補修授業:魔法学上級者コース
昨日の分の更新です。
一学年の修了式を終えて現在が学期間の長期休暇を学校の寮で生活している。両親の元へ短期間外出することもできたが、週に数度はテレビ電話(死語)しているのかまわないと両親に許しをもらって寮で魔法とニンジュツの修行に明け暮れている。そんなある日、ユン先生からメッセージを受け取った。
[神前孝殿。この度あなたはマクサコフ学園幼稚部二年生への進級が認められました。おめでとうございます。貴殿においては魔法、ニンジュツ、ドローン教練等の授業において大変優秀な成績を残されましたので、受講コースの変更が適応されます。つきましてはコース変更の伴う未指導事項の補修のため、次の期間において学校にて授業を行います。ご参加いただくようよろしくお願い申し上げます。]
…無事に進級できたのに、なぜ補修を受けなければならないのかという屈辱を感じながらも、上級コースへの移動に成功したことに安堵する。魔法やニンジュツの技術にはネット上には公開されていないものや、先人の教えが必要なものが多い。今の初心者コースのままでは将来の進路や出世コースにも関わるという噂もあるから、なかなかの時間をかけて練習してきた。テストこそないものの、日々の授業の中でもこちらの習熟具合を測る機会はあったものだから、油断できなかった。
メッセージで指定された教室には、実戦魔法の授業を担当するエイヴリル師がいた。他にも二人の児童がいた。
「集まりましたね。すでにメッセージで要件は伝わっているかと思いますけど、今回皆さんの実戦魔法の授業のコースを上級に変更するために、今年の授業の中で初心者コースでは指導しなかった部分の補修を行います。今年は魔法以外のコース変更を受ける児童がいるので、時間は三日しかありませんが、皆さん優秀ですから?すぐに理解・習得することができるはずです。」
一年間の未履修事項の復習が三日間というのはあまりにも短いと思うが…。俺が原因であることもわかってしまったので、何も言わないことにしよう。グライアイで録画をしながら授業を受ければ復習もできるのだから、長期休業中に復習することにしよう。
「さて、皆さんは一年間の間、魔法による物質の強化を行なってきました。本日の授業では単純な強化ではなく、指向性を持たせた強化、『指向性魔法』を学習してもらいます。初心者コースのままなら小学校入学後に学習する内容ですので、皆さんにとっては結構な早足の学習になります。優秀な魔法使いが増えることは嬉しいことですから、皆さん必死についてきてくださいね?」
魔法の歴史学などではなく、魔法実践の授業の補修だったのか。てっきりお勉強の時間になると思っていたが、ありがたい。
「世の中に出回っている魔法の刻印や皆さんが前に使った消しゴムの刻印も同様に、魔法というのには作用する対象や方向を指定することで、より強力かつ安全にしようすることができるようになります。皆さんが消しゴムを使ったときに、手の汚れなどは消えなかったでしょう?それが『対象指定魔法』というもので、今後学習する内容です。そして消しゴムの先端でなぞった筆跡のみが消えたはずです。これが今日学習する指向性魔法というものの効果です。これを使わなかったら、消しゴムと紙が接触した時点で全ての筆跡が消えていたはずです。実践して見せましょう。」
そういうとエイヴリル師は以前使った紙と鉛筆と消しゴムを取り出した。エイヴリル師が慣れたように紙へと線を描いていく。俺たち三人の顔をだいぶ抽象的に書いた絵のようだ。下手とは言ってない。最後に消しゴムを取り出した。
「この消しゴムは以前皆さんが使用した消しゴムとは異なり、指向性を定める魔法の刻印が含まれていません。そのため、使用するとこういう結果になります。」
先程説明があったように、魔法刻印が刻まれている消しゴムを紙に触れさせた途端に全ての線が消えてしまった。
「この指向性を定める魔法というのは、魔法が作用する方向性を定めることでより効率良く効果的な魔法を発動できるだけでなく、安全性の保持にも役立ちます。消しゴムを書類の束に落としてしまったら、恐ろしいでしょう?」
俺はその恐ろしさが理解できたが、他2人の児童はそもそも紙の書類を見ること自体が珍しいので、書類の束という言葉がいまいち理解できていない様子だった。
「指向性を定める魔法とは言いますが物事のアレテーを強化するという基本的な部分は変わりません。魔法の発動に合わせて呪文を変えることで制限をかけるイメージで行えばいいのです。これができると、魔法というものに実用性が生まれてきますよ。」
エイヴリル師は手に持った鉛筆で机を軽く叩くと、俺の机の上にあった紙が上方に吹き舞い上がった。
「どんな物質も『衝撃を伝える』ことはできますね?この鉛筆が産んだ衝撃を強化し、この机、床、そしてあなたの机の振動の伝播する力を引き出して方向性を与える。それだけで遠くにいる相手にも簡単に攻撃することができます。あなたたちは壁の反対側に誰がいるのかわかるのですから、この技術の重要性は良くわかるのではないですか?」
初めてエイヴリル師が見せた性格の悪そうな笑顔は俺たちに興味を持たせるのに十分な効果を持っていた。魔力の足りる限り長距離の攻撃ができる技術。ネットに公開されていないのも当然だ。これは必死に勉強しなければならない。三日で間に合うだろうか…。
新しい魔法というよりは、魔法の新しい技術を学ぶというイメージです。
物質の強化をできる魔法は、その強化した力に指向性を与えたり、対象制限を置くことで安全かつ強力な魔法の発動を目指しました。他にもさまざまな発展的技術がありますが、全部学習するのはまだまだ先の話です。




