EPISODE21「迷宮」
謎の大穴を調査するために現場へ向かった妖狩たち。新たに牛鬼会の凱、一華を仲間に入れ、
人型蟻の潜む蟻の巣に潜入していく。
時空が歪むこの大穴。風雅たちは普通に立っているが
その構造は本来の蟻の巣のように縦長になっている。
「なぁ、まだこの先に蟻いるのかな…」
「まぁいるだろうな…さらには女王蟻も…」
「なぁ俺だけ帰っていい?いつもの兄貴みたいに作戦室から見てるからさ、じゃ頑張っt…」
巣穴の入口は完全に閉じていた。
「脱出は無理なようだな風雅。」「!」
雷牙はニヤけた面をして風雅を煽った。
「じゃあ先に進まないと出れねぇな。」
一同は走って最奥の女王が居るであろう部屋を目指す。
しかしここで止まる。
「おいおい、二手に別れてるぞ…」
「どっちに行くの…?」
「となればこっちも二手に別れよう。」「え?」
雷牙の提案に一気に不安になる風雅。選別方法は…
『男気ジャンケン、ジャンケンポン!!』
3パー、1グー
『あいこで、しょ!しょ!しょ!』
結果。パー雷牙、一華 グー風雅、凱となった。
パーは右の穴、グーは左の穴に向かって歩きだす。
パーチーム
「ねぇ雷牙さん、風雅くん何で虫苦手なんですか?」
「実はな…」
それは風雅たち八雲兄弟がまだ子供だった大正時代にまで遡る。
妖になる前の風雅は病弱で結核を患っており、立ち上がれないほど弱っていた。
その夜風雅が見た夢は自分の足元、枕元に大量の虫が群がっていて自分の腕を徐々に喰らっていくというそんな悪夢だった。
『うわぁぁぁぁぁ!!』
必死に体をバタつかせ、悪夢を振り切り、現実世界に生還したが…音がして目を開けて上を見ると数匹のゴキブリが枕元で彼を囲んで踊っていた。
それ以来風雅は虫全般主にゴキブリが大嫌いになった。
「ごめんなさい。話が見えないです。」
「うん、俺も見えない。たまに呻いては『ゴキブリのタンゴ』って意味分からんこと言ってる。」
と進みながら談笑している時、左右に空いた部屋から人型蟻が2体現れた。
「来ちゃったよ…」
「ウチにまかせて!はぁ!!」
槍を構えた蟻共は一華の放つ衝撃波の前に砕け散った。
「先を急ぎましょう!」
「ちょい待ち。」
雷牙は穴を通り過ぎることなく、首を伸ばしてその穴の前に留まった。
「幸いだったな…この穴、まだそんなに深くないぜ?」
一華も続いて雷牙の覗く穴を覗いた。「?!」
そして戦慄した。
その穴には数匹の蟻の兵士と150〜180センチの繭が至る所に転がっていた。
「にーしーろー、はー…なるほど」
雷牙が数えたところ、行方不明になって人間の数と一致していた。
「ここは保管庫か…?となれば俺たちの後ろにある部屋は幼虫の部屋か。」「ひっ!」
その繭の中におそらく人間が入っているのだろうが、まだ完全に繭に包まれていない物がありその人間はまだ息があった。
「一華、この数相手取れるか?」
「まかせてくださいよ!あんな虫けらちょちょいのちょいよ!」
と二の腕をパンパンと叩いて意気揚々と繭の部屋に入っていくと、4体もいた蟻たちの他に天井や別の小部屋から新たな蟻たちが入ってきた。
「……うぅ…ごめんなさい…」「オーマイガッ。」
グーチーム
「なぁ早く歩かないでくれよぉ。」
「あんまズボン掴むなよ!歩きにくくて仕方ねぇ!」
凱はこれが俺とあの激闘を繰り広げた男なのか?と疑問を持ちながらズンズンと穴の中を進んでいく。
そしてまた分かれ道、凱は大剣を抜いて地面に軽く立たせ、棒の役割を持たせた。
ガタンッ
大剣は右に倒れた。
「おし、右だ行くぞ!」「えぇ…」
その先にもさらに分かれ道があり、再度大剣を棒代わりにしようとしていたところ、パーチームと同じく蟻の兵士が刀を持って現れた。
「へっ、ただの虫けら風情が一丁前に人間様の武器持ちやがって!行くぜ兄弟!」
「いや俺見学しようかな…先輩として新人の君の活躍を見たい…しね…。」
「変な言い訳してねぇで、ほら!」
「やだーー!ゴキブリのタンゴ!」
「何意味不明なこと言ってんだ!たく仕方ねぇなぁ。“護れ『玄武』”!!!…はちょっとデカいから…ちょっと小型の『玄武』!!」
穴の中の大きさに合わせ子亀サイズで出てきた『玄武』は凱の肩に乗って、蟻の刀攻撃にバリアを張って凱を守った。
「お前も戦うのが嫌ならよ、式神出せばいいじゃねぇのか?」
「ちょ、おま天才か!よーし、“吠えろ『神狼』”!」
………?
