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妖狩  作者: 定春
第一章 東編
25/30

EPISODE25「賭博」

人間が金の像となって発見された。犯人を追ってカジノ「金閣」の周辺で捜査した。すると地下駐車場で男性が金の像に変えられる現場に遭遇。未確認第45号と名付けられた男は黄金を自由自在に操り風雅たち妖狩エージェントを苦しめ、逃走した。


 45号との戦闘で負傷してしまった龍我は病院に運ばれたのだが、妖の持つ回復力の高さで待合室の時点で出血が止まり、傷が塞がっていた。

「さすがは妖と言った所か…。」

「ものの30分で完治しやがったぜ…。」

「何でちょっと引いてんのさ、キミたちとオレは同じだろ?!」


だが、風雅は45号の正体をすでに一定数まで絞っていた。

おそらく犯人はカジノ「金閣」の関係者。そこまでは馬鹿でも分かる。

そこからが議題なのだ。カジノの利用客か、はたまたディーラーか…さらに性格は負けず嫌い・傲慢。それを確かめるには直接「金閣」に行き、調査するしかない。


       ー8月16日 AM10時06分ー  


 一行は「金閣」の前に集まり、監視していた。

「先輩、こっからどうするんですか?」

前日に引き続き風雅、龍我、凱が担当し、さらに雷牙を引き連れて、双眼鏡で「金閣」に入る客、それを招くディーラーを観察していた。

「そりゃ潜入しかないわな。ヒカルたちは置いてきた。一般的に考えて未成年をカジノに連れて行くのはさすがにダメだと判断したのでね。」

「あっごめん連れてきちゃった。」

「任務!」「ギャンブル!」


雷牙に一般常識は備わっていないのか、普通に未成年の二人を連れてきてしまった。それに呆れた風雅は手のひらを顔に当てた。

「それ言ったらオレも19でまだ未成年っすよ。」

と龍我も未成年であり、風雅は根負けした。

「あーもう!いいかお前ら、絶対ゲームはするなよ?しても良いのはドリンクバーで飲み物飲むだけだぞ。分かった?」

『はーい!』

「幼稚園の先生かお前は。」

それはそうとどうやって侵入するのかが問題だ。

「裏口から行くか?」

「いちいち監視カメラ壊して回るのも面倒だ…あっ。」

「なんか思いついたのか兄弟!」

「普通に入ってしまおう…簡単ではないがな…」


      ーカジノ「金閣」潜入開始ー


 「簡単だったな。」

妖狩エージェントたちのリストバンドには特殊防護服が装備されているが、脳波次第でその場に必要な服へと変化できる。カジノということでそれぞれスーツやドレスを作り、真正面からの潜入に成功した。

「おいおい何だよこのカジノ…みんな目死んでるじゃないか…」

「みんな何かに取り憑かれてるみたいね。ギャンブルする内に仕事や家族すらも眼中になくなっちゃったのね。」

客どころかディーラーも虚ろな目をしている。しかしゲームの時だけは狂ったように見開き、よだれを垂らす者もいた。

「まさしく地獄の畜生道だな。」

「先輩、これ…」「うん?」

龍我が見つけて風雅に共有したのは壁に貼り付けられた張り紙。

     

    1000ポイントを集めてオーナーと勝負!


このカジノのオーナー金木という男は今のフロアにはいないが第一印象は「うさん臭い奴。」ポスターなのに不敵な笑みを浮かばせているところが余計に怪しいと風雅は語る。

「それ偏見じゃないっすか?」

「でもこういう奴大体やばいじゃん。」


とりあえず風雅たちはカジノを探索し、怪しい人物がいないか客を見極めていく。話を聞こうにも虚ろな目でうわ言しか言わないので話にならない。

捜査は行き詰まってしまうのか、何もせずに歩き回ればディーラーたちに怪しまれると思ったので、風雅たちはカードゲームをするフリをして当たりを見回す。その時だ。


ピーポンパーンポーン。フロア内に大音量のアナウンス。虚ろな目の客も風雅たちもそろって天井を向く。

『ハーハッハッハッ我が城へようこそお客人!このフロアに1000ポイントを獲得した者が現れた…知っている者もいるが、1000ポイントを獲得した者にはこのオーナーである私と戦う権利が与えられる!!では楽しんでくれたまえー!!!』

