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妖狩  作者: 定春
第一部 東編
34/43

EPISODE34「暴力」


全ての幹部を倒した妖狩エージェント牛鬼会連合軍。残るはかしらの小次朗のみ。小次朗は武道館で風雅たちを待ち構えていた。


 「さぁ、妖狩エージェントの諸君…“祭”の始まりだぁ!」

凱がいつも使うフレーズを小次朗は煽りのように使用した。

「てめぇ、俺のセリフだぞ…!」


凱は大剣を抜かずに握って覚悟を決め、小次朗の前に立つ。

「小次朗、教えてくれ。なぜ俺たちを襲った!」

「凱くんこれは復讐だ。僕を追放した牛鬼会へのね!」

「違う、それはお前が!」「言い訳無用!!」

小次朗が拳を突き出した瞬間凱は武道館の客席まで吹き飛んだ。

「うっわ、えぐ。」

小柄の男から出る大きなパワーを目の当たりにした風雅は引くことしかできなかった。

観客席からは煙が上がるが、凱の姿は無かった。

「どこへ…」

「ふんっ!!」

大剣を小次朗めがけて振るうが、片手でガードされた。

「やっと見えたぜ!俺の腕を吹っ飛ばしたやつの正体が!」

小次朗の腕の周りに熊のような腕がうっすらと見えていたのだ。

「気づいた所で対策は無理だ。次は確実に仕留める!」

不可避の連撃が凱を襲う。

左腕と顔の半分が吹き飛ばされ、舞台に落ちる。

「次は確実に殺した…君は弱くなったんだね…昔は僕を守ってくれてたのに…。」

少し淋しげな声でぼそっと呟いた。小次朗は凱に背を向け、風雅の方に狙いを定めようとするが

「おい、待てよ…まだ終わってねぇぞ!」「ッ!」

背後に立っていたのは、先程始末したはずの凱だった。顔の半分が吹き飛ばされたが、徐々に再生されている。1分も経たずに体が完全に再生された。

「化け物め…殺れ『鬼熊』!!」

再び超高速のパンチが凱を襲うが、次は大剣で受け止め、威力を殺すことに成功した。

再び睨み合いの状態に突入。その時だ。


「ねぇー早く殺しちゃってー君に渡す物も渡せないんだけドー?」

風雅の右上の観客席から籠った男の声が聞こえた。

(!、なんか強い匂いがあると思ったが、こいつか!)

