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妖狩  作者: 定春
第一部 東編
11/45

EPISODE11「爆走」

 “未確認第38号”こと『猟豹チーター』の連続キックを食らい、炎上したトラックに激突。さらなる大爆発を起こした。


「あーあ。死んじゃったか〜。また速い奴さーがそ!」

38号はそのまま走り去ってしまった。

それとすれ違うように風雅が爆発で炎上したトラックの残骸から這い出てきた。

変身が解けて力尽きた所をあづまたちに発見され病院に運び込まれた。

幸い『神狼』の鎧によって焼死せずに済んだが、鎧の下は酷い火傷を負った。

最強の妖狩エージェントである風雅が敗北したとの報告を聞きつけた警察はすぐに作戦室で会議が行われた。

「やはり…そろそろ妖狩1人ではキツいのでは…」

「前々から彼1人では心細いと思っていたんですよ!」

「ですが…所詮彼も妖、何をしでかすかとヒヤヒヤしていましたがこんな醜態を晒すとは…」

1人の偉そうな刑事が風雅を非難する声を挙げた瞬間、場の空気は重くなった。

「宮坂さん、この件に関しては今まで妖に対して力不足であった我々の責任です。彼を蔑むような言い方はやめて頂きたい!」

彼とは長い付き合いの東がフォローしてくれた。宮坂という刑事以外の刑事はみな風雅と交流があり、悩んだ時に優しくしてもらった者、命の危機を救われた者がいる。しかし根拠のない友情論など効かない宮坂は退屈そうな顔で東を見つめた。


       ー病院 AM11時46分ー


 風雅が負傷したと聞いた雷牙は珍しく息を荒げながら病院の廊下を全速力で駆けて彼のいる病室に飛び込んだ。

「風雅っ!!」「そんな大きい声出さなくても聞こえてるよ兄貴。」

風雅はベッドの上に座っており、重傷だった火傷もほとんどが消えていた。遅れて子供2人も到着した。

「雷牙さん速いですよぉ…」「足が爪楊枝になっちゃう…」

合流できた八雲ファミリー。風雅の口から38号の能力と見た目が伝えられた。

「つまり速い乗り物が走ってると競い合ってくるってこと?」

「そうなると…電車とかは被害に遭ったんですかね?」

「電車自体は無事だったんだが…線路横の通路5キロメートルが更地になった。死傷者359人だ。止められなかった俺の責任だ…」

「じゃあその責任、今度こそ奴を倒してとれ。」

雷牙からの不器用なフォローを身に受け、暗い顔をするのはやめた。この間にも火傷は治っており、たった今完全に火傷が身体から消えた。

「…行ってくる!」「え、もうですか!?」

「事態は一刻を争うんだ…俺がやらなきゃ誰がやる!」ヒカルは「僕が」と言おうとしたが、今の自分の力と相手の力を比べた時にここは出るべきではないと判断したのだ。

上着をハンガーから取って風雅は早足で病室を出ていった。

「先生、大丈夫かな…」「大丈夫じゃないな。」

「え?」

「奴は昔、戦闘で身体に電気が走ったことがあった。もしそれが今回も起こったとすれば…」

琥珀は興味津々にヒカルに乗っかって雷牙に迫る。

「それってなんか意味があるの?」

「その電流は妖にとって“進化”を意味するんだ…」

「進化…?」

妖には“LEVELレベル”というものがある。


“LEVEL1”は術式と式神を生み出し、欲のままに力を振るう化け物となる。力の抑制を行うことで人間態に戻ることができる。風雅たちのような善良な妖にそれが該当する。


雷牙が危惧しているのはその先、“LEVEL2”だ。

LEVEL2は術式の精度や身体能力の向上が起こる。見た感じは変わらないが体の周りに青いスパークが発生するという。

一部の妖だけにしか辿り着けない領域なのだ。危惧するポイントは本人が強くなる事ではなく、式神だ。

「アイツの分身、『神狼』は危険な式神なんだ。」

「あのワンちゃんそんな悪そうには見えないけど…ちゃんと命令に従ってアタシのこと守ってくれたし。」

「元々風雅は銀髪じゃなかった。生まれた時は俺と同じ黒髪だった。が、あいつが『神狼』を使って戦い始めた辺りから何かしらの力を吸い取られ始めて、段々と弱まっていった…。」

「じゃあ先生ってあれ程の力がありながら弱体化されているってことですか…?」「簡単に言えばそうだ。」


 風雅は再びマシン・STORMストームのエンジンを点火させ、“未確認第38号”をおびき寄せるため、適当にバイクを走らせた。

「早くこいよチーター野郎…次こそは必ず倒す!」


         「速い物発見!」


案の定38号は引っ掛かった。

「お前バカだなぁ…」「なぁ早くレースだレース!」

やはり人の話は聞かないし、風雅が乗って「スタート!」と言う前にすでに走り出していた。

「まじアイツ何なの!スポーツマンシップ無さすぎるだろ!あ゙っ、痛てて…」

火傷は治ってもまだ体の傷は完治していないようだ。


風雅は『神狼』を呼び出して“変身”しようとするが、呼び出そうとした瞬間、身体に電流が走った。

「い゙っだい゙!何で出てくれないんだよっ!」

そうこうしている内に第38号の姿を捉えた。

しかしその先にはパトカーが固まってバリケードを作っていた。 「!?」

「『神狼』さんだけに背負わせるなぁぁぁぁ俺たちも戦うぞぉぉぉぉ」

警察たちは己の体を張って第38号を止めようとした。

「やめろ、やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

風雅の叫びも虚しく、1秒とかからずバリケードは突破され、その余波で警察たちは吹き飛ばされ多くの死者を出した。風雅はその跡をSTORMで通過した時、今まで自分が助けた刑事たちの遺体が見られた。


    「おい待てよ…待てぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 風雅の慟哭が響いた時、体は青いスパークで包まれた。目元には“変身”の際に出る風の痣、髪はエメラルドの如き緑色に変わった。その慟哭はバイクにも伝わったのか、バイクにも青いスパークが発生し、さらにスピードが上がった。


「ふんふんふーんアイツ追いつくかなーー、ん?」


        刹那の油断、命取り。

第38号『猟豹チーター』はふと振り返ると、赤いマフラーをたなびかせ、青い電撃を纏った人間の自由と笑顔を守る男の姿があった。

「お前早いなーーーー!」「うぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


         「“疾風弾”!!!!」


風雅はまさしく風となり第38号を完全にバイクで貫いた。第38号は原型を留めることなく灰となって高速道路に散っていった。

「あの世で足をもがれてろ…」

こんな外道には敬意を払いたくないのだが、命を奪ってしまったこと、地獄で報いを受けてほしいと願いを込めて黙祷をした。

落ち着きを取り戻した風雅は髪の色が銀髪一色に戻り、痣も消えた。

そしてそれを道路の先で見つめる怪しげな『神狼』の姿があった。

                EPISODE11「爆走」完


          次回 「任務」

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