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妖狩  作者: 定春
第一章 東編
26/30

EPISODE26「悪夢」

未確認第45号の足取りを追い、カジノ「金閣」に潜入し、45号本人とギャンブル勝負をしたが、風雅は45号の汚い策略の餌食となり敗北、続く凱はババ抜きで勝負。幸い馬鹿だったので45号を混乱させる事に成功。

激昂した45号は巨大化し、全員殺そうとするも、そこで“財団”の使者・神威かむいが現れ制裁を与えた。


 45号は消滅、風雅の体を侵食していた金も消滅した。その後のカジノ「金閣」の利用者だが、皆正気に戻ったようで家族や知人に謝罪をしたという。


       ー8月17日 PM12時30分ー


雷牙は神威が言っていた“財団HAND”について調べていた。しかし正規のルートでは何も引っかからない。

「仕方ない…少々ブラックなルートに走るか…」

手首の骨をポキポキと鳴らして高速タイピング。ブラックなサイトのブラックな都市伝説記事で財団についての記事がヒットした。


         ー“財団HAND”ー


日本某所に基地を構える謎の秘密結社。人類の真の幸福追求のために誘拐や人体実験も厭わない。陰では子供まで誘拐して謎の学習機関を設けているとの噂もある。


その他の記事は見つからなかった。

「組織説明だけじゃ捜査しづれぇな…非合法組織だし…。」

その時、居間のテレビから“速報”のニュースが聞こえて自室から出た。

『速報です。首都高速道路で連続玉突き事故が発生しました。死傷者はまだ不明とのことです。』

その後、5分後の報道では死傷者の数は112人その内の死者48人とのことで、辛うじて軽傷で済んだ人によると

「みんな突然眠ってしまったんだ!俺もそのちょっと後に眠ってしまったんだ…それで…ハンドルが握れなくて…うわぁぁぁ!!」

この男性は助手席に乗っていた妻が即死、後部座席に乗っていた子供二人は衝撃と火災で重傷。ただの玉突きではない。全員が眠ったという。火災が起き、さらなる爆発が映像として残され現場は地獄絵図と化した。


「全員が眠った…妖か…風雅!…風雅?」

弟を呼んでも居間に来ない。ヒカルでも来そうだが誰も来ない。

「風雅、ヒカル?」

雷牙は風雅の部屋に入った。風雅は眠っていた。

「おい、起きろ。お前この時間だと普通に筋トレしてるだろ?おい!」

雷牙は風雅の上に乗っかり、往復ビンタを食らわすもまったく起きる気配が無い。寝息を描き続けるだけ。

「何こいつ死んだの?」

と吐き捨てヒカルの部屋に行ってもヒカルも寝ている。こちらも起きる気配がまったく無い。

琥珀の部屋はノックをしてから入ったが、琥珀もぐっすりと眠っている。

「なんて寝相だ腹出てんぞ…おい、琥珀も起きなさい。」

頬をペチペチと叩くもまったく起きない。寝返りをうったと同時に斥力を発生させ雷牙を弾いて部屋の壁まで吹っ飛ばした。

「くそ、何故起こすのにケガしなきゃいけないんだだ…」

居間に戻ってテレビを観ると、テレビの中のニュースキャスターやアナウンサーは皆眠っていた。


「どういうことだ…首都高だけじゃねぇのかよ…」

嫌な予感がしたのか、雷牙は外に出ると犬を散歩している婦人も眠り、犬も眠っていた。自転車を漕ぐ少年も倒れて眠っている。

「……悪夢だ…で、何で俺だけ眠ってないわけ?あっ、徹夜したからだ。ははっ…」

この時東京中の人間が眠りに落ち、各地で交通事故などの様々な最悪の事態が発生し、夢を見たまま亡くなる人たちが多発してしまった。警察も眠り、打つ手はない。東京で起きているのは雷牙だけだ。