もう一度説明しよう。式神は自分の分身であり相棒。好きなものも嫌いなものも共有するのだ。
「うそーん。」
「はぁ〜…仕方ねぇ俺から離れんなよ兄弟!!」
凱は『玄武』を“武装”し、蟻の兵士を刀ごと粉砕し、強行突破に出た。
「猪突猛進だぜぇぇぇぇぇぇ!!!」
「お前牛なんか、亀なんか?猪なんか?!」
蟻たちは次々と惨殺されていくが、そこに一本の矢が放たれ、腕の盾に当たった。
「!?」
「おいおい嘘だろ…」
2人の前に現れた新たな兵士はボウガンを装備し、狙いを定めていた。
「…っく!『玄武』頼むぜ!」
矢が放たれた瞬間にバリアを展開し矢を防いでいく。
「どうすれば…」
「おい兄弟、俺の術式忘れたか?」「……っ!」
凱は左手を広げまるでカーテンを勢い良く閉めるかのようなジェスチャーを取ると、蟻たちの横にあった壁が突如せり出し、蟻たちを潰した。
「俺の術式の能力は大地の操作。壁が土ならこんなのお安い御用よ!」
蟻たちを片付け先を進もうと次の穴に入ろうとした時、
「!、凱下がれ!」「?!」
突如空間にノイズが走り穴が消えた。
「何だと!地震か何かで塞がれちまったのか?!」
「違う…空間が変わった!」
ー「“迷宮(The Labyrinth)”」ー
自身の霊力を媒介にして、迷宮を作りだす能力。霊力が大きければ大きいほど迷宮は広がる。
「すまなかった凱、これは嫌々言ってる暇も無さそうだぜ?」
「スイッチ入ったところ申し訳ないんだけど、みんなそのつもりだぜ?」
パーチーム
「一華、これでも相手取れるか?」
「な、何とか…あっ、!」
「遊べ『狒々王』!“武装”!!」
頭に緊箍児、右手に如意棒、猿の尾を生やし、まるで斉天大聖・孫悟空のような見た目になった一華は如意棒を伸ばし、纏めて吹き飛ばしていく。
「雷牙さんはまだ助かりそうな人を連れてこの部屋から出て!」
「了解した。…大丈夫ですか?」
雷牙はまだ息があり、辛うじて意識がある人に声を掛け、抱えて部屋から連れ出す。
再び部屋に戻り、残った人たちを抱えようとした瞬間、部屋の中央から壁がせり出し一華と雷牙を隔ててしまった。
「雷牙さん!」
「ジョ、ジョウオウサマガ、オイカリダ!」
一匹の蟻が口を開いて人間の言葉を話すと残りの蟻たちも天を見上げ、手を広げた。
「女王さま…?」
一方の雷牙のところにも蟻たちが数匹入り込んで来た。
「なるほどやはりこの能力の使い手は女王、こいつらはその従者、もしくは式神!」
蟻たちがギチギチと顎を鳴らし雷牙と人質に近づく。
「く、来るなぁ!」「いやぁ!やめてぇぇぇ!」
「落ち着いてください。皆さんは必ず俺たちが助けます…エージェ…俺たちを信じてください!」
雷牙にもまだ人を助けたいという心は残っていた。変わったのは風雅だけではない。ヒカルや琥珀の活躍を作戦室ではなく生で体験した雷牙にもほんの少しずつだが熱を持ち始めた。
「お願いなんですが…一瞬だけ、目をつぶってくれませんか。」
「?」
一華はあまりの多さに苦戦を強いられていたが心の中で『狒々王』が話しかけて来た。
『一華ぁ俺ぁ今新しい必殺技を覚えたぜぇ!少々特殊だがなぁ。』
「付き合うわよあんたの遊戯に。」
そして一華は如意棒を蟻たちに構える。
「“色鬼・黒”!!」
一華の新たな必殺技・“色鬼”は指定した色しか攻撃出来ないが、常に2倍の威力を叩き出す。そしてその指定した色が大部分を占めている箇所を攻撃するとボーナスとして8倍の威力を叩き出す。
そして黒蟻は身体の大部分が黒色で構成されている。ということは…
『常に8倍大盤振る舞いだぜぇぇぇぇ!!!』
「はぁぁぁぁぁ!」
衝撃波と“色鬼”のコラボレーション。常に8倍の攻撃力を保ったまま蟻たちを討伐していく。
そして2人を隔てていた壁が崩れた。
「!?雷牙さん大丈じょ…うぶ…?」
雷牙の周りには蟻だったであろう物が散乱していた。そして身体の周りには青いスパークがほとばしっていた。
「雷牙さん?」
「ん?あぁこっちは片付いた。何だ、俺が怖いか?」と自分を卑下した物言いをすると
「いやすごいですよ雷牙さん!どうしてウチらにそれ見せてくれないんですか?!」
「いや、言ったら引かれるかと…」
「そんなことないですってもっと自信持て!」
「そうか…あっ、皆さんもう目開けて良いですよ!ここから出ましょう!」
グーチーム
