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妖狩  作者: 定春
第一部 東編
19/47

EPISODE19「玄武」

第二回戦は一華の勝利に終わり女同士の友情が生まれて終わった。結果は互いに1勝1敗、最後の第三回戦。勝っても負けても恨みっこなし。


          第三回戦


 リングに上がるは両チームのリーダー。妖狩エージェントチームからは最強の妖狩エージェント

八雲 風雅、牛鬼会チームからは皆に慕われるかしら石動 凱。

「ようやくお前と戦えるぜ…」

「おう、早めに決着つけてやるよ。」

風雅は仲間になってくれればそれで良かったのに変な試合を申し込まれたせいで半分呆れていたが、ヒカルや琥珀の姿を見た時、一番上の自分がやる気を出さなくてどうするんだ。と心に燃やし覚悟を決めた顔でリングに上がり、特殊防護服に身を包んだ。


「いい顔付きになったじゃねぇか…八雲 風雅!…さぁ“祭”の始まりだぁぁぁぁぁぁ!!!!」


凱は常に戦いや喧嘩のことを“祭”と呼び、血肉湧き踊るのだ。

そして第三回戦開始のゴングが一華により鳴らされる。

凱は背負った大剣を握り、ゆっくりと振り下ろした。

「お前は武器を使わないのか?八雲 風雅。」

「俺の武器はこの拳と煽りのジョークを言うための口だけで充分よ!」


風雅も構えを取り、互いに走り出す。

風雅の拳が届く時、凱は大剣を使わずに左手で受け止めた。

しかし最強と言われるだけあり、受け止めるもその余力で体が押し戻されていく。

「さすがのパワーだ…だが!」

凱は残った右手で大剣を振るって風雅を引き剥がした。

「その大剣、めっちゃ重そうだな…」

「中坊の頃からあるんだ…先代のかしらの形見でな…鍛えて、鍛えて、鍛え続けて、17の頃にやっと自由に振るえるようになった…そんな愛着のある武器なんだ。」

「そっ……かっ!!」

凱の身の上話を聞くのは囮。実はその隙に乗じて頭上からパンチを仕掛けた。

「?!」

凱は獣の如き反射で頭上からの攻撃を大剣で防いだ。

「てめぇ!」

「隙作ってくれてありがとよ!」

風雅は拳を大剣から離し更に距離を取った。

「“鎌鼬”!」

いつもはサマーソルトから放つ風の刃だが、今回は手刀から三連の風の刃を放つ。しかし凱は大剣を軽々と振るい風の刃を全て断ち切った。

次は凱が攻める番だ。一瞬で間合いを詰めて大剣を風雅の前に振り下ろす。

「おらぁぁ!!」「ぶねぇ!」

風雅は刃を特殊防護服の籠手でガードし、凱に頭突きを食らわせる。

そして凱は頭から血を流してのけぞった。


(楽しい…楽しすぎる!かつてここまで俺を楽しませた戦いがあっただろうか…やっと自分と同じ土俵に立つ奴と…これなら負けても……?!、いいやダメだ!!)

「戦いを楽しむのは俺の勝手だが…だけど、負けることを認めるなぁ!」

と風雅との戦いで気持ちよくなっていた自分に怒った。

「見せてやろう…俺の術式を…」

すると凱の手足が橙色にほのかに光り、風雅の腹部に強烈な一撃をぶつける。

「?!」

ただのパンチではない。まるで腹に岩石を直接ぶつけられたかのような感覚だ。その巨大なパワーをもろに受けた風雅は吐血した。

「先生!!」「風雅!?」

「まさかあいつがあれ程のダメージを受けるなんて…」

妖狩エージェント側は想定外の事態で雷牙さえも衝撃を受けた。


       ー「大地(The Earth)」ー


石動 凱の使用する術式。岩石や地面を操る能力。さらに解釈を広げ、大地の力を借りることで己の身体能力を極限まで上げることが可能となった。


 「俺の術式…舐めたら死ぬぜ?」

「くそ…まさかこの俺が血吐くとはな…ガキの頃以来だぜ…」

風雅は妖力を上げ、右手に風を溜めた。

「“疾風弾・V2”!!!!」

強化された疾風弾を繰り出すも身体能力の能力の上がった凱にはスローモーションのように映り、避けたものの脇腹をかすめ取った。

「くそったれ!V2までギア上げたんだぞ!」


風雅は蹴りやパンチ、術式なしの単純な体術の切り替え、凱を攻撃していく。しかし全て大剣でガードされ本体が刃に隠れて攻撃が当たらない

凱は身体能力の上がった状態で大剣を振るう。振るっただけで突風が起き、リングのロープがブチブチも音を立て始めた。

先程同様凱は大剣を風雅の上に振り下ろす。すかさず籠手でガードするもパワーが上がった状態で握られた大剣も強化されており、籠手には刃の跡がくっきりと刻み込まれ支えている体も限界に近づきリングに体が沈み込む。

