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妖狩  作者: 定春
第一部 東編
36/48

EPISODE36「鬼神」

鬼熊組との交戦は終盤に近づき、幹部は全滅。かしらである小次朗も友である凱により鎮められた。


     ー凱が小次朗と交戦中と同時刻。ー


ここではもう一つの戦闘が繰り広げられようとしていた。

「どうしても…やらなきゃだめ?」

「財団の秘密を知られた者は一人残らず消す。それが我々のルールだ。」

大人の体に成長した神威は黒刀を鞘から引き抜いた。

神威たちは“財団HAND”により造られた“人造人間ホムンクルス”。過去に生きた妖を現代に人造人間として蘇らせた禁忌の生物兵器だ。


「やらなきゃだめか…めんどくせー!」

「!」

神威は一度の踏み込みで一瞬で風雅の間合いに入っていた。

刀を下から上へと斬り上げようとしたが、とっさに気づいた風雅は刀身を踏みつけて阻止した。

「貴様、武士の魂になんてことを…!」

「踏まれる方が悪いんだよバーカ!」

神威が感情的になったその隙を突いて顎に蹴りを入れ次に顔、そして踵を返しつつ右手から風を纏ったパンチを放ちの神威に強烈な一撃を与えた。

しかし黒刀を地面に突き立ててダメージを緩和した。

「さすがは最強の妖狩エージェントだ…一筋縄ではいかないな。」

「お前も一筋縄に行かなそうで大嫌いだぜ。」

風雅は両手両足からブレイクダンスのウィンドミルの応用で風の刃“鎌鼬”を放った。


          「“黒穴くろあな”……」


神威は空間を刀身でなぞるように振ると、振った後の軌跡から漆黒の穴が出現し、“鎌鼬”の刃を全て飲み込んでしまった。

「なっ…!」

「しかと見たか…これが“闇”だ…!」


      ー「“月闇(The Darkness)”」ー


闇の瘴気を身に纏い、影や闇などを操る能力。この世で3番目に生まれた術式とされ、歴代の使用者や生前の神威はその力に呑まれ身を滅ぼした。使う側も危険な術式である。


「次はこちらから行かせてもらおう。」

周囲の空気が変わった。重く暗い闇の底のようだ。

神威の持つ黒刀“月闇つくよみ”は赤黒い闇の瘴気を纏い、周囲の霊力がどんどんと上昇していく。

「“斬月”!!」

巨大で強力な三日月状の斬撃波が風雅めがけて放たれた。

ギリギリで避けたものの左肩の肩パーツが切り飛ばされ、左腕に切り傷を負ってしまった。

「くっ!」

傷口に闇の瘴気ような禍々しいものが纏わりついており、上手く左腕で上がらない。

「その瘴気が貴様を蝕む…残された数時間、逃げ惑い、苦しんで死ぬがよい…!」

「忠告どうもヤブ医者さん。悪いが…まだ死ぬわけには行かないんだよ!」


      「“吠えろ『神狼』”!超変身!!」


風雅は式神『神狼』を召喚した直後に“変身アームド”を発動。左腕から右腕へと妖力の流れが集中し、右腕には狼の爪を携えたガントレットの完成だ。さらに再び視界にノイズが入り、一度気絶してからLEVEL2へと変身し、青いスパークがほとばしる。

「LEVEL2 MAX!!」

「面白い…見せてみろその力!」

神威はどこか強者への興奮を隠しきれていないほどに高揚していた。

風雅の新たなガントレットにはバイクのマフラーのようなパーツが付いており、そこから炎ではなく、爆風を吹き出して加速する。


風を利用し、“武装アームド”状態で神威の腹に一撃を入れた。

神威も負けじとガントレットを素手で鷲掴みして食らいつこうとするが、瘴気に侵された左腕で顔面を殴り拘束を解除。縦横無尽に駆け巡って狼の群れのように襲う戦法が神威に着実にダメージを与えている。