凱たちは迷宮の餌食となり、途方に暮れていた。途中蟻たちの襲撃もあったが、スイッチの入った風雅が排除。この先どうしようか考えていた。
「なぁ兄弟…ここ何分彷徨ってる?」
「ざっと10分。」
「もう限界だぁぁ俺は迷宮なんて大っ嫌いだっ!!」
凱は“武装”の拳を大地の力で赤熱化させ、壁を打ち砕いた。
「来い、こうなったら迷宮もクソも関係ねぇ、強行突破だっ!!」
そのまま壁を殴り飛ばし、様々な部屋を通過していく。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
しかし一行に先は土だらけ、女王のいる部屋など見えない。その時だ。
「ッ!」
再び空間にノイズが入り、2人は広い空間に移動していた。
「あれ?突破できた!」
「突破というより呼ばれたって感じなんですが…」
「あれ、頭!」
「お前ら!」
風雅たちの隣にはパーチームの雷牙と一華がいた。
「妾の迷宮を壊すとは何奴じゃ…!」
4人が声をした方向を振り向くと。そこには巨大で華奢な体形の蟻が玉座に座していた。
(うっわぁキモい!!今すぐにでも叫びたい…)
「お前が女王か。」
凱は女王に向けて大剣を向ける。
「妾に刃を向けるとはなんと不敬な!貴様らか!妾の大事な子供たちを殺していたのは!!」
「それに関しては俺も聞きたいことがある!」
風雅はあまり女王蟻を直視しないように啖呵を切る。
「なぜこんな迷宮作った、そして人間をさらったんだ!」
「決まっておるだろう妾のエサにする為じゃ。最近の人間は生活や食い物にも恵まれておるから栄養価が高いと思ってのぉ。」
この女王蟻、実は昭和や明治のころから巨大巣穴を各地に作り、式神の黒蟻兵士たちに人間を攫うように指示、一部は子供のエサに、一部は繭にして保管し、自分が喰らおうとしていた。
「未確認第42号ってとこか…」
「貴様ふざけるなよ…たかが虫けらの分際で女王名乗ってんじゃねぇぞ!」
「妾を愚弄するか!兵士たちよ行け行けぇ!!」
42号こと女王蟻は自身の式神であり、子供である蟻の兵士を差し向けた。
「『神狼』、“変身”!!オォォォラァァァァ!!!」
風雅はLEVEL2を解放し、『神狼』を“武装”。凱戦のように肉体が徐々に変化し、視界にノイズが入りブラックアウト。
一度気絶してから顔を上げ、瞳が赤く染まった。
「こやつ、何者!」
風雅は一瞬で兵士たちを殺し、女王の前に現れた。
「しまっ…」「ふんっ!!」
膝蹴りが女王の顔面に直撃、玉座から引きずり下ろした。
「貴様ぁ!妾の顔に傷を付けおったな!?」
「俺はあまり任務に私情は持ち込まないんだがよぉ…この世の虫嫌いの為に死んでおくれ。」
「くっ、」
女王は残った4本の脚で砂ぼこりを起こし風雅を撹乱しようとしたが、まったく効かず風雅は脚を掴んで女王の顔を殴り飛ばした。
複眼がぐちゃぐちゃになり触覚も折れた。完全に女王としての威厳を失った42号はみっともなく逃げ出す。
「待てよ…!」
「ここは任せろ兄弟…俺もあの女には心底腹ぁ立ってんだ…」
凱は右手を広げ赤熱化、天に掲げた。
「逃げろ逃げろぉこの技はあまり皆のいる範囲じゃ使いたくねぇんだ…」
地面の砂や石、岩が凱の頭上に集まり、直径30メートルの巨岩を作り出した。
「“隕” 」
そしてその巨岩はゆっくりと女王の間を破壊しながら42号に向かって落ちる。
「いやだ!嫌やぁゃァやぁぉぁぁ…a」
プチっ
泥団子を掴んだ子供に踏まれて死んだただの蟻は仲間に見られることなく泥の中に埋もれる。
「踏みつぶされて息絶える…虫けらの最期にふさわしいじゃないか…」
「頭怖い。」
「うん、なんか旅団の人が見えたぞ。」
風雅は“武装”を解いてLEVEL2も解除。
そして再び空間にノイズが入り、採石場に戻った。
地上には雷牙たちにより救出され人たちが泣いて喜んでいた。
「頭、雷牙さんすごい強かったのよ!」
「マジか、見たかったぁ。」
「それがウチも見れてないのよ。」「ちぇっ。」
「おい兄貴、力使ったのか!」
「ちょっと、ほんの一瞬だ。」
「じゃあまた一緒に!」
雷牙は手で風雅の言葉を遮る。
「勘違いするな。今回はほんの助力だ…俺はもう戦わねぇよ。」
雷牙は一足先に帰り、風雅は待ってくれと言うように手を伸ばすが、届かなった。
EPISODE21「迷宮」完
次回「飛蝗」