「間違いない…これは、今までで最大のピンチだ…!」

「風雅負けるなぁぁぁぁ!」


「ふん!」

左手に風を集め、パワー全振りの「“旋風”」を放ち凱をロープまで吹き飛ばした。

「はぁ…はぁ…妖狩エージェント・『神狼』…参る!」

風雅は走り出し、凱に向かって飛び蹴りを繰り出す。

「はぁぁぁぁぁ!!」「その手は食わんぜ!!」

凱はその決死の飛び蹴りでさえも大剣でガードされてしまった。

「これもだめだったのか…」

「先生…」

ヒカルたちが固唾を飲んで見守る中突如。


           ピキッ


という音が体育館に響いた。凱は見えていた…

大剣にヒビが入っていた。中学生の頃から振るい、17歳の時に自由に使えるようになった愛着のある大剣にヒビが入ったのだ。

さらに追い打ちをかけるように逆の脚を使って2回目の蹴りを放ち、

         

          バキンッ!!


その音を立てて大剣は真っ二つに折れた。

「!?、かしらの剣が!」

「先代の剣が叩き折られたぁぁぁぁぁ!」

体育館にいる全ての牛鬼会メンバーが衝撃を受け一瞬でその場に阿鼻叫喚の嵐が巻き起こった。


「さっきの吐血のお返しだ…すまねぇなぁ…」

凱は目の前で自分の武器が死ぬ瞬間を見て言葉を失い、大地の力も消えていった。

「俺の…俺の武器が…がっ!」

意気消沈した凱に向かって風雅の拳が無慈悲に振るわれた。

「てめぇ…自分の武器が壊れたぐらいで落ち込んでじゃねぇよ!!どれだけ思い出が詰まった物なのかは俺には分からない、だけどな、もしそれが俺以外の戦闘で起きた時…それでも落ち込むのか!?戦う者として恥ずかしくないのか石動 凱っ!!」「ッ…!」


風雅の説教で完全に目覚めた凱。そして不敵に笑う。

「そうだな…お前の言う通りだ…落ち込んでちゃ始まらねぇし、終わるもんも終われねぇ!」


         「護れ『玄武』!!」


凱が再び大地を踏みしめる時、背後から巨大な式神が出現。

亀の体に蛇の尾、猛牛の角を生やした鉄壁の式神・『玄武』が顕現した。

「へ、やっとやる気になったか。じゃあ俺も!」


         「吠えろ『神狼』!!」


風雅も式神『神狼』を召喚。互いの妖力がどんどんと高まっていき、最高潮に達した。

「“変身”!!ウォォォラァ!!」

風模様の痣が出現、髪が逆立ち緑色に変化。天井を見あげ叫ぶ。

「先生…?」

風雅の血が消え、その血が両腕に移動し、赤く染まり獣のような武装が施され、白銀の尻尾が生えた。

さらに視界が黒く暗くなっていく。一瞬ノイズが走り

ガクッと体が沈んだ。

「まさか…気絶したのか…己の力が強すぎて制御できなかったのか?」

雷牙がそう思った時、風雅の顔がゆっくりと上がっていく。

目を開いた時、その瞳はピンクに変化していた。

「これが俺の最高到達点…“LEVEL2MAX”!」


「それでこそ俺の相手となるにふさわしい…!!行くぞ『玄武』、“武装アームド”!!」

凱も負けじと『玄武』を両腕に“武装”、目元には痣が出現し、側頭部には牛の角が生えた。

両腕の“武装アームド”は亀の甲羅のような盾になりながらも近接戦闘を想定したようなデザイン。黒曜石のような輝きを放つ。

「言うなれば…最強の盾だ。」

仲間を護る為に身につけた力と意志がこの“武装アームド”を作ったのだ。


「そうか…お前も進化したのか、LEVEL2に!」

「お前にいつか勝つためにあれから特訓したんだ…その間に仲間たちが妖に殺されることもあった…そして守れなかった自分の弱さを痛感し、自分への怒りでLEVEL2が目覚めたんだ!!」

