紅あずま
紅はるかが市場に出回るようになってから、居住地のスーパーなどではめっきり姿を見なくなった、紅あずま。
交配品種が違うから親戚でもなんでもないのだが。
この紅あずま、現在主力で出回っているさつまいもよりも糖度が低い。甘くないという意味ではなく、この品種は甘すぎないいもなのだ。そして、ホクホク系のさつまいもでもある。そのため、お菓子だけでなく料理にも使いやすい品種といえる。
焼き芋らしい焼き芋になるのはこの紅あずまともいわれているが、あま~いさつまいもの焼き芋が好まれる近頃は焼き芋のかたちではほぼ売られていないのが残念でもある。
居住地である愛知県ではあまり見なくなってしまったが千葉県では奨励品種に指定されているそうなので、関東方面では普通に販売されているのかもしれない。うらやましい限りである。
しかし他の品種に圧迫されて、紅あずまの作付け面積は大幅に減ってしまっているという。
わたしが愛してやまない舟和の芋ようかんは、この紅あずまで作られているのだが、この作付け面積の減少による収穫量の減少、気候の影響や病気などもあり原料確保が難しくなったということで、年々価格が上がり続けている。
買うけど。値上がりにめそめそしながら買って食べるけど。安心して食べられる貴重なお菓子だし。
紅あずま、他のさつまいもと比べて繊維が少なくてなめらかだから、裏ごしを必死にやらなくてもいいのだ。そういう点でもこのいもはお菓子向きなんではないかと思っている。
さつまいもの天ぷらは紅あずまがおいしいと思っているけどね。料理じゃん。
そんなこんなで紅あずまをどう食べるのか、エッセイ更新に間に合うのか、心配事を自ら増やしながら考え事にまみれて過ごすこと数日。
原点回帰かな。
謎のひと言をつぶやいて、グリルで焼き芋を焼く穂積の姿があった。
生協の品はほどほどのサイズのものと小さなものとの混みサイズ固定重量(六百グラム程度)売りで、モノが選べないからだ。基本が畑買いだから起きる事態でもある。これはもう仕方がない。
しかもやっぱり今回、あまりよくないものをつかまされている。ここまでくると、今年のさつまいもは全体的にたいへんだったのではないかと考えている。暑かったもんなあ。さすがにさつまいもでもバテるよなあ。
小さなもののほうの状態のあまりよろしくないところを切り落とし、流水でよく洗う。ブラシでこすり洗いをしながら、ひげ根を容赦なくぶちぶち抜いていく。たいてい千切れるのだけれど。
洗ったいもはびしゃびしゃのまま、アルミホイルでくるむ。たっぷり水つきなのは保湿のため。グリル庫内は高温になるから、ちゃんとくるんでおかないと干からびてしまう。アルミなので熱まわりをよくする効果も得られる。
焼き時間はてきとう。ガスコンロ次第なところがあって、設定時間の上限がまちまちだからだ。おそらくビルトインコンロの上位機種になると、小さなガスオーブン的な使い方ができるはず。ガス会社のサイトのレシピを参照すると温度設定だのなんだのが出てくるから。なにその機能うらやましい。
我が家はガステーブルのため、そこそこのグレードのものを選んでいたようだが(自覚なし)そんな機能は持ち合わせていない。だからよく過熱で怒られる。止まるなよ(危険なので消火します)。
そんなわけで、何度か過熱のエラーメッセージとエラー音とともに停止するグリルにキレながら(沸点低すぎ)、どうにか焼き上げた焼き芋がこちら。
うん。薄黄色いさつまいもの姿は久しぶりに見た気がする。あれだけ水を切らずに包んだのに、端が少々乾燥し始めていた。高温だなあ。
ホクホク系さつまいもの本領を発揮、素朴な焼き芋、昔ながらの焼き芋である。なんだか色味からして懐かしい気持ちになる。
これだよ、これ。前述のとおり繊維が少ないから、皮ごとかぶりついても食べやすい。
「こういう素朴な焼き芋も、いいねえ」
「売ってないけどね」
夢見る夫には悪いが、現実は知ってもらわないと。「食べたいなー」に「はいどーぞ」ができるほどお手軽な品ではない。
「えっ?」
「その辺じゃ買えないよ」
生協でもいつもあるわけではないのだ。
そう考えると、ホクホク系のさつまいもって実はとっても贅沢品になったのかもしれない。
こうして焼き芋の四分の三は夫のお腹に仕舞われたのであった。
焼き芋すきだしね、この人。
当エッセイ、この紅あずまで完結するはずが、やっぱり(?)アホの子の発動が避けられず。
「 い も が ふ え た よ ( ・∇・) 」
となったので、もう少しだけお付き合いください。
いやだって、見たら買うよねシルクスイート。居住地では滅多に見ないし。




