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水泳の授業 前編

なかなか更新が捗りませんが、頑張ります。

この世界でも魔法使いはとんがり帽子を被りますが、それはオシャレとか服飾の歴史におけるものではなく、水の抵抗を軽減するためです。

 二学年の授業からは、いくつかの科目を組み合わせた合同授業が始まる。本日の授業は魔法使いの熟練者クラスとして、そして体育の優秀者クラスとしての水泳の授業が行われる。ちなみにニンジュツと体育の組み合わせでの水泳授業も存在する。


 水泳の授業ではあるが、体育を指導する教員は随伴していない。救急救命用のアシスタントが数人待機しているが、彼らはあくまでサポートであり教師ではない。

 俺絵たちの正面に堂々と直立し、魔法使いらしい鈍器を持っているのは魔法教育担当のエイヴリル師だった。


 「みなさんこんにちは。中にはだいぶ久々に会う子もいますね。学年が上がるにつれてクラス分けや授業数の増加で滅多に顔を合わせない子が増えるのは寂しいものです。」

 エイヴリル師は正直な、素直な言葉を述べていると直感でわかる。魔法の狂信者でさえなければ尊敬できる人物の一人だ。


 「さて、今日ここに集まってもらったのは、すでに水泳の技能を身につけていてかつ、魔法使いの上級クラスで指向性魔法を使用することができるようになった児童です。あなたたちには魔法を利用した水泳技術を覚えてもらいます。三回目以降の授業では水中で使えるさまざまな、便利な魔法を覚えてもらいますので、予習復習を忘れず行ってください。この合同授業の開催期間には水用ドローンの利用以外でも温水プールを利用する許可が出ますので、休み時間や休日にも練習してくださいね。それでは本題に入りましょう。」


 そう言ってエイヴリル師は整列していた俺たちの間を割ってプールに飛び込んだ。と思ったが、なんと水上に直立していた。


 「皆さんもすでに察していると思いますが、これは水の浮力を強化した魔法による現象です。十分な魔力の出力があれば、水上では地上以上に高く飛び上がったり、移動することさえできる魔法使いもいます。今は私の体重が沈まない程度の強化ですが、軽く体を沈めてからなら、射出できるほどに強化することでミサイルのように飛び出すことができます。まずはこのように水上で直立することを目指しましょう。それではそれぞれプールの淵に立って、まずは片足分から始めましょう。魔力切れには気をつけてくださいね。」


 前世の息子が熱中したいた漫画では水上を走ったり飛んだりするのは忍者の少年たちだったはずだが、この世界では魔法使いがその役割を担うらしい。まぁ、本来魔法使いがしそうな、鳥に変身して飛行するのをニンジュツ使いがやっているのだからおあいこだろうか。


 水上での直立や歩行は創造していたよりもずっと難易度の低い魔法であった。とりあえず自分の周囲の水の浮力を強化しておけばなんとかなるのだ。今になってはその辺の地面に立っているよりもずっと心地よい地面のように感じられる。やりすぎると足がふやけてしまうという欠点があるが。

 難易度が跳ね上がったのは、水中での移動の授業であった。二回目の合同授業では、水中における高速移動の魔法の習得が課題であったが、多くの生徒が難儀した。

 水中での高速移動にも魔法による浮力の強化を利用する。通常水の浮力は地球の外周方向(要は天)に向かって発生するが、これを強化しつつ自分の行きたい方向に向かって捻じ曲げる必要があるのだ。自分達の体は常に浮力によって天の方向へ移動しているので、強化と指向性の設定が間に合わないと相対的なズレが生じて思いがけない移動をおこなってしまう。俺も他の生徒がそうしたように頭を頂点として水中を移動しようとし他のだが、一瞬遅れるだけで首を先頭に水中を高速移動していまい、溺れかけた。


 この授業中のサイバネティクスの利用はグライアイに限定されているため、両手に移植した空気砲で水泳の授業における新記録を樹立したヨシダ・アキコさんは現在絶不調のようであった。圧縮空気での水中機動を一般(普通という意味ではない)児童と一緒に並べて記録取るのは酷いと思う。冷静に考えるとあれは五十メートル走にバイク混ぜるのとおんなじだからな。


 浮力の方向指定強化に慣れてくると、プールの状況は一変した。魔法の発動には特に動作が必要ないため、児童が直立不動の姿のまま水中を飛び回る光景は非常に見応えのある景色だった。方向指定を操作することで水中でも高速かつ柔軟な移動を行うことができるようになった。



 「魔法使いは水中戦において必要不可欠であり、最強。それがMCU合衆国の軍隊における共通認識です。皆さんは本日その理由を目に焼き付けることができるでしょう。ただし、今日の授業で教える魔法は悪用を禁じます。教員が周囲にいない自習時間に練習することも許しません。これらの魔法が危険であるということを肝に銘じて言おうてくださいね。」

 エイヴリル師は今までにない、真剣な眼差しで俺たちを突き刺した。背筋が凍るような視線であった。


 本日は合同授業三日目。水中におけるさまざまな魔法を学習する授業である。エイヴリル師は初日と同様に水上に立つと、俺たちに向かって説明を始めた。

 

この世界における水泳はメジャーかつ人気のスポーツですが、現代と異なり三つの種目で競います。

一つは魔法使いによる水泳種目。広く、深いプールの水中に障害物コースを用意し、事前に測定された標準タイムと比べてどれだけ早くゴールすることができるかの障害物競走となっており、テレビ放映もされる人気の種目である。近年はタイム短縮のためにさまざまなとんがり帽子が開発されており、各メーカーで熾烈な技術競争が起こっている。

もう一つはニンジュツ使いによる水泳競技である。これは現代におけるシンクロナイズドスイミングのようなものである、人魚のような水泳に向いているパーツに身体を変化させることによって従来までの競技よりも高度かつ芸術的な水泳芸術を披露することができるようになった。体色の変化なども合わさり、プールというキャンバスにさまざまな色が散りばめられ、変化・移動する様は見ものです。

最後のサイバネティクスによる水泳競技は、もはや水泳競技としての体裁は失われ、現代で言う競艇のような扱いになりました。そもそもが競艇が起源ですが。船の性能を統一して技術を競うことよりも、「俺が船になる!」と考える狂人たちの意見の方が大きくなったことで、全身にサイバネティクスを移植した変態どもによるレースが日夜開催されるようになり、賭博の対象になった。禁止事項は観客への攻撃と水中への高電圧の放電のみであるため、だいたい毎日死傷者が出ているようです。

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