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第5話

「着きましたわ。ここは当家が所有するゲストハウスの一つですの」


「はえ~、おっきい……」


 馬車に揺られて四十分くらいかなぁ。

 喧騒の街を抜けて、静かな森のそばにある大きな屋敷へとやってきたぜ。


「さ、中に入りましょうか」


「はぁ……めんどくさいなあ」


「……せめて口に出すのはおやめなさい」


 玄関の扉を開けると、そこにはメイドの人たちがズラリと勢揃いしていた。


「お待ちしておりました、ルーゼンスお嬢様。そちらが今回のパーティーに参加して下さるご学友の方でしょうか?」


「学友、という表現にいささか引っかかりを覚えないでもありませんが、ロモラッドさんです。さ、ロモラッドさん? ご挨拶をなさいな」


 一番偉そうなメイドさんと話していたお嬢様は、この私に挨拶をしろとおっしゃってきた。

 挨拶、ね。まあ挨拶程度堅苦しいもんでも無いでしょ。


「ただいまご紹介に預かりましたロモラッド・ド・レモレッドでございます! しかし皆様方、世間では夏化粧が人に物に自然にと爽やかな彩りを与える今日この頃! 私なんぞは最近熱帯夜に悩まされてダラダラと汗を流しながら、それでも高いびきをかく事をやめられず。母親にも昔から、あんたという子は面倒くさがりと呼ばれ、窓一つ開けるよりも睡眠を優先するなど、流れる汗のようにダラダラとした性分でございまして」


「あ、貴女はさっきから一体何をおっしゃってるんですの?!」


「え? だって挨拶をするようにと……」


「貴女何か勘違いをなさってますわ!!」 


 何さもう、挨拶しろって言ったのそっちなのに……。


「こ、これはまた……。随分と個性的なご学友様でいらっしゃいますね、お嬢様」


「~~ッもう!! ロモラッドさん! 貴女という方はッ!!!」


 何で怒られてだろ私? だってメイドの人達口元抑えて笑ってるんだから、掴みの挨拶はバッチリでしょうに。


「お嬢様、そう声を荒げずに。まずはお部屋に案内致しませんと。……それではロモラッド様、こちらへついて来て下さい」


「あ、はーい」


「……もうっ! 何なのかしらこの人は! わたくしがこんなにも苦労しているというのに!」


 おぉ怖い。そんなに怒鳴ると血圧上がりますぜ?

 なんてのは置いといて、メイドさんにトコトコとついて行きましょ行きましょ。



 そうして通された部屋は……こりゃまた立派な衣裳部屋。

 ここでドレスに着替えろと?


「ロモラッド様は、何かご希望のデザインなどはございますでしょうか?」


「はぁそうですねぇ。白と黒を基調として、スカートがふんわりと長くて、それでいて動きやすさを重視したようなそんな……」


「貴女それはメイド服ではありませんか!? ロモラッドさん、貴女はこれからパーティーに出席するんですのよ? 馬車の中で散々説明したでしょう!!」


 ダメかぁ。せっかく楽に過ごせそうだったんだけどなぁ。


 仕方ないので、メイド長と思わしき人のオススメに任せることにした。それにしてもこのメイドさん、お嬢様に負けず劣らずの美人さんじゃないか。きっと男を切らした事なんて無いんだろうな。男を手玉に取る手腕について後で話を聞いてみたい。


 そんなこんなでドレスチェンジ。さぁてその出来栄えとは?

 鏡の前に移動した私。そこに映っていたのは、爽やかな夏にピッタリの空色コーデ! 上質な気品漂うフレッシュさにマッチする花も恥じらう深窓の乙女とはまさしく私の事である。ヒュー、ビューティフル!


「結構なお点前で。流石、幾多のメイド達を従える貴女の敏腕には只々感服するばかりです」


「まぁ、ありがとうございますロモラッド様。お褒め頂き光栄で御座いますわ」


「流石という程の付き合いは全く無いでしょう。貴女も付き合わなくていいんですのよ?」


 そんな細かいところはいいじゃないか。

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