マロンゴールド
有名な安納芋に隠れがちな品種、マロンゴールド。
品種名は栗黄金といい、鹿児島県南部のJAいぶすき管内だけで栽培されているものがマロンゴールドを名乗れる、ブランド芋である。
が、今年はあまり状態のよくないものをつかんでしまったようで、切ってみたらすべての個体に鬆が入っていた。いくら日を少しおいてしまって芽が出てきたからといって、中がこの状態になるのはあり得ない。しかし切ってみないことにはわからないだけに、生産者さんを責めるのは酷な話でもある。
買い直しだ。
買ったお店では既に品が終わっていたので、別の店で買うことにする。漂流はしていない。
しかしこちらもあまり状態はよくなかった。袋詰め品の限界かもしれない。
予定より正味量がとれないが、それはもう仕方がないと割りきって、さつまいもマッシュを作ることにする。
このマロンゴールド、安納芋と見た目も味もとてもよく似ている。安納芋よりもマロンゴールドのほうが気持ちあっさりしているのだが、どちらもねっとりしっとり系で甘味の強い品種のため、普通に焼き芋などで食べてじゅうぶんスイーツとして成立する芋だと思っている。
のだが。
マッシュしたマロンゴールドに、味見をしたらだいぶ甘かったので八パーセントまで減らしたさとうと、一〇パーセントのバターを加えてよく混ぜる。もう少し水分を飛ばすために鍋に入れて火にかけ、練りあげる。
三〇グラムずつの塊に分け、残った分は適当にまとめて包丁でカットする。
プラントベースの冷凍パイシートを買っておいたので、これを解凍する。融点の低い豆乳クリームバターが織り込まれているもののため、時間との勝負である。手際、悪いんだけどな。
一〇センチ四方のパイシートの半分にフォークで穴をあけ、もう半分に包丁で切り込みを入れる。
フォークで穴をあけたほうにさつまいもフィリングを置き、切り込みを入れた側を上にかぶせ、フォークでおさえながら端を閉じ、アルミホイルの上に乗せる。
閉じ作業をしている間に、グリルを余熱しておく。
閉じたパイシートに溶いた卵黄を塗り、グリルへ。最弱火にて数分焼いたところで様子を見、アルミホイルを上にかぶせ、さらに焼く。
一〇分もかからずにこの有り様である。
庫内が高温になることからちょっとだけ期待していたのだが、パイを焼くのはやはりオーブンのほうが適しているようだ。グリルで焼けないことはないものの、正直きつい。主に火加減の具合が。
しかしオーブンやオーブントースターのない我が家では、食べたかったらどうにかするしかないのだ。
割とグリルに付きっきりで様子を見ていたが、ほんの秒で大違いとなる。これだけ豪快に黒くなっても、中は焼きが甘い。さすがグリルの庫内温度は三〇〇度を超えるというだけのことはある。
全体的に焦げの強い左半分はアップルパイである。なにをトチ狂ったか、同時進行でアップルパイも作っていたのであった。
最後に固めたさつまいもフィリングに卵黄を塗り、黒ごまをのせたものを焼けばスイートポテトの完成である。
つくづく思う、いっぺんにやることではない。
パイがグリルでうまく焼けるようになる前に、パイシートが終わることだろう。