アナウンス終了と同時にフロア奥の階段から大量のスモークが噴射されオーナーの金木が姿を現した。

1000ポイントを獲得したのは女性客。ゲーム中も虚ろだった彼女はオーナーと対峙した瞬間目の色が変わった。

「勝てばあたしは借金返済できる!」

「Oh Bravo!なんていい心意気なんだぁ。さぁ何で勝負したい?君の好きなもので構わないよ。」

女性客はルーレットを選んだ。


           約5分後


女性客は掛けるチップは全て無くなり、絶望だけが手元に残る完全敗北。

「おやおや負けてしまったようですねぇ…」

「いや…いや!」

「敗北者が苦しい言い訳をするもんじゃないよ。さぁ、取り立ての時間だ…!」

『?!』

風雅、凱、龍我はその聞き馴染みのあるフレーズで疑惑から確信に変わった。


  間違いない、こいつ(金木)こそが45号の正体だ!


金木こと45号は他の客の前で見せしめとして女性客を黄金の蔓で拘束して口の中にきんを流し込もうとした。

「嫌だーー!!助けてお父さーん!!」

女性客が助けを求めた時、凱はすかさず大剣を引き抜いて黄金の蔓を断ち切った。


「今度は助けられた…すまねぇなぁ父ちゃんじゃなくてよ。」

その光景を見た客とディーラーたちは皆正気に戻ったのか阿鼻叫喚で店から出ていく。

「やはり居ましたね妖狩エージェント…しかも子供まで。」

「お前、俺たちがいるのに気づいてたろ。そうだったらわざわざ人間の前で自分の能力出さないよな?」

45号は図星だったのだろうか風雅の言葉を無視して、

テーブルの前に立った。

「では妖狩エージェントの皆さん。ここは一つ私とゲームをしませんか?」

「は?何言ってんだ。」

「あなた方が勝てば知りたいことを一つお教えしましょう…ただし私が勝てば妖狩エージェント全員の命を奪います…それでよろしいですか?」

「そんな勝手な条件…先生が飲むと思っt」

「分かった、その条件飲もう!」「えぇぇ!?」

どうせ簡単には教えてくれないのも理解しているし、条件を飲んでもこちら側に不利なルールを押し付けられるだけ。だったら敢えて相手の土俵に立って、相手のルールで戦ってみよう。そう風雅は判断した。


45号は得意げに手を広げ、手のひらからチップが出てきた。

「すげぇ…金のチップだ。」

「賭けるのはこの純金のチップ。さぁ誰が挑戦する?」

「代表して俺が行こう。」「先生!」


風雅は45号に立ち向かい、椅子に座る。

「さぁ、何で戦う?」

「ルーレットだ…!」

勝敗を決めるのはルーレット。45号が一番得意なゲームである。しかし、

「あれ、先輩なんか冷や汗かいてない?」

「ほんとだ。風雅どうしちゃったのかしら…」「はぁ…」

雷牙だけは知っている。風雅は賭け事とは無縁の人生を歩んでいたのでルーレットなどやったことが無いのだ。


45号も風雅がカジノ未経験者だと冷や汗で判断し、同時に勝ちを確信した。

「さぁ始めましょう!チップは幾つお掛けに?」

「俺は全てのチップを賭けるゼ!」

「何あいつ闇武藤◯戯みたいになってんの?」

ルーレット台が回される。

「お先にどうぞ。」と45号は手で合図を出した。

「んーんーんー……黒の…8!」

「では私は赤の30としよう(コイツは恐らくど素人、玉の軌道など読んでいない!勝てる、勝てるぞ!)」


しかし玉が止まったのは黒の8だった。

(うそ、当たった!)

(なにィ!?この素人に私が負けたというのか!)

