EPISODE30「猫又」
ギャング集団“鬼熊組”の手により、東京は地獄絵図と化し、多くの犠牲者を出し続けている。
それぞれが鬼熊組のメンバーと対峙し、撃退することになる。
ー牛鬼会アジトー
牛鬼会のアジトではヒカルと琥珀が未確認第48号、49号と対峙した。
「琥珀ちゃん、ここだけ僕が抑えとくから、一華さんを助けて。」
「了解!」
「おいおい、お前一人で俺たちの相手するってのか?」
「お前弱そうだからすぐ食っちまうぞ?」
「失礼だな。そういうのは戦ってみないと分からないだろ!」
琥珀はステージに登って磔にされた琥珀を解放してステージの脇に寝かせた。
「ひどい傷…あっ!」
一華の腕を見ると、特殊防護服が入ったリストバンドがひび割れて壊れていた。これでもう彼女は特殊防護服を着れない。雷牙は天才だが壊れたものを作り直すことは苦手なのだ。
「琥珀ちゃん…。」
「一華姉!良かった生きてたー。」
「そう簡単にウチはくたばらないわよ…頭は?」
「なんか不死身になっちゃった。」「?」
たしかに事情を知らない人に知人が不死身になったら信じ難い話ではある。
「一華姉、ちょっとここで待ってて。あいつら蹴散らしてくるから…!」
さすがに二対一ではヒカルには不利であり、苦戦を強いられていた。
「やっぱ弱いな。」
「よーし食っちゃうぞぉ〜!」
巨漢の48号が掌の口をヒカルに近づけた。
「殺らすかい!!」
幸い琥珀が駆けつけ、48号をキックで吹き飛ばした。
「大丈夫?」
「ごめん、さすがに無理だった!」
「君の相手はこの俺だ…紫髪の妖狩!」
常に唇に指を引っ掛けている怪しげオーラを放つ49号は口に手を当て、手を放した瞬間口からゲロを吐き出し琥珀に掛けようとした。
「ギャァァァ!!」
“斥力”を発動し、ゲロを床に弾いた。
そのゲロは床に触れた瞬間、床を溶かし大穴が空いた。
「これは…酸!?」
ー「“酸(The Acid)”」ー
自身の吐瀉物を酸性に変え、対象物を溶かすことができるベストオブ不衛生術式。
「何あいつの能力、すっごい嫌なんだけど!」
一方のヒカルは48号に目をつけられ相手することになる。
「おいらもう腹が減ってイライラしてんだ、お前食わせろ!」
「残念だけど、お前に食わせるものは無いよ!」
ヒカルは48号の顎を蹴り上げ、腹にも蹴りを入れ、48号を怯ませた。
彼は確かに強くなっている。術式こそは無いものの霊力の使い方が上達し、拳や足に霊力を纏って身体能力を強化し、妖に有効打を与えるまでに成長した。
「い゙だい゙よ゙ぉ゙!!回復しないとぉ…。」
48号は腰に着けたポーチから、人間の皮膚や目玉を取り出し、掌の口に食べさせた。
残さず食べると体の傷は回復しないが、先程よりも元気になった。
ー「“摂食(The Eat)”」ー
掌にあるもう一つの口で物を食べるとその物の持つエネルギーに応じてテンションと霊力を回復する。しかし傷は回復しない。
「これで回復したぞ〜。普通の人間でも生は美味いなぁ〜!」
両の掌に付いた口が開き、霊力の塊を形成し、ヒカルに向けて放った。
ヒカルは両手で受け止めたが、2つ目の霊力の塊は受け止め切れず、外まで吹き飛ばされた。
「ヒカル!」
「こらこらよそ見しな〜い。君の相手は俺だよ♡君は可愛いから特別に顔と胴体だけは残しておいてやるよ。」
「くっ、気持ち悪い…!あんたろくにモテてなかったんでしょうね…顔と胴体だけって…それもう死体で犯す気満々じゃないの?あーキッショ!」「くっ!」
その一言が49号の逆鱗に触れた。
「はぁ!別にぃ?モテてたし、彼女10人くらいいたしぃ!」
「キモさに拍車をかけてどうすんのよ!」
49号はさらにゲロを吐き続け、琥珀は斥力で弾き続けるが、ヒカルにも掛かりそうだし、これ以上体育館を溶かす訳にはいかない。
琥珀は斥力で49号をヒカルとは真反対の位置の屋外へ吹っ飛ばした。しかし49号はすぐに立て直し、教室棟へと逃げ込んだ。
この小学校は校舎は大きいが、教室棟は廊下と教室が大部分を占めており、戦闘スペースが狭い。吐瀉物で範囲攻撃を仕掛ければ確実に琥珀を殺せると踏んで49号は逃げ込んだのだ。
琥珀はそれを承知で教室棟に入る。
ー教室棟2階ー
「さぁデートの時間だぁ。」
「アンタとデートとするくらいなら風雅たちと行くわ。アタシの彼氏は今はあいつらで充分だもん!」
「じゃあそいつらに君の生首をプレゼントだ!」
次はゲロではなく唾を酸性にして矢のように飛ばして来たが、琥珀は瞬時に教室の中に入り、酸の矢を避けた。しかし49号はそれを読んでいたかのように、矢を放った後すでに教室に入っており、唾液を出して巨大な酸性の絨毯を作り、教室を覆うとした。斥力で一瞬だけ弾いて教室を飛び出した。
その時にふくらはぎに軽い火傷を負ってしまう。
「おのれ〜、よくも乙女の素肌に唾つけやがって!」
琥珀もヒカル同様影で努力し、重力を細かくコントロールできるほどの技量を備えており、さらなる力を身に着けていた。
「“弄べ『猫又』”!!」
新たな解号を携えて琥珀は自分の足元に子猫の式神『猫又』を召喚した。
「はっ、何だよただの猫じゃねぇか…」
と得意げな顔をして、指でずっと自分の唇を触っている。
「こりゃ俺のコレクションになるのも近いな。ヒッ、ヒヒッ!」
「“武装”!!」「何!?」
琥珀の身体には青いスパークが発生。瞳孔は縦長になり、頬には猫のヒゲの形の痣が出現した。
さらに『猫又』を“武装”をすると霊力で作られた猫の耳と二又に分かれた尻尾が生え、手足は化猫時代の物を継承しながらも身体にフィットした武装に変化していた。
(たかが子供のLEVEL2だ、俺らとは度量の差が違う!勝てる!勝つんだ!!)
