EPISODE12「任務」
未確認第38号による事件が片付き、民間人、警察両方にも甚大な被害をもたらした凄惨な1日だった。
ー八雲邸 AM8時30分ー
昨日の事件解決から風雅は道場に籠ってしまったらしい。
「先生、どうしたんだろ…?」「昨日の事でだいぶ責任感じてたみたいよ…。」
「アイツは迷った時、必ず籠るんだ。その内出てくるよ。」
雷牙は口では軽く言っているが、内心は誰よりも不安だった。
ー八雲邸別邸・道場ー
風雅誰もいない道場の真ん中に佇んでいた。そして自分の目の前に『神狼』を召喚。
「よぉ、二人きりで話すのは久しぶりだな『神狼』。」
『久しいな、私よ。』
面と向かって己と対面した風雅は『神狼』に質問した。
「なぁ、お前は俺の力を奪うんだ?」『はぁ…』
『神狼』は当たり前過ぎる事を質問された時のような溜息を吐いた。
『それは私自身が知っているだろう私よ。率直に言えば、お前は強くなることを恐れているのだ。』
「俺が…強さを恐れている…?」
『下手な演技はしなくていい。弱くしているのは私はお前の分身であり、お前の無意識の命令を守っているからに過ぎない。』
「だけど弱いままじゃ、今後現れる妖にも対抗できないんだ!」
『兄・雷牙の惨劇を忘れたか?』「…!」
10年前のことだ。突然大量の妖による大進撃が日本全土を襲った。
拡大する怪事件に対抗するため東の提案により妖狩と協力関係を結び、当時まだ黒髪だった風雅と雷牙のコンビで妖を次々と殲滅していったが、雷牙がとある親子を助けた時のことであった。
「化け物!!!」
母親の非常な声が雷牙の心を完全に砕いたのだ。雷牙により妖に襲われていた所を助け出されたのだが、大怪我をした子供を庇っていた母親は手を差し伸べる雷牙を見るやいなや「化け物」と罵った。おそらく混乱していたのもあるのか、雷牙のことを自分たちを襲った犯人だと勘違いした。
無理もない母親が見た雷牙の姿はバケモノそのものだった。それに便乗した人間たちが雷牙だけを集中で非難し始めた。
自分が命懸けで助けた相手に罵られたことで戦う気力を失った雷牙は妖狩の称号を捨てて引きこもるようになってしまった。
『お前はそんな兄の姿を見て私に己の力の半分を分けた…兄より強くなること、バケモノと呼ばれることを恐れた。』
「さすが俺、心の中までお見通しか…お前が言ってくれたことは全部ホントの事さ、でもよそうやってずっと自分を抑えるのやめだ。」
『というと…?』
「下に弟子を抱えた以上、そう言ってられなくなったのさ。」
自分自身には分かる。『神狼』は風雅の覚悟を見た。そして黒いモヤが『神狼』を包んだ。
『お前のその覚悟受け取ったぞ!私を調伏したあかつきには、分けた力を全て戻す。よいか。』
「あぁ、全力で行くぜ!」
黒いモヤが晴れた時、『神狼』は立ち上がった。風雅が“変身”した姿よりも獣の姿に近く、禍々しい。これが『神狼』の本来の姿だ。
道場には風雅と本来の姿となった『神狼』の二人きり。
式神が相手となったので、術式以外使えないというハンデを背負わされたものの風雅はそのハンデさえも楽しんだ。
「来い!」『うぉぉぉぉぉ!!』
『神狼』の繰り出すパンチを片手で受け止めたが、その強大なパワーを片手では相殺しきれず、後ろに押されていく。
壁にぶつかる直前に『神狼』の腹に蹴りを入れて回避した。
「自分の主が可愛いか!?その爪は、そのスピードは何のためにある!」
『自分に説教垂れるとは随分と余裕だな、昨日の覚醒を見せてみろっ!!』
風雅は『神狼』から距離を取って、気を溜め始めた。
身体の周りに青いスパークが現れ、髪がチカチカと緑になる。その不完全な状態で『神狼』に突っ込んでいった。
一方の『神狼』は禍々しい赤黒い色の霊力を溜め、風雅の拳を軽々と受け止めた。
『LEVEL2は不完全か…まだだ、まだ高められる。』
「もう一回だ!!」
ー警察署 AM11時08分ー
ヒカルたちは学校を休み警察署に来ていた。
ヒカルは緊張のせいか冷や汗をダラダラと流し、体がこわばっていた。その緊張を和らげるために東はヒカルに近づき肩をもんでいた。
「ありがとうございます…実は今日の朝から先生引きこもっちゃって…」
最近妖による事件が増えており、風雅1人に任せていた警察たちも責任を感じていた。
そんな時だった。妖による事件が発生したと報告が入った。
「至急向かう!行きましょう!」
東は多くの刑事を引き連れて現場に急行した。
「ヒカル、どうしよう…風雅がいなかったら解決しないよ。」
「僕らも行こう!雷牙さんも…」「俺はいい。ここから警察をサポートする。」
ー 現場 AM11時36分 ー
現場に到着したヒカルと琥珀は警察が未確認第39号と戦っている場面に遭遇した。
しかし、いつもの警察とは服装が違った。
「あれって、先生が来てる防護服と同じ…?」
「でも全部同じでモノクロね。」
それもそのはず警察が着ているのは量産型の特殊防護服だ。妖狩の着る特殊防護服の下位互換にはなるが警察(人間)にとってはサンドバック的な役割を果たす。
ー「“鉤爪(The Claw)”」ー
未確認第39号は両手にウル◯ァリンのような鉤爪を生やした虎型の妖。警察たちは銃を発砲しながら距離を取りながら戦うが、39号は鉤爪を鳴らし、高笑いしながら警察を防護服ごと切り刻んだ。
その光景を見たヒカルは蟷螂男を思い出し、勝手に体が動いた。
「やめろぉぉぉぉ!」「ヒョ!?」
ヒカルは39号に向けて飛び蹴りを放ち、ひるませることに成功した。
「もう誰も殺させないぞ、先生の代理は僕がする!」
それを無線越しに聞いていた雷牙。彼はヒカルの言葉で少しだけだが、妖狩に前向きになれたように心が「ドクン」と鳴った。
「ヒカル、防護服を出してみろ…脳波で作動する。」
「え、分かりました。ふんっ!」
その脳波を感知し、ヒカルの体は特殊防護服に包まれた。
「え、いつの間に!?」
「すまないな、寝てる間に仕込ませてもらった。さすがに学校指定ジャージは可哀想だったから。」
「とにかくこれで十人力です、ありがとうございます雷牙さん!」
「貴様ぁよくも俺の顔を蹴り飛ばしやがったな!」
39号は怒り、自分の鉤爪をぶつけ火花が散った。
「お前に聞くぞ、罪を償い投降するか、この場で僕に倒されるか…!」
「俺は大金手に入れて幸せに暮らすんだ、テメーらサツには屈しねぇ!もちろんてめぇみてぇな警察ごっこしてるガキにもなぁ!ぶっ殺す!」
「分かった…未確認第39号。風となって散れ!」
EPISODE12「任務」完
次回 「光明」




