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道徳(こうふく)の授業

あけましておめでとうございます。

本年も拙作の投稿を続けていきたいと思います。

応援お願いいたします。

仕事も忙しくなる季節ですので、ノンビリと更新いたします。

 道徳:社会生活上で一人ひとりが守るべき基準。良心に従った行動、その指針。


 本日から俺はこの学園の二年生になった。今年から新しく始まる教科は、「道徳」と「刀剣術」のに科目である。今日はそのうち道徳の授業の初日であるが、目の前には道徳の授業を行うに相応しいとは言えない人物が立っていた。


 「初めまして諸君。私はマクサコフ機械公社人事部、人材開発課教育係の無量小路行史むりょうこうじ たかしという。諸君の人生を左右することもできる職責を持っている。十分に敬い給え。」

 ファーストインプレッション最悪の社会人である。そして彼の言っていることは嘘だ。マクサコフ内で職責と地位が高いのは営業部や研究開発部が最上位であり、人事や総務、法務部等の裏方は二の次であることは我々児童の世界においても有名な話である。そのため、この無量小路行史という人物はほぼ間違いなくエリートコースを外れた人物といえよう。しかし、本社とのつながりがある以上、敬意を持たなくてはならないのは仕方ないのだが。


 「私が君たちに指導するのは『道徳』。しかし、ここマクサコフにおける道徳という言葉は、世間一般における良い行いのことを指すものでは…ない。マクサコフ内における良い行いというのは利益を生むことである!道徳というのはより多くの利益を産むことなのだ!では君たちはマクサコフの利益とは何か……わかるかね?近くのちびっ子同士で話し合うといい。」


 クラス替えがあって間もない俺たちは目配せ(赤外線通信)をしながらそれぞれに塊を作って椅子を移動させ、グループを作った。上級生になるとグループになってもチャットや掲示板を形成して話し合い活動をすると聞くが、今はできるだけ相手の顔を見ながらコミュニケーションを取ることが推奨されている。

 

 「マクサコフ機械公社も営利企業なんだから利益っていうのは当然収益の拡大のことを指すんだろうけど、あの聞き方じゃあそうとはいかないんだろうね。」

 クラス替えによって一緒になったアンディが発言する。おそらくその通りだろう。機会公社は営利企業だが、企業理念として


 『人間が不幸なのは、自分が幸福であることを知らないからだ。科学を通して全人類に幸福を知らせることこそ我らが使命。』


 という一文を掲げている。この部分を補う必要があるだろう。


 「マクサコフの社訓的では、使命として全人類に幸福を知らせることを挙げている。科学技術におけるイノベーションとその普及が方法で、結果としての人類の幸福が利益だと考えると崇高さもあって道徳的なんじゃないか?」

 俺の発言に魔法使いの家系のアンディはなんとも言えない顔になる。

 

 「うーんそれならいっそお金目的のために動いてくれている方が安心できるまであると思うんだけどね…。まあサイバネティクス技術が人類の助けになるのは間違いないけど、強制力があっていいものではないと思うんだよね。なんせ金属資源には限りがある。人類全員に配るには、パイが足りないというものなんじゃないかな?」


 「足りない分は補う方法を考えればいいのさ。あらゆる仕事を機械化して人間は遊んで暮らすだけっていうのもいいんじゃないか?人生と仕事の分離というのも戦前から掲げられている人類の理想と言えるんじゃないか?」


 児童がそれぞれの面子で話し合いを終え、そろそろ雑談に近くなってきたところで無量小路はモニターを操作して解答を掲示した。


 「我々マクサコフにおける利益とは、全人類の幸福である。それは諸君の大半が気づいていることだろう。人は金銭を食べて生きるものではないのだ。金なんぞ集めてもいつかは紙切れにしかならないものだ。無価値と言える。マクサコフにおける幸福とはすなわちあらゆる障害からの人類の解放のことを指す。」

 画面が変わる。


 「一つは労働からの解放。人は自由に生きることができるようになる。飢えず、凍えず、本当の意味で自由になれる。行きたいところへ赴き、作りたいものを創造することができる。完全に自由な人生を歩むことができるようになる。子育ても労働だ。君たちの教育課程は将来的には機械が教師として子供を管理するための実験にもなっている。」


 「一つは肉体からの解放。人は肉体に縛られることがなくなる。肢体の不自由や盲目などの障害を乗り越え、バリアのない日常を送ることができるようになる。ストレスのない生活からは自由な発想と幸福が生まれるだろう。それが我々を更なる幸福のステージへ運んでくれるだろう。」


 「一つは孤独からの解放。人はもう一人にならなくて良くなる。サイバネティクス技術を通して我々は常に正直に、精神や思考を共有できるようになるべきだ。自分自身を偽ることも嘘をつく必要もない生活は人を素直にしてくれる。正直者だけの世界はきっと幸福なものになるだろう。」


 無量小路の目には機械の光が輝いていた。やばい。こいつは狂信者だ。マクサコフの唱える幸福という宣伝を盲信して酔いしれている。だがしかし、こいつは利用できるかもしれない。マクサコフが考える利益、幸福。これを実現できなくとも、可能性を示すことができるのなら…。多くの人類を希望という泥舟の燃料にして俺は前に進めるかもしれない。これから学ぶ道徳の授業が俄然楽しみになってきた。

マクサコフ内の組織図とか作って今度投稿したいなと思いつつ、あまり組織運営とか詳しくないアンド自分の会社ですら把握し切れていないのでじっくり考えて構想を練りたいですね。

マクサコフの考える幸福はマクサコフの徹底管理下における強制的な平和と幸福の世界です。ある意味ディストピア。

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