風雅は鼻が効く。武道館に着いた時強力な匂いが武道館全体を覆っていた。それは小次朗のものだとばかり思っていた。

たった今確信したこの男こそがそのオーラと匂いの持ち主。小次朗の妖力など比にならなかったのだ。


男は全身黒ずくめで、杖をつき、ペストマスクを被った不気味な容姿をしていた。

男は一瞬で小次朗の背後まで移動し、頬に手を伸ばしてさすった。

「この子は純粋でネ。なーんでも信じたんだーあることないこト…いい玩具おもちゃだヨ。」

「じゃあ何だ…小次朗がこんなになったのも、全部てめぇのせいかぁぁぁぁぁ!!!!」

激昂し、大剣を構えてペストマスクの男に特攻した。


        「“君の骨はクッキー”」


ペストマスクの男がその言葉を唱えた瞬間、凱の脚が地面に着いたと同時に骨がベキベキと音を立てて、ありえない方向に曲がり、床に倒れた。

「何だこれ…骨が粉々に…!」

「君の骨はクッキーのように脆くなって歩く度に粉々になるヨォ。全部嘘だけどネ。」

足に力が入らない。手を使って立ち上がろうとしたら次は手の骨が粉々になり、床に伏した。

「やめてくださいよ“からす”さん。この人とは僕が決着つけたいんですから、勝手に殺さないでください。」

小次朗は己のプライドのために凱を助けた。

凱は新たに手に入れた“不死”の術式で骨を再生し、再び大剣を握る。

「なんでこんな復讐に財団使っちゃうかn…」

“烏”と呼ばれる謎の男が話し始めた瞬間、風雅の拳が彼の顔面に直撃し、マスクのくちばしを掴んでスタジアムの外まで投げ飛ばした。

「こいつには聞きてぇことが山程ある、凱は自分の戦いに集中しろ!!」

「サンキュー兄弟!」


 外に投げ出された烏は

「“僕の体は風船”」と唱えて地面への衝撃を無くし、着地しすぐに杖で体を支えた。

「君ぃ人が話してる時に殴っちゃダメだヨ。」

「黙れ、お前財団の幹部だろ?だったら洗いざらい全部話してもらうぜ!」

「ごめんネェ、財団のことは誰にも言っちゃいけないんだヨ。あとぼく戦闘向きじゃないんだよネェ。だからこの子達に任せるヨ!」


           パチン!


烏が指を鳴らすと、彼の背後に漆黒の大穴が開いた。その中から四人の男女が現れた。

一人はピンク髪の幼女で、時代遅れな平安時代の狩衣を着ている。

もう一人は金髪の美少女で近代的な白いセーラー服を着用しているが、どこか冷たい視線の持ち主。

三人目は男か女かも分からない。全身を白いボロ布で隠し、鎖が上半身全体に巻き付いている。

最後の一人は白い装束を着用し、黒刀を携えた黒い長髪の青年。

「この子たちこそ財団科学陣が粋を集めて造った、過去に生きた妖たちを現代に蘇らせた“人造人間ホムンクルス”!!」

そして風雅は人造人間ホムンクルスの青年に見覚えがあった。

「お前まさか…神威か!」

「そうか、君たちは既に会っているんだネ。人造人間ホムンクルスは最初は子供の状態で生まれるが、数カ月で大人になるのサ。じゃあ後は任せたヨ♪」


烏は人造人間ホムンクルスの解説を終えると神威たちの開けた黒い穴に入って帰ってしまった。

「おい待て!」

風雅が後を追おうとするも神威が刀を向けて制止させた。

「貴様の相手はこの俺だ…。」

「どうしても…やらなきゃだめ?」

「財団の秘密を知られた者は一人残らず消す。それが我々のルール。お前たちは手出し無用だ…!」

神威は後ろの人造人間ホムンクルスたちに呼びかけた。

「別に興味ないわよそんな男!なんでアイツがリーダー気取りなわけ?」

と金髪の少女型の人造人間ホムンクルスが拗ねる。

「そうプンプンしなくても良いではないか。」

幼女型の人造人間ホムンクルスは少女をなだめた。


        一方 凱VS小次朗


凱は窮地に追い込まれていた。いくら攻撃に慣れたと言っても大剣でガードするだけ。小次朗本体には攻撃が届いていない。

「やはり君は昔より弱くなった。何で?相手が僕だから?」

「うっせぇ…俺はお前を許せないぞ…!」

「そうやって強がってるつもりだろうけど、さっきから太刀筋が震えてるよ?」


        「“引っ掻け『鬼熊』”…」


      ー「“暴力(The Violence)”」ー


小次朗が式神『鬼熊』を一部だけ具現化し、その力の限り力を振るう。式神頼りの能力を有する。その力は絶大であり、実際の熊のパンチ力は2トンだが、『鬼熊』のパンチ力は10トン。それを超高速で攻撃を放つため、対象を穴が空いたような傷跡を残すことができる。


 小次朗の背後には黒く巨大な熊が立ち上がり、こちらを赤く光る目で上から見つめている。

「君さえ殺せば…僕の復讐心は…満たされる!」

『鬼熊』自らが動き凱を肘打ちで地面に叩きつけ、首を掴んでアッパーカット。さらに飛び上がって落ちてきた所を脚を掴んでグルグルと延々と回し、観客席まで凱を吹き飛ばした。

「せっかく不死になったからなぁ…君を永遠に苦しめられる!!殺れ『鬼熊』、やつが降参するまで殺し続けろ!!」

叩きつけられた凱はすでに白目をむいて気を失っていた。

(違う…違うんだ小次朗…お前を追い出した本当の理由は…)


                 EPISODE34「暴力」完


           次回「餓鬼」

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