「“旋風・V2”!!」

強烈な風を一点に集めてぶつける一撃必殺技をV2まで押し上げ、必中で神威にヒットした。

刀で防ごうとも風力の方が上回っており、神威を倒壊したビルまで吹き飛ばした。


「うっそ…あの神威があそこまで押されるなんて…。」

少女型の人造人間が風雅の強さを目の当たりにして驚愕する中、全身を白いボロ布で隠した人造人間はかかとを上げたり、横に揺れたり、落ち着きが隠せなくなっている。

「こら、落ち着くのじゃ。」

幼女型の人造人間が無理やり布を掴んで静止させた。


 風雅の左腕の瘴気の侵攻が進み、いよいよ動かせなくなってダラリと垂らすしかなくなってしまった。

「これが治らないってことは…まだ生きてるってことか…。」

「そういうことだ。」「!?」

風雅の背後にはすでに神威が立っており、間合いに入ったと同時に刀を振るった。左腕を引きずっているせいもあり、一手遅れて腹を切られてしまった。

「くそ…!防護服が切られるとはな…。」

「計算外だ…まさか貴様がここまで動けるとは思わなかったぞ。そうとくればこちらもそれ相応の対処をするまで…。」


      「“斬り裂け『鬼神・零式』”!」


神威の影から巨大な腕が出現した直後、体も浮上し、禍々しい黒鬼がこの世界に顕現した。


「『鬼神』、“武装ぶそう”…!」

神威の左腕側の顔には幾何学的な二本線が浮き出て、さらに同じ側の頭に鬼の角が生えた。

妖力が高まり続け、神威は財団の防護服を引きちぎり、上半身があらわになった。胸には三日月型の傷跡が見えた。

さらに左腕が黒く変色し、そこから血液のように赤い液体が腕に広がり、固まり、鬼の顔のように見える。


「これが俺の力…“LEVEL0”だ…!」

「レベル…ゼロだと…そんな領域、俺は知らないぞ!」

「知らないのも当然だ。LEVEL0とは人造人間ホムンクルスだけに許された領域。お前たちの使う霊子がプラスの力なら、俺たちの使う霊子はマイナスの力。そもそもの根源が違う…負の力は妖力の媒介無しで術式を使うことだって可能なのだ。」

「そんなんありかよ!」

神威の周囲には青いスパークではなく、赤黒いスパークがバリバリと音を立てて鞭のように地面を打っている。

左手に妖力を込めて風雅に攻撃を仕掛けた。


右手に黒刀、左腕に鬼の腕を“武装アームド”した攻守共に兼ね備えた形態を手にした。

拳を握ると同時に妖力が上昇し、空気が震え拳を突き出した。

衝撃波は廃虚の街を抉るように消し飛ばした。風雅は衝撃波が来る前に避け、神威に向けて“旋風”を放とうとするが、拳に風が纏われておらずただのパンチに過ぎなかったのだ。

「なんだそれは…微風か?」

(くそ、風を受けてないから術式が切れた!)


風雅の術式「“疾風(The Cyclone)”」は風を自在に操る術式だが、体に風を受けないと体内の妖力を風に変換できず、術式が発動しないという決定的な弱点がある。

今このタイミングで術式が切れてしまい、風を集める必要がある。

愛車STORMストームを呼ぼうにもココから遠すぎて受信してくれない。

そうこうしている内に神威は目の前に現れ、刀の柄頭を風雅の肩に打ち付け、刃で防護服を斬りつけていく。さすがの防護服でも刃を通してしまい、鮮血が飛ぶ。


さすがの風雅もひるんだ所に、神威は武装した左腕を物理的に伸ばして風雅を掴んで、様々な瓦礫を巻き込みながら振り回し続け地面に叩きつけた。

「ガハッ!」

「終わりだ…妖狩エージェント…!」

左腕を元に戻して黒刀を持ちながら神威は近づく。

風雅はゆっくりと起き上がり、四つん這いの状態から身動きを取らない。

「中々良かったぞ…現世の妖にしては強い方だ…その健闘を讃え、一瞬で楽にしてやろう。」

刃が落ちる時、風雅は力を振り絞って右腕で神威の腹部に一撃を入れて怯ませることに成功。しかし、“武装アームド”の発動時間が切れてしまい、粉々になったと同時に解除されてしまった。