そして風雅はチップを回収。続く2回目、3回目も素人の勘だけで勝ち進んでいく風雅。

もうチップの残機がない45号の方が冷や汗をかいていくが、ここである奇策を思いつく。

「八雲 風雅さん…あなた、昔恋人がいましたね?」

「!?」

雷牙もその言葉に仲間の誰よりも早く反応した。

「やめろ、言うなっ!!」

「その恋人とは…死別ですね。見えますよぉあなたの顔にこびりついた彼女の血痕とトラウマが…」

「それ以上言うなぁ!!」「あぁぁぁぁぁぁ!!!」


突然風雅が頭を抱えて狂い始めてしまった。テーブルの上に手を乗せ、ぐちゃぐちゃにしてしまう。酷い頭痛に耐えきれずついには椅子から崩れてしまう。

「あなたは番号を言わなかったので、まずは私の勝ちですね。赤の3。」

45号の言う通り玉は赤の3に落ち、チップの三分の一が45号の元に戻って来た。

「さぁ続いて行きますよ…黒の24。」

「くっ……赤の18!」

かろうじて正気を保った風雅は素人の勘で数字を言うが、止まったのは黒の24。またもやチップを取られてしまう。

「先生!」

「さぁ、次で終いにしましょう。赤の14」

「…はぁ…はぁ…赤の25!!」

しかし最後に止まったのは45号の赤の14。風雅は負けてしまった。

「てめぇ汚ねぇぞ!人の弱みに付け込んで有利に進めるなんてよぉ!!」

「そーだそーだ!」

「キミに同意しかないね、こんな形で勝ってお前はそれでいいのか!」

「この世は勝利が全て!どんな形でも勝てばいいんですよぉ!!」

45号の汚い持論に仲間たちは大ブーイングをかますが4開ききった態度を見せつけ黙らせてしまった。

「さぁ取り立ての時間ですよ…」

「おいおいそんなんで金にされても未練タラタラだぜ…?それよかさぁ…俺より他のやつにその心理作戦使ってみろよ金メッキ!!」

「!!、貴様ぁぁ!!この私のことを金メッキだと!このガキぃ…」

「残念だったな、お前の爺さんより年上なんだそんな悪口聞かねぇよ?」

「このぉ!」「ぐっ!」

45号は金の触手を指から伸ばし風雅の肩を貫いた。

「あっ兄弟!」

肩から徐々に黄金化が進行していく風雅。

「特別に貴方にはゆっくりと金に変わる苦しみを味わってもらいます。その代わり…次にこの黄金化の餌食になってもらう生贄は誰ですか?」

「俺だぁ!」

立候補したのは凱だった。


         『あっ終わった。』


一同は口を揃えて唱えた。凱は大剣を下ろし、椅子に座る。

「何で勝負しますか?」

「俺はすでに持ってきている…それで勝負してもらうぜ?」

「一体何なのですか?私はどんなものでも受け付けますよ身体を張るもの以外ならばね。」

「俺が勝負するのは“ババ抜き”だぁ!」


         『あっ終わった。』


またしても皆口を揃えて唱えた。凱に思考を巡らすようなゲームは得意ではない。これは馬鹿でも分かる。

「どっからでも来いや!」


           1分後


ババを持つのは45号。しかし手札は少なく、ババと数枚のカードが消えればあがりだ。対して凱は一見余裕そうに見えるがババを取れば勝つ確率が低くなる。

そして凱は相手からカードを取る。

ババを取ってしまった。顔が歪んでカ◯ジのように鼻が尖っていく。

「なんでアイツ行ったんだよ…」

「雷牙先輩、腹をかっ切る準備しときましょう。」


しかしここで転機が来る。

凱がスペードの8を引き、捨てることが出来た。

45号は揃わずカードが減らず、凱は減っていく。

「ど、どうだ!これがギャングのかしらの力よ!」

(何てやつだ…私は相手の手元を見て怯えきっているのを確認したのに…奴はジョーカーを絶対に外し、奴にとっての当たりのカードを引いている…?!まさか、先程のビビリはブラフ、能ある鷹は爪を隠すという事なのか!)


       『いいえ、ただの馬鹿です。』


皆は口を揃えて唱えた。さらにババを避け続け、ついには45号の手札は2枚、どちらかがババ、どちらかがハートの4。

「どうしました石動 凱。早くババを引きなさい…」

「お、おう…じゃあ行くぜ…」

(恐らくこのしどろもどろも演技、全ては私の思考をかき乱すトラップに違いない!)


