番外編
秋の味覚、というものではないのだが。
謎の頂き物をしたことがあるので、紹介する。
川魚の漁のしかたに、ヤナ漁というものがある。川の流れをせき止めるために木杭や竹で仕掛けを組み、そこに入った鮎などの魚を捕るものである。
もともとは秋に産卵のため川を下る鮎などの川魚を捕るために用いられた漁法であるが、現在は観光ヤナが多く、夏の風物詩となっている。
渓流釣りを趣味としている親戚のかたがいて、解禁されるとお休みはほぼ拠点としている地域に入り浸る生活となる。廃業された川べりの民宿をひと夏借り上げてしまうほどの入れ込みよう。よほど好きでないとできないと思っている。どんくさいわたしはたまの参戦で十分であるから、ここへは行ったことがない。
毎年とてもたくさんのあまごをいただいてきた。おかげであまごのありがたみが薄い。贅沢が過ぎると思う。
しかも内臓は取り除かれ綺麗に洗ったうえで、一回分ずつ小分けに袋に入れられて冷凍されている。この労力は尊敬のひと言に尽きる。ほら、毎年初夏に豆鯵で泣いているから。このあまごの量はその比ではない。
親戚さんの処理能力がおそろしい。
毎年ブーブー文句を言いながらやっていると言うけれど、それでもやり遂げてしまうのだから。
そりゃそうだよね、パートナー釣る人、私捌く人。なのだから。小刀握った形で手が固まるって、豆鯵をキッチンばさみで処理ようになる前は小出刃でやっていたから、とてもよくわかる。
文句のひとつやふたつやみっつやよっつも、言いたくなろうというもの。
一般的に出回っているあまごよりもだいぶ小さいのもあって、調理法は唐揚げが最適である。我が家で魚の唐揚げがやたら多い原点は、おそらくここにある。
そんなあまごの。
なんと、親である。
冒頭で紹介した通り、秋は川魚の産卵シーズンである。
この親戚さんが懇意にされているあまごの養殖業者さんから、繁殖のために卵と精子を採ったあとのあまごをいただいたとのことで、お福分けとしてやってきた。普段いただくあまごと違ってこれは生だったため、さっさと食べないといけない。
写真は洗ったところ。内臓は処理済みであるが置くところが思い付かず、大きさがわかるもの……と考えて、牛乳パックを敷いてみた。興味がなかったからどっちがどっちかわからないけれど、雄と雌の一対なのだそうだ。
グリルにはとても入らなかったからオーブンで塩焼きにした。
かなり、大味であった。塩焼きは市販されているサイズのものがいちばんおいしくいただけるのだろうと思った。
あとは、繁殖器官へ栄養が集中するからおいしさは軽減するのかもしれない。
もう経験することはないであろう、珍しい頂き物の話である。
最後までお付き合いくださいました皆さま、ありがとうございました。




