EPISODE14「真価」
風雅は式神・『神狼』との特訓により恐れていた力を受け入れることでLEVEL2へと強化され、今まで分けていた力も取り戻した。
「未だに慣れないな、黒髪の先生。」
「直に慣れるって。こっちが本来のカラーリングなんだよ?」
ペラッ
二人の隣から紙をめくる音が先程からずっと聞こえていた。
「お前何してんの?ずっと雑誌とか絵本読んでるけど?」
「だってさ、今日は……」
本日7月7日は七夕だ。
琥珀は七夕の話題が載った雑誌や絵本を片っ端から探し出し、床に広げていた。
「せっかくの七夕だし、今年こそは織姫と彦星には会ってもらいたいな〜あと天の川も見たい!」
「へぇ〜案外可愛いとこあんじゃないのさ。」
「僕も生まれてこの方天の川見たこと無いですねぇ。」
「でも今雨だぜ?」
風雅がカーテンを開けると夏の大豪雨と呼ぶべきの嵐が目に飛び込んだ。
現実を突きつけられた琥珀は分かりやすいほど落ち込み、ソファに倒れ込んだ。
「また雨かよ…いい加減にしなさいよね…永遠に別居夫婦じゃない…」
「まぁあの二人の事を思うと当然の末路というか…」
「アンタは黙ってて!落ち込んでるから…」「えぇ…」
ヒカルの余計な一言でさらに機嫌を損ねた琥珀はソファで丸くなった。
にゃ〜
そして丸くなった琥珀の上に紫色の子猫が乗っかった。
「あれ、この猫って…」
「アタシの式神。『猫又』って名前にしたわ。おいでー。」「にゃ~。」
琥珀の式神となった『猫又』は主と同じポーズでソファで丸くなった。
その時、自室から雷牙が出てきた。
「琥珀居るか?」
「アタシは現在ふて寝中。」「こっち向け。」
仕方なく雷牙の方を見ると、いきなり手に持ったペンから強烈なフラッシュを浴びせられ、床に転げ回った。
「目がぁ目がぁぁぁぁ!」
「そんな強くねぇよ。手首見てみろ。」「へ?」
言われた通りに手首を見てみると銀色のリストバンドが付けられていた。
「ナニコレ?」
「特殊防護服が収納された特性バンドだ。脳波で作動する。試しに何か合言葉で念じてみろ。」
「うーーん」
(大人のお姉さん!)
バンドが琥珀の脳波を感知し、一瞬で衣服が特殊防護服へと変化した。
黒と紫を基調としたカラーリングで琥珀と非常にマッチしている。
「うわぁ可愛い!」
「これで琥珀ちゃんも妖狩かぁ」
喜びよりも心配の方が勝ってしまうヒカルなのだった。
ー7月7日 AM10時00分ー
豪雨は収まり、本降り程度まで落ち着いた。そしてそこで事件が起きた。
雨が降る街の中、突如として大量の鉄球が降り注いだのだ。
傘を差した市民は視界を遮られ、雨音で鉄球の投擲音が聞こえなかったため、市民に次々と鉄球が衝突し、圧死する事件が発生。
その知らせを聞いた妖狩3人が駆けつけた。
「あーもう雨でびしょびしょよ…」
「防水と速乾機能あるから大丈夫だぞ。」
現場に到着し、ヒカルが辺りを見渡していた時
バゴンッ!!