両者LEVEL2に目覚め、青いスパークが飛び交う。


「凱、謝りたいことがある…」

「なんだ…」

「お前との勝負、一度断ろうとしたことだ…ごめん。まさかこんなに心の底から楽しくなれるなんてな…自分でもビックリだぜ?」

「俺も同じ気持ちだぜ、兄弟ブラザー!!」

風雅は凱に向かって走り出しLEVEL2で強化された拳で特攻した。

しかし、無敵の盾の前ではまったく歯が立たず、逆に風雅の拳に激痛が走った。

「いってぇぇぇ!!」

「ったりめーだ、無敵の盾だぜ?!」

さらに盾の上に小さな六角形が塊となって並び、バリアを生成した。

「“鎌鼬・V2”!!」

風の刃も最強の盾の前ではそよ風と化し、受け流された。

しかしその受け流された“鎌鼬”が観客席の方に向かってしまった。

「しくった…危ない!!」

「安心しな。」

観客席のメンバーは身構えたが、観客席全体にバリアが張られ“鎌鼬”の刃は衝突して消滅した。

「俺の式神『玄武』の能力だ。戦いながら周囲を護る方法を思いついて、他人に盾を付与出来るんだ。」

「便利な分身だな…」

そうと分かればお互い配慮することはない。全力でぶつかるのみ。


「風雅…お前は石動 凱の無敵の防御をどう突破する…」

雷牙は風雅の不安を感じ取り自分までもが心配している。

しかしそれは杞憂に終わるだろう。風雅は決して仲間の前ではへこたれない。

そして自分の両手に風を纏った。

「そんなの無駄だぜ?この盾の前じゃどんな風もそよ風だ!」

「それはどうかな!今の俺は、お前という向かい風を追い風に変えることができる!」

「そうかい、これでもかぁ!?」

凱は右の拳に大地の力を集中させ赤熱化し、その拳をリングに叩きつける。


          「“さい”っ!!」


拳から放たれる大地の力はリング全体に伝わり、リングは粉々に破壊された。

「?!」「ここからは場外乱闘だぜ!」


いくらリングの周りにバリアがあると言っても粉々になったリングの破片が全てバリアにぶつかり一同は壊れるんじゃないかと怯える。

「この野郎っ!」

風雅は拳に風を再び纏わせ、凱に特攻する。

一方の凱は得意げな顔で盾を構える。

「“旋風・V2”!!」「?!」

先程よりは強いがやはり決定打にはならず防がれてしまう。

「どうした?それがお前の策かぁ!? “砕”っ!!」

新たな打撃武器となった盾で腹部を殴られ、骨は砕け、血反吐を吐き、バリアに激突。

「どんな強力な必殺技が来るかと思ってたんだが…とんだ拍子抜けだぜ…万策尽きたというわけか。」

(まだだ…まだ向かい風のまま…逆風を起こすには…)

風雅は再び風を纏って雄たけびを上げ突っ込んでいく。


しかし満身創痍になった威力では簡単に凱に掴まれ腹部を蹴られ頭突きをくらい投げ捨てられた。

「もう終わりか、八雲 風雅。がっかりだぜ…」

「おいおい…そう簡単に切り捨てられたらさすがの俺でも傷つくぜ?心配するなら自分の腕ぇ見といた方がいいぞ。」「何…?」

凱が自分の盾を確認した時、盾に亀裂が入っていた。

「なっ、どうして…!」

「万物は全て壊れるもんだ…絶対防御の無敵の盾は存在しない。どんな硬いものにも必ず“目”ってやつがある。俺はそれをずっと狙っていた…さっきの大剣も同じだよ…。」


風雅は凱に掴まれる前の一瞬で最小で最大火力の“疾風弾”を放ち、盾の“目”を攻撃していたのだ。

「矛“盾”の盾だったな!」

動揺した一瞬の隙を付いて風雅は蹴りを繰り出し、遅れて反応した凱は亀裂の入った盾で防ぐが、その蹴りで盾は砕け散り、身体は吹っ飛び体育館をぶち破って外に放り出された。

皆を守っていたバリアは消滅、一同は体育館に空いた大穴から2人の姿を確認した。


 両者“武装アームド”可能の時間を超えて素の状態まで戻る。

「これで終いだ…この一撃で全てが決まる!」

「正直舐めててすまなかった…己の慢心に気づかされた…」

風雅は風を、凱は大地の力を拳に纏わせ、両者走り出す。

   

       『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』


「先生!」『風雅っ!!』

かしら…』


       『いけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』


2人の拳が互いの顔面に直撃、血反吐を吐き、衝撃に耐えかね両者吹き飛び同時に倒れた。


「…これでどちらか一方が立てば…そいつの勝ちだ。」


           ピクッ


わずかに凱の指が動き、膝が曲がり立とうとしていた。そして勝者が決まった。


先に立ったのは八雲 風雅。

残った力で風で自分の体を浮かばせ立つことに成功した。

「勝った…先生が…勝った!!」



         勝者 八雲 風雅


両チーム、2人の健闘を称え拍手喝采で会場は盛り上がった。

ヒカルと琥珀は嬉しさの余り風雅の体に飛び込んだ。

「痛い痛い痛い!」

「あっすんません。」「そうだった折れてんだった!」

「良い仲間出来たじゃねぇか…」


凱は意識を取り戻し、優しげな笑みを浮かべていた。

「暴走してた俺が言うのもなんだが…去年のお前は何かに追われているかのような顔をしていた。だが今のお前は余裕があって優しい顔をしている…」

「感想ありがとよ。ほら。」

風雅は手を伸ばし、凱は負けても誇らしげな顔でその手を取って立ち上がる。

「これからは牛鬼会一同、お前たちの力になるぜ!兄弟ブラザー!!」

「良い戦いだった!こちらこそよろしく凱。」


こうして、牛鬼会一同を傘下にし、さらに戦力が増えた妖狩エージェント達であった。

                 EPISODE18「玄武」完

  

          次回「黒蟻」

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