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妖狩  作者: 定春
第一章 東編
27/30

EPISODE27「雷鳴」

謎の未確認第46号の能力により東京中の全ての生き物が眠ってしまった。風雅たちも例外でなく眠ってしまい残ったのは雷牙だけ。しかし雷牙も眠り、夢の中で子供時代の記憶を見た。それは自分が妖になった日だった。


 自分が弟を庇って雷に打たれる光景を見た雷牙は家に戻って父親に泣きつくところを見た。

「雷牙!男だろ泣くんじゃない!!」

「いや誰だって雷落とされて死んだら泣くだろ!!」

「兄様僕を守って…雷に…」

「何!風雅、貴様のせいか!この忌み子がぁ!!」


その光景を見て大人の雷牙は思い出した。父は風雅に激昂し、頭を殴り、腹を蹴り、伊吹が止めても聞かずに風雅を外に放り出した。そこから風雅の病状が悪化し、結核による病死に繋がってしまう。後にこの出来事を風雅は語る。


Q、この時のお父さんをどう思っていましたか?


A、えーブチ殺したいです。今すぐにでも…大体アイツが俺の腹ぁ蹴って外に投げ出さなければギリギリ20歳まで生きてたんだ。


辺りはすっかり夜だった。泣きじゃくって母に宥められて風雅は部屋に戻った。

大人の雷牙は夢の中だが久々に帰る実家の縁側に座った。

「いつになったら覚めるんだこの悪夢は…」


「色々悩んでるみたいね…」「!?」

隣に母である伊吹が座っていた。

「母様…なぜだ、夢の中には干渉できないんじゃ…」

「貴方の夢でしょ…私に会いたいと思ったらその通りになるのよ。」

「俺、後悔してます…もっと母様と話しとけば良かったって…母様は病気の風雅にずっと付きっきりで、体調を崩されてもやめようとしなかった。声を掛ける余裕が無かったんです。」

