EPISODE33「流転」
妖狩牛鬼会連合軍の活躍により、鬼熊組の幹部は倒されていく。雷牙は10年振りに“武装”を解禁し、第51号を撃破した。残る幹部は第47号のみ。
そして彼と対峙するのは…
「よぉ。」
「お前来たのか…」
47号の前に青い龍に乗って現れた少年・龍我。港町に一人残り、一日足らずで鍛錬を重ね、さらに強化された状態で帰ってきた。
「普通修行って数週間かかるんじゃねぇのか?良いのかよたった数時間だぜ?」
「“今”のオレはそれでいいんだよ…とにかくお前をぶっ飛ばすそれだけのための修行だ…!」
「自信満々のお前をぶった切ってやるよ!!」
47号は右腕を蟹のハサミに変え、何の疑いもなく龍我に突っ込んでいく。
「死ねぇぇぇ!!!」
しかし空気はそこから一変する。
龍我はハサミを軽々と躱し、一発の膝蹴りで蟹のハサミにヒビを入れ、顔面に回し蹴り、腹に発剄を決めて47号を吹っ飛ばした。
47号はビルまで吹き飛ばされ、15階では煙が立つ。
「あのガキ…前まであんな動きしてたか…?まるで別人だ!それに俺のハサミにヒビ入れやがった…。」
すぐに立ち上がり地上に戻る。
「てめぇ一体どんな鍛え方しやがった。」
「別にぃ〜何も特別なことはしてないよ。」
その隙に龍我はすでに懐に侵入し、47号の腹部を蹴り上げ、
「“流水・V2”!!」
水を纏った発剄で再び47号を吹き飛ばすが、今度の攻撃は先程とは違い、さらに追撃を食らわせる。
「“龍飛翔・V2”!!」
44号戦で「もっと高く飛びたい」と望んで手に入れた“龍飛翔”までもがV2へと強化され、47号を追い詰めようとしていた。
この攻撃の際、龍我の頭にはとある記号が浮かんでいた。
AB⇨⇧BB⇩⇧⇦
それはまるで格闘ゲームの必殺技発動するためのコマンド入力のようだった。そう、龍我のしていた修行というのは
ー8時間前ー
風雅たちの父、八雲 十蔵は龍我にとある修行方法を提案した。
「そうだ、龍我。ワシとゲームをしよう。」
「ばっかじゃないの?師匠。オレは真剣にアイツを倒す方法考えてんのに…。大体アンタの修行はいい加減なんだよ!」
「そのいい加減な修行で術式コントロールできるようになったのは誰のおかげかな?」
「くっ…!」
ぐうの音も出なかった。そして十蔵が提案したのは
「ワシとストIIをやろう!」
と意気揚々にテレビ台の下からスーパーファ◯コンを出し、テレビに繋いだ。
「ワシ、バ◯ログ使お。」
「じゃあオレ、◯ンでいいや。」
二人ともキャラコンは手慣れたもので、防戦一方の戦いが続くが、十蔵が連続攻撃を繰り出し、龍我の負け。
「これで何が強くなるんだよ…。」
「いいか龍我、お前は思い込み次第で強くなることができる特異な能力を持っている。それを活かすんだ。」
さっぱり分からない。分からないままゲームは続く。
だが6ゲーム目で何かに気づいた。
「そこだ!」
ついに龍我は十蔵のキャラを倒した。
「お見事。」
「オレ分かったよ師匠。コマンドだ…格ゲーはコマンドを材料にして技の方程式を作っているんだ!これを応用すれば…。」
(ついにエンジンが掛かったか…)
それから日が明けるまでゲームで修行をし、午前8時半に全て完了した。そして身に付けたのは
“コマンド入力”
自身の頭の中でコマンドを作り、その通りに技を連続で出すことを可能した。
「たかだかゲームごときで俺をボコしただと…舐めてんじゃねぇぞ!!」
「うちの師匠はちょっと特殊でねぇ。」
「だがお前が遊んでいる内にこの街の人間は全部あの世に送ってやった!妖狩失格だな!?」
しかし龍我は特に動じず、余裕の笑顔を見せた。
「何言ってんのばっかじゃないの?オレはここに来る前に、神流を先に街へ行かせ、住民を避難させることが出来た。半分だけだけどね…。」