      『だからただの馬鹿なんだって。』


皆口を揃えて唱えた。

しかしここで45号はトラップを仕掛ける。見えないように背中から金の触手を伸ばして凱の足元に忍ばせ、仮に凱が勝った場合に刺そうという魂胆だ。

「これで…終ぇだ!!」

凱は指で右側のカードを弾いた。45号の額に引っ付いたそのカードは

「来た!ハートの4だ!!」「やったな……凱…!」


「ちっ!」

舌打ちで何かを察した凱は足の上にバリアを展開、触手が足に刺さる瞬間に止めることが出来た。

「やっぱりそう来たか!!」

大剣で45号を吹き飛ばす。

「お前やっぱ汚ぇぜ。」

「くっ、能ある鷹は爪を隠すという訳ですか…。」

「脳のない鷹は爪も無いという言葉を知ってるか。」

龍我はそう尋ねた。

「脳のない鷹は爪も無い、この歌詞私のことだ。」

凱も龍我の言っていたことに気づき、勝手に落ち込んでいた。

風雅の黄金化は左半身に及び、足も黄金化して身動きが 取れない。

「はっ、消えろ虫けら共ぉ!!」

突然吹っ切れたかのように暴言を吐く45号は昨日と同じくコインの弾丸を放った。

「“GOLD FINGER 100”!!!」

「護れ『玄武』!!」

凱は大剣でガード、残りの仲間には『玄武』のシールドを付与してコインの弾丸から守った。

「金木。約束だ知っていること一つ教えろ!」

「誰が貴様らなんかに吐くか!吐いたら殺される!」

とりあえず“財団”は秘密主義な事なのは分かった。


そして本性を現した45号はカジノ中のきんを身体に集め始めた。

「まさか、ここの金の装飾って全部コイツが作ってたのか!」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ“飾り付けろ『金盞花』”!!!」


 45号の下半身から触手が伸び、地面に刺さり巨大な根を形成し、そして腰から下が巨大な黄金の蓮の花となった。

巨大過ぎてカジノの天井を突き破り、5キロ離れた場所からも全体を捉えられるほどだ。

「うおでっけぇ!!」

「兄弟!」

凱は大剣をピッケルのように使って風雅の黄金化した脚を削り始めた。

「およしなさい…この金はただの金ではないのです!私の術式から作られた黄金は破壊可能なのです!」

「あっ取れた。」「何?!」


巨大化に金を割いてしまったのか、風雅の身体についたちっぽけな金は剥がれ落ちた。しかし左半身の黄金化が治ったわけではない。

凱は風雅を米俵のように持ち、仲間と共にカジノから脱出した。

「こんなやつどうやって倒せば…」

「自衛隊でも呼ぶか?怪獣バトルかよ…」

「ふんっ!」と45号が腕を振るうと空気が黄金化し、風雅たちに振り注ぐ。

打つ手の無い妖狩エージェントたち、その時。

彼らの目の前に、黒髪の少年が現れた。

「お前は…!」

その少年は未確認第40号、41号の時に現れた“財団”の刺客であった。

「か、“神威かむい”様!?」

「少々目立ち過ぎた様だな金木…“財団HAND”を少しでも睨むとどうなるか…身をもって知るがいい…!」

神威かむいと呼ばれるその少年は腰に卍の鍔が付いた黒刀を持ち、その刀をゆっくり抜刀する。刀身には禍々しい紫のオーラ、赤黒いスパークが周囲に散る。

「!?みんな伏せろ!!」

風雅はその刀の持つ恐るべし力をいち早く察知し、仲間たちに指示を飛ばす。


          「“斬月”!!」


刀を振るって放たれたその斬撃はまるで三日月のようで45号の上半身と蓮の花を一瞬で断ち切った。花は枯れ、45号は落下しながら灰化消滅した。

斬撃が飛んだ跡は赤黒いスパークがビリビリと音を立てて、カジノや地面は熱を帯びた。

「やべぇ…何だよあのガキ…。」


「これでお前たちも理解ったか?俺に斬られたくなければ二度と“財団”には関わらないことだ…我々は常に妖を視ている…」

と意味深な言葉を残し、影の中に消えていった。


                 EPISODE25「賭博」完


          次回「悪夢」

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