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妖狩  作者: 定春
第一章 東編
15/32

EPISODE15「狼王」

   

           

雨の七夕に未確認第40号と未確認第41号の2体の妖が同時に出現。鉄球と分身という手強い二人を相手に激戦を繰り広げる妖狩エージェント3人。40号にマークされた風雅は真の力を解放する。


 「これが俺の新境地、LEVEL2だ!」髪が逆立ち緑色に輝き、青いスパークが空気を震わせる。

「何だ…それは!」

「進化した先の力さ。俺は自分の力を受け入れて手に入れた…お前らのような外道から皆を護るためにな!!」

「ほざけぇぇぇぇぇぇ!!!」

40号は恐れ慄いたのか、鉄球を最大サイズにして風雅に投げつけた。

しかし、LEVEL2へと進化した風雅の前ではお手玉と化す。

片手で最大サイズの鉄球を受け止め、鉄球はこぼれ落ちた。

そして風雅は指をパチン!と鳴らすと、分身の頭上に雲が出現。そこから竜巻が41号の本体と分身めがけて発射、空間にまで影響を及ぼす範囲にまで成長していた。

「すごい…あの数の分身を一瞬で…」

「もう風雅1人でいんじゃない?」


追い詰められた40号と41号はそれぞれ逃亡を図ろうと逃走したが41号の本体が走り出した瞬間、風雅が一瞬で先を越し、回し蹴りで41号を廃材の山まで吹き飛ばした。

「次はてめぇだぜ鉄球野郎。」「くっ…!」


          「待て。」


 突如40号の頭上にある廃材の山の上から声が聞こえた。

40号が見上げるとそこには腰に刀を差した小学生らしき少年が立っていた。

「何だあの子供…」

           「!」

その少年は山から飛び降りるや否や刀を抜いて斬撃を放ち、風雅に攻撃を仕掛けて来た。斬撃の色は赤黒く禍々しい。

風雅はとっさに反応し、40号から距離を取った。

「財団の支援を受けておきながら何たるザマだ…」

とその少年は例の“財団”と呼ばれる集団の関係者らしきことを40号に話した。

「す、すみません!次こそは必ず…!」

「“財団”からのプレゼントだ。これが最後のチャンスだ。次失敗すれば…」

「分かっています!」

少年が40号に渡したのはある液体の入った注射器。

「何だあれ…」

少年は腕を組んで廃材の山にもたれた。

「これさえあれば!」

40号は躊躇せずにその注射器を首に刺した。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


刺した直後に血管が膨れ上がり、筋肉は膨張しもがき苦しみ出した。

「おいコレ大丈夫なやつなのかガキ!」

「俺は財団に命令されて渡しただけ。こいつの体がどうなろうと俺には関係ない。」

少年は部下がどうなろうとまったく興味が無いようだ。

40号の放つ霊力のオーラは赤黒くなり、黒いスパークが体の周りに現れた。

「こいつぁやべぇな…」

40号は黒い鉄球を両手から生成し、投擲した。

難なく受け止めようとした風雅だったが、先程よりも鉄球のスピードとパワーがあがり、廃材の山まで吹き飛ばされた。

「風雅!」「先生!」

「心配すんな大丈夫だ!それに、ちょうど張り合いが無くて困ってた所さ…」

風雅は山から飛び出し、霊力を高めた。


       「“吠えろ・『神狼』”!!」


式神を召喚した後もさらに霊力を高め続けた。

    

    「これが俺の…俺たちの…“超変身”!!」


『神狼』は光となって吸収され、風雅の姿が変わっていく。変わったのは両腕。

生物感の強いデザインとなり、人間の筋繊維を模した腕、狼の持つ鋭い爪を装備した。

LEVEL2の“武装アームド”は体全体が進化するだけではなく、各々のイメージした武器や装甲を纏うことができる。

式神の有り余るパワーを全て両腕に集中させたパワー特化型の“武装アームド

「死ねぇ妖狩エージェント!!!」

40号は再び鉄球を生成し、風雅に向かって投擲した。が、

         

          「はっ!!」


なんと拳で鉄球を破壊してしまった。「?!」

更に追い打ちをかけるように風雅は走り込んで40号の間合いに入った瞬間に蹴り、飛び上がった所を狙って肘打ちで地面に落とす。40号は蹴りで風雅を引き剥がし、無数の鉄球を投擲するが、それですらもパンチで破壊されながら前進してくる。

「何だこいつバケモンか!」

次から次へとラッシュの嵐、LEVEL1の頃からもそうだが狼は群れで狩りをする生き物。それを1人の力でこなしてしまうのが風雅なのだ。

つまり、一匹狼に見えて実は大軍を従える“狼の王”と呼ぶべき妖なのだ。


「この俺様が…この、俺さm…」

「遺言は“負け惜しみ”か?」

少年は何かを感じ取り、腕組みをやめてヒカルたちの前に立った。

「アイツも終わりか…」

風雅は右手に風を溜め、スパークはさらに加速する。

         

        「“疾風弾・V2”!!!」


強化された“疾風弾”を放ち、40号の体を貫いた。

「あ…あぁ…」

黒いモヤが消えた後、40号は灰となり、消滅した。

風雅たちはどんなに外道であろうとも命には変わりないことを承知し、黙祷をした。

「所詮奴も三流か…」

「…次はお前か?」

「俺は戦いに来たのではない…今日のところは帰るとしよう。」

謎の少年は自分の影の中に入り、その場から消えた。


     ー7月7日 PM20時30分ー


事件は解決。琥珀は窓の外に顔を出し、曇った夜空を見つめていた。

「はぁ…結局今年も観れないか…」

と落ち込んでいた時、風雅が声をかけた。

「じゃあ、こうしてやろう!」

風雅は外に手を伸ばし、雲を掴むようなモーションをすると雲が次々と空から剥がされ、きれいな星空が隙間から覗かせていた。

ついに見えた天の川。琥珀は瞳をキラキラとさせながら夜空をずっと見ていた。

「わぁ!これが天の川〜!」

「ぼくも初めて見る!」

子供2人は綺麗な七夕の夜空を見て興奮し、あまり子供の扱いが得意でない大人2人はそれを見て少し微笑んだ。


      ー路地裏 PM20時40分ー


 逃げ延びた41号は息を荒げながら夜の路地裏を裸足で走っていた。

「元はと言えばアイツが悪いんだ…アイツが勝手に“財団”に寄付して、俺も妖にされて…逃げ延びてやる絶対に逃げ延びてなる!!」

          

           「待て!」


 41号を呼び止めたのは頭にゴーグルを着けた赤髪の青年。

「お前…誰だ!まさか組織の回し者か!?許してくれ!俺は何もしてねぇんだ!ちょっと相方がやらかしただけで…」

「俺は組織からの回し者ではない…しかしお前は強盗、殺人その他様々な犯罪を犯した。今ここでお前を始末する。」

「何だt…!!」

41号が分身を生み出そうと身構えるよりも速く青年は背後に移動し、そのまま

「消去完了。」

と呟いてその場を後にした。


  「た、助かっ………あ゙、あ゙ぁぁぁぁぁ!!!!」


突如41号の体が炎に包まれた。炎は41号の体を崩し、灰を残すことも無く消滅してしまった。

青年はゴーグルを少し触り、息を整えてまた歩き出した。

     「全ての妖は…俺が倒す!」

                 

                 EPISODE15「狼王」完



          次回 「不良」

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