りんごあれこれ
りんごはエピソード一本でいこうと思う。
諸事情あって子があまりりんごを好まないから、買う頻度は高くないのだ。食べたいときだけ食べる分だけ購入するスタイル。余分に買うのは作りたいものがあるときだけ。
一方、義家は箱買いする家である。
それがなぜか今年は。
シナノスイートがなぜか安かったから、なにかにしようと買ってきた。ちょうどプラントベースの冷凍パイシートが届いた頃でもある。
紅玉並かそれ以上に煮くずれしにくい品種ならば、見せるタイプのものに使いたい。
プラントベースの冷凍パイシートはカット済みで一辺一〇センチである。包むタイプの長四角か、正方形なアップルパイにちょうどよい。
となると、パイ皿で焼くものと比べたらあまり具には量が包めないから、シナノスイートよりも先に家にあったサンつがるの出番である。ちょっと食べ時を誤って、若干水分が減りつつあったから……。
花粉親が紅玉にしては甘味の強い品種なので、さとうは控えめにして煮る。アップルパイスパイスを真似してシナモン、ナツメグ、オールスパイス、ジンジャーを適当に合わせたものを少々加えておく。レモン汁にまける程度の量である。シナモンはすきだが、これはほんのり香るくらいがいい。
照りだし用の卵黄が焦げる焦げる。色のわりに味にはたいして影響がなかったのが意外なくらいだ。
まあ初めてグリルでパイを焼いたにしては、どうにかなったよね、と自分を慰めるのであった。
写真は半分に切ったものの上段がアップルパイ、下段がスイートポテトパイである。なぜ同時進行で作ったかな、わたし?
このままアップルパイを追究するかと思われるかもしれないが、実はわたしはアップルパイよりもタルトタタンのほうがすきだったりする。夫の食べるアップルパイを求めて漂流というか徘徊というかをしてみたりはするが、乳と異性化糖という二大天敵が間違いなくいる市販品はもう食べられないことを思えば、食べたければ自作するしかない。
しかし、アップルパイを続けて作るのは嫌だ(我が儘)。
と思ったところで、もしかしてパイ生地がもともとそんなにすきではなかったのでは? と唐突に気づく。おかしいな、本気で食べられなくなるまでバターLOVEで生きてきたのに。自分の体をだましだまし食べられないかと模索する程度に。
食べれば一〇〇パーセント不調をきたす食べ物で、そういうことをしてはいけません。いやほんとまじで。
でもりんごのお菓子は食べたい。グリルで焼くのは初めてだが、やってみるかタルトタタン。と思ったらシナノスイートの数が足りなかったので、買い物ついでに買い足してくる。
出だしでつまづいてどうする。
りんご四個をフライパンに熱したバターとさとうで炒めていく。ぐつぐついうけど炒めているんだよ! と言い張る。水分がなくなり、透き通るまでひたすら炒めるのだ。
型にみっしり敷き詰めて、本来ならオーブンで、今回はグリルでさらに焼く。りんごがふくれるのを押し込んだりして、なかなか忙しい。
いったん取り出して、パイ生地を乗せる。フォークなどで穴をあけ、戻し入れたらさらに焼く。
あら熱をとり冷蔵庫で冷やす。きちんと冷やしてからでないと、型から出すなり形が崩れてしまうからだ。
もっときれいなカラメルりんごになるはずが、全然色ついてない。
焼きが甘いことこの上なく、ペクチンもうまく抽出できなかった模様。
小さいマフィン型を使ってオーブンで焼いていたときは、もっときれいに色づいていた。しくしく。
上面がしわしわ模様なのは、使用したグリルパンが鉄製のため、錆防止にオーブンペーパーを敷いたからである。グリルに紙を入れるという暴挙に出た。後悔はしていない。燃えていないからヨシ。
しかし味は絶品である。フォークを入れると崩れてしまうものの、みっちりつまったりんごがたまらない。
やっぱりアップルパイよりもタルトタタンのほうがすきだ。
あとは、届いたけれど使い道がみつけられないでいる紅玉をどうするか。
皮の色をいかして、ジェリーを作ることもある。ジェリーとはジャムのことなのだが、このジャムに果肉は入らない。透明なジャムである。りんごの場合はまるごとひたすら水で煮て、絞らずに煮汁を濾しとり、さとうを加えてジャムになるよう煮詰めたもの。皮と種に含まれるペクチンがいい仕事をしてくれる。
写真手前はこのようにして作ったジェリー、奧は煮汁を濾したあとの実にさとうを加えて煮詰めたものである。ジェリーはさとうを加えた段階で美しい色に変わるのだが、実のほうは残念なことにくすんだ色のままである。プレーンヨーグルトに添えて食べたりする。
タルトタタンの消費に4日かかった。
「1日1個のりんごは医者知らず」じゃねえんだわ。さとう多すぎだろっっっ!