「じゃあ何だ。コイツは未確認第46号ってことかい。」

しかし雷牙にも睡魔の魔の手が、力が抜け扉にもたれ掛かるが、残った力を振り絞って自室のベッドに潜り込む。

「これで起きてる人間はゼロ人だ…もういいやこれで妖狩エージェントの物語はおしまい…おし…まい。」


   雷牙就寝。東京中の人間は全て眠りについた。


 雷牙は夢の中で目を開けた。そこは見覚えがある場所だった。

「ここは…旧八雲邸!」

在りし日のあの家族。まだ母親が生きていた大正10年1921年の6月25日。

当時は戦後恐慌で皆不自由な暮らしをしており、華族であった八雲家も勢いをなくし、一般の家庭のようになっていた。

大正元年1920年8月1日に八雲家から双子が生まれた。生まれた時からぐるぐる天パヘアで、翠緑色の瞳をした弟は生まれてすぐに目が開いており「あっ、生まれた」という表情をしており、黄金色の瞳をした兄は普通の赤子で生まれてすぐに目が開いておらず泣きじゃくっていた。しかしすでに小さな歯が生えていた。

産まれた兄の名は雷のように大きな声で歯が生えていたので“雷牙”と名付けられ、

弟の方は風のような爽やかで雅な人間に育って欲しいと願いを込めて“風雅”と名付けられた。今では逆だが。


母の名は“八雲 伊吹いぶき”。時に優しく、時に厳しく、内に強さを秘めた母だった。

しかし1921年の年始から母伊吹は病弱だった風雅と同時期に体調を崩し、徐々に体力は落ちていた。

悪夢の中で二度と見たくなかった病弱の母を二度も見るはめになるとは思わなかったろう。


「俺は…覚えてる…この日を。いや忘れられない。この日は…俺が妖になった日だ……!!」

6月25日この日は曇天で、ドス黒い雲が東京の上空を覆うとしていた。

「とんだ悪夢だ…これが46号の魅せる悪夢なのか…?」


雷牙は旧屋敷の敷地に入り、懐かしむと同時にこれから過去の自分が死ぬところを見ることになる恐怖を感じていた。

かあ様ー!!」

小さかった雷牙の大きな声が屋敷の縁側から聞こえた。大人の雷牙はその声を聞き見に行った。

「母様見てください!その辺で採れたハエトリグサです!」

「まぁ怖ぁい。でも何で日本にそんな草あるのかしら。」

「母様…」

その時母の部屋に当時結核を患っていた風雅が入ってきた。

「母様…シロツメグサです…ごほっ!」

「風雅、寝てないとダメだろ!」

「ごめん兄さん。でもとお様の持ってきたハエトリグサよりかはマシかなと思って…」


「なんか…俺がモテない理由が分かった気がする…親父のせいだ。」

この時に確信した“遺伝”というものを。逃れられないDNAの負の連鎖を…


そして場面は一瞬で変わる。黒い雲が完全に東京を覆った。

この時幼少期の雷牙は風雅を連れてシロツメグサを病弱な母にあげようとして集めていた時だった。

「兄さん、ここ人の敷地だよね…勝手に採っていいの?」

「バレなきゃ犯罪じゃないの。お前こそなんで付いてきた?また悪化するぞ。」

「僕ももっと母様にあげたいから…」


その時だ、なにかを感じ取ったのか突然風雅を突き飛ばした。

それと同時に雷牙は黒い雲から落とされた雷に打たれた。

「!?兄さん!ごほっ、ごほっ!」

ただのバチっ!ならばまだ良かったと言えるだろう。雷牙に落ちたのは木を真っ二つに裂くほどの電撃。皮膚は黒焦げ、衣服は燃えた。


「兄さん!死んじゃやだ、兄さん!ごほっごほっごほっ…」

そして妖として覚醒してしまった。焼け焦げた皮膚が治り、髪の毛も生えそろった。衣服は破けたままだが、蘇生した。

「兄…さん…?」「あれ…何で俺生きてるんだ…?」


  「あぁそうだ…これが…俺の最初の悪夢だった…」

    

                 EPISODE25「悪夢」完


           次回「雷鳴」


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