「まだ動くか…!」


風雅は先程振り回されたことで風を溜めることに成功し、右腕に残りの風力を集めた。

神威も左腕に全ての妖力を集め、両者走り出す。


拳がぶつかり、その衝撃で空間はねじ曲がり、色は赤、青、緑と変わり、地面のアスファルトは粉々になって剥がれ落ちた。

神威も“武装アームド”持続時間の限界で片膝をついていた。

風雅は上半身の特殊防護服が吹き飛び、こちらも片膝をついて息を荒げていた。

その時だ。神威の体に突然ノイズと電撃が走り、苦しみ出した。

「ゔ、ゔぁぁぁぁ!!!!」

「!?、おいどうした!」


「いかん、また始まった!」

幼女型の人造人間ホムンクルスが慌てて駆け寄り、妖力でドームのようなものを作り出し、神威を包んだ。

「此奴は長時間の活動がわしらと違ってできないのじゃ!限界を超えればこのように肉体の細胞が暴れて崩壊してしまう。これで2回目じゃぞ!」

「何故いつもお前は俺を助ける…赤の他人だろ…。」

「それは…。」


 「兄弟!」

「先生!」

神威と風雅の放った衝撃音を聞きつけた仲間たちが風雅たちの元に合流した。しかし…


         「みぃーつけタ♡」


ヒカルたちの目の前に逃走したはずの財団HANDからの使者“からす”が出現した。


           ぐしゃ!


「え…」

烏は突然現れてはヒカルの胸を貫いた。

「ヒカルぅぅぅぅぅ!!!!」

「あーそんな叫ばないでよ。このマスク音拾い安いんだかラァ。」

烏が手刀を引き抜くとヒカルの体からは灰が漏れ、光の粉となって膝をついて消滅した。

風雅たちは驚愕した。普通の妖なら灰になって崩れ落ちるはず。しかしヒカルは光の粒子となって消えてしまった。


「そりゃそうでショ。彼は神威くんたちと同じ“人造人間ホムンクルス”なのサ。一之瀬 光なんて人間はこの世に最初からいなイ…。神威くんやヒカルくんを造ったジジイが彼を逃がしたんもんだからそいつを始末して財団総出でヒカルくんを探してたってわけ。

不思議に思わなかったかイ?人間なのに持ち前の天才的な運動神経と超人並みのパワー。妖への覚醒を果たしたのに術式も備わっていなイ。一ノ瀬 光というこの世界のバグ…彼は不良品。全ての妖は我々の下で生きている。“不良品は回収する”これも財団HANDの仕事サ。」


「嘘よ!ヒカルは…バスの事故で両親を失って…。しかも何管理者面してるのよ!!」

「こればっかりは嘘ではないヨ。じゃあ逆に聞くけど、彼からその後今までどうやって生活してたのか本人は話してたかイ?」

「そ、それは…。」

たしかに事故に遭った経緯は話していたものの、その後どうやって生活してたのかすらヒカルから聞いたことない。琥珀は口を閉じてしまった。

「このバスの事故…ヒカルくんを造ったジジイの孫の体験なんだよネ。逃げ出す際に余計な記憶を入れられたカ…」

烏が手を広げると、白色のガチャのカプセムのような物が現れた。

「目的の物は手に入れタ…帰るよ皆。“こよみ”ちゃん、ゲート開いて。」

桃色髪の幼女型の人造人間ホムンクルスは“こよみ”と言う名前で無言でゲートを開いた。

「待てよ…待ちやがれぇぇぇぇぇ!!!!」


風雅は立ち上がって烏に向かって走っていく。しかし暦が作った3つ目のバリアで弾かれてしまう。それでもバリアを叩き続けた。

「待ちやがれマスク野郎!!俺の弟子を、仲間を返せぇぇぇぇぇ!!!!」


 暦だけが振り返り、何かを憂いたような訴えかけるような視線でバリア越しに風雅の前で一枚の赤紙を落として見せた。直後にゲートに入り、他の人造人間ホムンクルスと共に去ってしまった。

この赤紙がなんだと言うんだと言わんばかりに風雅は怒りに任せて紙を地面に叩きつけてその場に座り込んだ。

凱たちも目の前にいながら何もできなかった罪悪感と後悔に陥ってしまい、体に力が入らなかった。

果たして烏・財団HANDの目的とは一体何なのか…


ー8月24日 PM2時35分 鬼熊組崩壊と共にテロも阻止。

鬼熊組頭かしら・小次朗、その他幹部 死亡。


財団HANDの干渉を確認。一之瀬光 死亡ー


     『財団HANDは全ての妖を視ている』


                 EPISODE36「鬼神」完


         次回「失意と決意」


  ※ちなみに神威は“武装アームド”ではなく“武装ぶそう”と言います

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