「そうだったのね…寂しい思いをさせてしまったのね。ごめんなさい。」

夢の中とはいえ母に抱かれ、久々に人の温もり、優しさを感じた。

「でも貴方に言っておきたいことがあるわ…。」

「何でしょうか?」

伊吹は拳骨を作って雷牙の頭にポンと乗せた。

「貴方が悪夢を倒さない限り終わらないわよ!」


母からのお叱りを受けた直後、八雲邸も大正の夜景も全て消え去り、新たなステージへと悪夢は進んだ。


          ー2001年ー


 今から十年前の2001年。妖によるテロが大量発生した年であり、雷牙の心に傷を付けた事件が起きた年だ。

「やめろよ…一番の悪夢じゃん…。」

そしてそれは起こった。


「こいつ私と娘を殺そうとした化け物よ!!」

「何、こいつが街をめちゃくちゃにした犯人かぁ!」

「殺せぇ!」「石投げろぉ!」

雷牙は妖に襲われる親子を助けたのにもかかわらず、その親子はショックのあまり、自分たちを襲った妖だと勘違い、それに同調した烏合の衆が雷牙に向けて石を投げたのだ。

雷牙は一般人に危害を加える訳にはいかないので石に耐えるしか無かった。その場で逃げたら犯人だと疑われるのを避けるために動かずじっと我慢した。

その時風雅が助けに入り、竜巻を起こして雷牙を抱えて逃げた。

「兄貴…」「………。」

「あいつらどうする…殺すか……!」

ショックで取り乱してしまうのなら百歩譲ろう、しかし断片的な情報だけを聞いて鵜呑みにし、他人を攻撃する烏合の衆に風雅は堪忍袋の緒が切れていた。

「もういいよ……もういい…俺のために怒ってくれたんだな…でも、俺はもう……戦わない…」

雷牙は心身ともにズタボロにされ、虚ろな目をしており、覚束ない足取りで家に向かっていった。


「もう10年か…もうあれ以来防護服も着ずに、武器も握らず妖狩エージェントを見守るだけ…」

「ほんとにそれで良いのか?」「!?」

伊吹の次は弟の風雅が現れた。

「兄貴、本当は…みんなと一緒に戦いたいんだろ?今まで俺は見守るだけで充分とか言ってたくせに、ガキ共見てたら再熱して絆されちまうほどのゆっるいスランプだぜ。」

「でも、過去は変わらない…俺は化け物だ!」

「たしかに変わらない。でもお前は変わろうとしなかった!ずっと後ろ向きの考えで、達観してるフリをして現実から目を背けていた!いい加減、前向けよバカ兄貴!!」

「……っ!!」


その言葉に気づかされた。自分はただ逃げていただけだと、その事に気づかない内にいつの間にか10年も過ぎていた。

それに気づいた時、激しい後悔が彼を襲った。

頭を抱えて瓦礫の山に崩れ落ちる。

もっと自分が早く立ち直れば、早く動いていれば、護れた命もあっただろう。仲間も死なずに済んだであろう。

「それが…兄貴が10年分溜めてた現実だ…!」


「なぁ…俺が…前を向けたら…色々変わるのか…?」

「それはあんたの選択しだいだ。俺は夢の中の弟だ。結果は自分の肌で感じろ。じゃあな!」

夢の中の風雅は雷牙に背を向け手を振って消えていった。

「何事も前を向かなきゃ変わらないか…。」

夢の風景がまた代わり、先程の大正時代に戻った。

全ての人や物がストップしている。雷牙が来たのは雷牙が風雅を庇って雷に打たれる直前のシーン。

当然この二人も止まっている。雷牙は歩いて雷の落下地点に立ち、人差し指を立てた。


「前を向く…その為に、俺はこの悪夢を受け入れる!」


そして黄金の雷が雷牙に直撃する。夢の中だから何も痛みは感じない。雷が落ち、地面には電撃が走る。

「充電…完了…!目覚めろ、俺!!」


           「!!」


雷牙起床。しかし起きたのは彼だけ。すぐにベッドから飛び降り、ずっとタンスにしまっていた自分の特殊防護服が入ったリストバンドを手首に装着。

防護服の着装完了。風雅の赤いマフラーとは対照的に白いマフラーを身に着け、腕の白いラインは二本となっている。

「行くか…。」


 雷牙の体は黄色く発光し、一瞬で家を飛び出し、東京タワーにたどり着いた。

「来たぜ?46号。」

「なっ、何!?何故起きている貴様!!」

46号は全身黒ずくめの老婆で顔だけが見えない魔女の様な見た目の妖。東京タワーに昇り、上から悪夢を散布し、東京中の生物を眠らせていた。


      ー「“悪夢(The Nightmare)”」ー


相手の弱点を見つけ、強制的に眠らせ悪夢の中に閉じ込める凶悪な術式。対処法は己の悪夢を倒すこと。

「まさか貴様…自分の悪夢を倒したのか!?」

「違う、俺は自分の悪夢を受け入れた。もう逃げてたまるか!」

「このガキがぁぁ!!」

46号は紫色の禍々しい霊力の塊を雷牙目掛けて放った。

雷牙はすかさず自分の武器である斧を取り出した。

「ふん!」

斧に電撃を纏わせて塊を切り裂いた。

「なっ?!」


          「“神速”…」


雷牙はすでに46号の背後に回っていた。

「ゲームオーバーだ。」「へ…?」

46号の首に切れ込みが入り、首が落ちた。その刹那天からの雷に打たれ、灰も残さず消滅した。


      ー「“神速(The Thunder)”」ー


雷や電撃を自在に操る能力であり、自身も雷と同じスピードで移動することが出来る。風雅も一目置く妖狩エージェント最強の術式である。 


「悪夢は去った。これでみんな起きるだろう…きっと処理は大変だろうがな…」

雷牙は東京タワーの上から事故が起きた現場を見つめ、合掌をした。

そして、再び雷牙は妖狩エージェントとして人々の自由と笑顔を守るために戦うのだ。

                EPISODE27「雷鳴」完


          次回「鬼熊」

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