間で中央にはティラノサウルスの骨格標本が飾られており、職員全員が堅い表情でパソコン片手にずっと作業していたり、コーヒーを飲んで休憩している者もいた。

アジトは外側から見ればただの巨大な白い立方体だと言う。

風雅は地下への生き方を調べるために、職員の一人に話しかけた。

「あっすんませーん。地下ってどうやって行くんすか?」

「財団職員ならば全員の頭に刷り込まれているはずだ。何故私に聞くのだ。」

冷たい声、まるでロボットのようだ。セリフ一つ一つに抑揚もなくただ淡々と話しているかの様な印象を受けた。

「いやー僕新人なんですよ。へへっ。」

職員はカクッカクッと硬い動き方で横を向き、指を差した。

「エレベーターだ。あそこから地下へ行ける。分かったら金輪際私に話しかけるな。貴様との会話で1分58秒が無駄になった。」

「そうやってダラダラと話してるのも無駄っすよ先輩。んじゃありがとごさまーす!」

風雅は偽の笑顔で手を振りながらエレベーターを目指す

(あれだけ言って怒りもしねぇ…感情も消えてんのか…職場に慣れるのも怖いな。)

風雅は堂々とした態度でエレベーターに乗り込み、地下の保管庫を目指す。


 雷牙たちはダクトを通り、科学者の部屋に辿り着いて止まった。また玉突き事故の発生だ。

「だから痛い!あんたらの尻ってコンクリートなわけ?」

「着いたぞ。」「無視かい…。」

まず雷牙が部屋に降りて辺りを見回す。防犯カメラを見つけて手を振るが、映像に細工してあるので映らないはずだろう。

琥珀も続いて部屋に降り中央のデスクにパソコンを見つけた。

雷牙がパソコンを点けるとぐちゃぐちゃのデスクトップが表示された。

「何だこのアプリの数、デスクトップに何でも置きすぎだろ!?」

「それどうすんの?」

「なに、USBをパソコンにぶっ刺してデータ頂戴すんのよ。さーてお前らは何を隠して何をしようとしてんだ財団さんよぉ…」

USBにデータを収集中。残り53%。


「ん~~んん~ん~」

『!?』

部屋の外から鼻歌が聞こえた。

「ど、どどどどどどうしよう!!」

「落ち着け。パソコンを重力で浮かすな!」

とりあえずUSBを確認。人影が徐々に迫って来る。残りは15%。

(早く〜〜!!)

(もうすぐだ、もう終わる…)

二人の息が荒くなる。心臓の鼓動も早くなる。琥珀に至っては尿意を我慢してるかのように内股で脚をばたつかせ始めた。

残り0%。データ収集完了した直後。


           カチャ


扉が開いた。入ってきたのはボサボサの天然パーマで眼鏡をかけた青年で部屋に入るなり椅子に勢いよく座り、パソコンに向き合い始めた。

「あっれ〜パソコン消し忘れたかな〜。ま、いっか。」


二人はどこに居るかというと。琥珀の重力操作で天井に張り付いていた。

(あっぶねー!)

(琥珀の重力操作がなければ終わっていた…連れてきておいて良かったぜ…。)


       ーアジト地下 保管庫ー


風雅はエレベーターで地下の最深部にある保管庫に侵入することに成功。擬態を解いて防護服に戻ると中を散策し始めた。

中は哺乳類や爬虫類など様々な種類の生物がホルマリン漬けにされて保管されていた。

「学校の理科室より気味悪い…なんだこの瓶?ボルボックス……微生物まで保管してんのか?」

一応の明かりは点いているものの薄暗く見えにくい。そんな中、保管庫の奥にもう一つのエレベーターがあることを発見した風雅。

中に入ってさらに下へ潜る。


       ーアジト地下 ???室ー


エレベーターを降りるとそこには長い廊下が続いており、両サイドには今はもう使われていないだろう実験部屋と手術台が見えた。廊下にはガラスと医療器具が散乱している 。

「なるほど…ここが財団の裏の顔か…となるとヒカルのコアはあの奥だ!」

風雅は回廊を走っていく。奥に行くに連れて部屋が少しずつ綺麗になっていく。

「なるほど…俺が来たのは別の入口。何も知らない職員用に生き物の保管庫を装って隠したのか!」

もうすこしで最奥に到着する、その時だ。


      「鼠が一匹、入ったか。」「!」


                 EPISODE38「潜入」完

  

           次回「王様」

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