ヒカルの顔面すれすれに鉄球が飛んできた。
「ギャァァァ!!」
鉄球はコンクリートの壁にめり込むとその場で消滅した。
「これは霊力で作られているのか!?」
「ち、俺としたことが外しちまったぜ!」
妖狩たちが声のした方向を見ると、声の主はマンションの屋上で次の鉄球を準備していた。
「聞いてるぜ、お前ら妖狩なんだろ?」
鉄球を持つ巨漢は未確認第40号と呼称された。
「嬉しいねぇ俺ら有名人だ。」
風雅のジョークも聞かず、40号は鉄球を振り回し、ブンブンと音を立てていた。
「やばいやばいやばい!総員退避ぃぃぃぃ!!」
風雅は二人を路地裏に押し込み、風のバリアで鉄球を受け流した。
屋上にもう1人、人影を確認。何やら40号と親しげに話している。
「お前何人殺った?」
「ざっと20人だ。俺様の鉄球は回避不可能だ!」
風雅は妖たちが談笑している隙を突いて、屋上に飛び上がり、もう1人の方に狙いを定めて拳を振った。
「ざーんねんでしたー!」「!?」
もう1人の妖は風雅の拳が顔に当たる直前に体が分裂し、そこからもう1人の自分が生まれた。
ー「“分身(The Doppelganger )”」ー
もう1人の自分を生み出す能力。精度は本物と瓜二つ、分身も術式を使うことが可能で2倍、4倍と増えていく。
「ほれほれどうした妖狩さんよぉ!」
3対1の状態になり、分身使いの攻撃をかわしながら東刑事に連絡をした。
「同時にもう1体の妖を確認、未確認第41号です!」
分身使いは41号と呼称され、さらに2体、4体と分身から分身へと増殖していった。
(このまま増殖して町中に逃げ込まれたら収拾つかねぇ!)「琥珀、俺たちの重力を横にしろ!」
風雅からの突然の指令で一瞬困惑したが、もう前の術式が扱えない彼女ではない。
気をためて両手を天に掲げ、ぐるんと横に流すとその場のいる風雅を含めた妖たちが宙に浮き、横に落下していった。
「風雅、これどこまで落とせばいいの?!」
「2キロ先の廃材置き場。です。」
「カーナビか!廃材置き場ね、落ちろぉぉぉ!!」
ー廃材置き場 11時40分ー
40号と41号は琥珀の重力に逆らえず、廃材置き場に墜落した。
「いってぇ…大丈夫か俺たち!」『おぉ!』
「相変わらずお前の能力気持ち悪ぃな。」
風雅たちも廃材置き場に到着した。
「観念しなお二方、今から自首するってんなら特別刑務所に送ってやるぜ?」
その交渉を聞き、40号と41号は顔を合わせたが、
「自首するわけねぇだろって!」
「俺たちゃ“財団”のくれた金で一生自由に遊んで暮らすんだよ!」
財団?!
聞き慣れない謎の組織。財団とは何者なのか、風雅はそれを聞き出そうとしたが
41号がさらに分身。合計でなんと64体。
「くそ!」「先生やばいですよ!」
その後に40号が鉄球を飛ばし、風雅たちの行動を制限していく。
ー「“鉄球(The Ironball)”」ー
空気中の霊子を集めて鉄球へと変換し、投擲する能力。破壊力はすさまじく、本物の鉄球と遜色がない。
人間が簡単にミンチになるほどの鉄球が当たれば、いくら身体能力の高い妖と言えども無事では済まない。
「多すぎる…!くらえ重力!!」
琥珀は重力を使って41号の分身を潰していた。
「これじゃどれが本物なのか分からないよ!」
ヒカルは飛んでくる鉄球を避けながら41号の分身を倒して消滅させるの繰り返し。
琥珀は重力操作による霊力消費が激しく、徐々に弱まっていた。
「やばい…弱くなってる!」
『琥珀、腰に武器を入れておいた。』
琥珀が腰の辺りを確認すると、両サイドにクナイが差されていた。
琥珀はクナイの持ち手の穴に指を引っ掛けて引き抜き、瞬時に2体の分身を切り伏せた。
「そしてこのクナイに微弱な霊子を流す…!」
そうすれば刃に重力を纏ったクナイの完成だ。
そのクナイで切れば、物体は重くなり、自らの罪を詫びるようにひれ伏す。
「これ…使えるわね…!くふふふ…。」
不適な笑みを浮かべた琥珀はその後も分身を切り伏せていく。
「うわ、またなんか変なこと考えてる…」
一方の風雅は40号にマークされ、弟子たちの手助けに行けない。
「一度お前とは手合わせしてみたかったんだよ妖狩・『神狼』。」
「それはそれは嬉しいお言葉だぜ。だけど俺と戦うってことはそれなりに覚悟してんだろうなぁ!」
「…!覚悟だと…あぁしてるさ、てめぇなんか怖かねぇ!!」
「そうか…じゃ、行くぜ!!」
その時風雅の霊力が一気に高まり、顔には風模様の痣が出現、青いスパークがほとばしり、特訓の際には発言しなかったが瞳が緑色から赤に変色し、髪が逆立った。
逆立った髪は黒と白に点滅し、白になった後一瞬エメラルドの如き緑色に変化した。
「これが俺の新境地、LEVEL2だ!!」
EPISODE14「真価」完
次回 「狼王」