「酸絨毯!!」
酸性のゲロを廊下一面に撒き散らし、逃げ場を無くしたつもりだろうが、琥珀は窓を蹴破って外に飛び出し、自身を無重力にして校舎の壁を伝い、49号の背後にある窓から再び校舎に入った。
(何、後ろから…!)
「はぁ!!」
琥珀は49号に吐瀉物を吐かせる隙を与えず、化猫の爪で腹を引っ掻き、溶けて抜け落ちた床まで蹴り、一階まで落とした。
「“引力”!!」
相手を引っ張って
「“斥力”!!」
殴りながら弾く力を使って飛ばす、そしてまた引力で引き寄せてグラウンドまで蹴り飛ばした。
「このクソガキがぁぁぁ!!」
「はい体とお口チャック。」
重力で49号を地面に沈めた。
ヒカルもグラウンドで48号と戦闘をしているが、ただの霊力による打撃では有効打にはならず、すぐにポーチから牛鬼会メンバーの体の一部を取り出して摂食してしまう。
「お前もう終わり!」「くっ!」
「させない!!」
紫色の衝撃波が48号を食い止め、吹き飛ばした。
「一華さん!」
「あなたたちが戦ってるのに、ウチが指くわえて見てるわけにはいかないでしょ!」
一華は琥珀の方へ目配せをして琥珀も頷き衝撃波の術式を使って48号の巨体を琥珀の方に吹き飛ばし、同時に琥珀は49号を斥力で同じ方向に吹き飛ばした。
二人は交差し、落下した。起き上がった時が最期の瞬間だった。
ヒカルと琥珀は走りだし、背中合わせで互いの位置と相手を交換。ヒカルは49号に、琥珀は48号と対峙する。
「これが僕の全・身・全・霊!!」
ヒカルの青い霊力が、39号との戦闘時のように白と金色に光り輝いた。
「これが完成した、“光輪弾”だぁぁぁ!!!!」
その光の一撃とも言うべき拳が、49号の腹に直撃した。
琥珀は両手で空間をこねるかのような動きをしていた。
「何だ〜空気でも食わせてくれるのかぁ〜。」
「アンタが今まで食った人間が何人か知らないけど、あの世では何も食うなよ!!」
琥珀がこねていた空間に突如黒い球が出現し、こねる度に大きくなっていく。
「出来た!」
と叫んだ瞬間、漆黒の塊は野球ボールほどに縮小し、48号へと投げつけた。
「ん?何だ何だ?これは団子かな。いっただきまー…なっ!?」
その黒い球は掌の口に触れた大きくなり、手首を抉り取った。
「うわぁぁぁオイラの手がぁぁぁぁ!!!」
「これがアタシの新必殺技・“超重力”よ!」
この新必殺技は極小のブラックホールを作り出し、全てを飲み込む。極小にとどまってるから今は良いものの、この技は琥珀の力加減で大きさが変わる。まさしく超重力。
48号の体が折り畳まれながらブラックホールへと吸い込まれていく。
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
悲惨な断末魔を上げながら体は崩壊、ブラックホールはグラウンドに巨大なクレーターを残して消滅した。
一方の49号はヒカルの“光輪弾”による衝撃で体内の酸を蓄えている胃が破裂、体内に酸性の液体が溢れ、上半身と下半身が泣き別れになり、声を上げることもなく、血と涙を出しながら地面に落ちて砂を溶かしながら灰化消滅した。
「勝った……。」
「アタシたち勝てた…!やった〜。」
琥珀はLEVEL2初使用で体力を消耗し、“武装”が強制解除され倒れ込みそうになったが、そこで一華が膝枕で受け止めた。
「琥珀ちゃん勝ったねぇ偉いねぇカッコ良かったよぉ。」
「えへへぇ一華姉大好き〜。もっと撫でてぇ。」
完全に懐いており、一華の前だけではこんなにデレデレになるのだ。
「一華さん、琥珀ちゃん。僕ずっとこのままで行けそうです!街行ってきます。」
「気をつけるんだよ。」
ヒカルが街へと向かおうとした時、琥珀が呼び止めた。
「ヒカル…死ぬんじゃないわよ…その、家族が減ったら寂しいし、あんたこの前からちょっと危なっかしいから心配で…。」
「大丈夫、僕は死なないよ!」
ヒカルは風雅の受け売りであるサムズアップを二人に送って街へと走っていった。
残る手下はあと三人、風雅たちは頭・小次朗の居場所を探る。
EPISODE29「猫又」完
次回「自傷」