残りの半分は神流一人の力では救いきれず、47号や鬼熊組の猛攻で間に合わなかった人が大半を占めていた。
「オレはその人たちの遺族の怒りや恨みを全て受けるよ。だって力の無い人は当たることしかできないから…。」
「最強の妖狩だったらそんなことしないのになー。断言するぜ、お前は強くなれない。戦いごっこをしてるだけのガキだ!」
「勝手に言ってろ…オレはお前を倒してさらに強くなる、そして全員守ってやる!!」
47号は右腕だけではなく、全身を蟹の鎧に覆った。
「これが俺の全部だ…砕けるもんなら砕いてみろぉぉ!!」
「そうそう…これだよコレ、アンタがずっと本気出すとこを待ってたんだぁぁぁぁ!!!」
龍我はついに現れた真の強者に出会い興奮し、ついに最大の喜びが溢れ出した。
「“昇れ『青龍』”!!」
神流が人間形態を解除して龍になり龍我の周りを浮遊する。
身体の周囲には青いスパークが現れ、顔には涙のような水模様の痣が出現。
「『青龍』、“武装”!!」
「おい、何だよ…そりゃ!」
『青龍』の“武装”は水の龍を作り出し、龍我が操る形態のはずだが、47号の前で披露した“武装”は両手に龍の顔のオーラを装備しており、水の龍は消えていた。
「これがオレの新たな“武装”だ。」
ガントレットの後ろから妖力のオーラを噴出して、一気に距離を詰める。
「さぁ、蟹味噌ぶち負けろぉ!!」
「このクソガキがぁ!!」
龍我は新たなガントレットで殴っても蟹の甲羅にはヒビは入らなかったが、彼はそんなことどうでも良いと思うほどこの状況を楽しんでいた。
AB⇨⇧BB⇩⇧⇦A⇨⇨⇩A⇧⇨⇦B
「“龍尾”、“流水”、“龍飛翔”、“龍尾・V2”!!!!」
殴って殴って、ついに甲羅にヒビが入り始めた。
「この!」
左腕のハサミで龍我の首を掴むも、その瞬間龍我の体から黒い妖力が溢れ出した。その黒い妖力はとてつもない圧を放ち続け、一度のパンチでハサミごと左腕を破壊された47号は龍我を見て完全に恐怖の底に沈んだ。
「何だよこいつの妖力は、ほんとにLEVEL2かよ…」
「これがオレの全部だぁぁぁぁぁぁ!!!」
腕から龍のオーラが外れて第一形態である巨大な水の龍が出現し、水の竜巻を発生させ、龍我の身体を浮かせた。
「“流転・我龍転生”!!」
水の竜巻の上から龍の顔が現れ、水流を放ち、龍我は水流に体を押されて竜巻の中から47号に向けてキックを放つ。
超高圧の水流を纏った龍の一撃が、ヒビ割れた蟹の装甲を砕き貫いた。47号は蟹の装甲が全て剥がされ地面に転がった。
龍我は“武装”を解除して47号に近づいてくる。
「分かった!分かったから…こ、殺すなら殺せよ!ひぃ!」
「やめだ。」「?」
龍我は47号の前までで足を止めた。
「しけた。」「は?」
「怯え始めたお前を倒しても、何も面白くない…オレの熱は完全に冷めた。」
そう吐き捨て、47号を背にして立ち去っていった。
「へへ…背中見せやがって…あめぇんだよガキが!」
47号は右腕をハサミにして背中から不意打ちを仕掛ける。
しかし、龍我は自分が折れれば背中から狙うだろうとは最初から気づいていた。
「やっぱそう来なくっちゃなぁ!!」
回し蹴りで47号の首をはね、灰化消滅させた。
「後ろから狙うとは…戦士の風上にも置けないクズが……。!?」
龍我から溢れ出した黒い妖力は消え、体力が切れたのか膝をついてしまった。
「はぁ!はぁ!苦しい…またオレの…悪い癖が出た…ついハイになってしまった…。」
「ご主人!」
神流が龍我を支え、瓦礫の上に座らせた。
これで幹部は全て倒し、残るは頭を風雅たちが倒すのみ。
EPISODE33「流転」完
次回「暴力」




