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かくとうのお兄さん

未来の世界にも子供向け番組って残っていますかねぇ…

 常識やモラルといったものは不易と流行がある。不易とは変わらないもの。今世でも食事を摂る時には帝国人は「いただきます」を忘れないし、人の波を掻き分ける時には手を刀の形にして突き進むものだ。 

 流行とは変化するものだ。食事の時に箸を使うのはあまりにも非効率でほとんどがフォークとスプーンに置き換わった。蕎麦ですらフォークが推奨される。ファッションなどは特に流行が激しく、現在は反射材のような素材を利用したギラギラファッションが流行中である。


 流行は教育の世界にも存在していた。前世では体育の選択科目にダンスが追加されたというのは記憶にあった。俺なんかは柔道や剣道をしたものだったが、娘や息子はダンスを学習し、文化祭などで発表していたものだった。


 今世において体育には新しい科目が増えていた。それが剣闘と拳闘である。今世には、ドローンやサイバネティクスが制御する銃器が存在している。前世ですら戦争の中心は爆撃や銃撃になっていた。今世においては尚更近接戦闘の意味などないのではないかと考えていたのだが、案外そうでもないようだった。一学年後期から始まる体育の授業では、初めに拳闘の授業を受けることとなったのだった。


 「良い子のみんな!こんにちは。後期から始まる拳闘の授業を担当する、マッテオだよ!みんなで楽しく拳闘の技術を学んでいきましょう!よろしくね!」

 マッテオ先生は笑顔が素敵な若い先生だった。


 「さて、授業を本格的に始める前に、事前の授業アンケートに多かった質問について回答するね。みんなはなぜ拳闘術を勉強する必要があるかわかっていないみたいでした。悪い子ですね〜。君たちエリート人材候補生は将来の優秀なエージェントになることが期待されているんだよ?戦争で使い潰されるような一兵卒のもやし達は銃を撃ち合うことで役に立つけど、君たちは様々な戦場で活躍しなければならないんです!」

 マッテオ先生はそう言い放つと全員のグライアイの仮想インターフェースに資料を送付したようだった。


 「資料を見てわかるように、マクサコフの職員のほとんどは身体能力増強のためのサイバネティクスを移植しています。これは公社への脅迫や身代金目的の誘拐を防ぐために全員が武装している必要があるためだけど、常日頃から会社員が銃器を持ち歩いていたら住民の皆さんが安心して生活することができないでしょう?なので、多少の銃火器の相手であれば、素手でも余裕で対処できるようになってもらえないと、君達に進学させることはできないんだよねぇ。」

 若者のノリで意外と重要な事実を教えられたことで、児童一同呆気に取られてしまったが、いうことは尤もであった。街中を歩いているマクサコフの関係者がみんな重火器を携帯していれば、都市の警備隊や警察組織などは黙っていないだろう。


 「それではみんなの今日のトレーニング内容を送信します。詳細は見て貰えばわかるけど、君たちの長期的な目標としては充分な身体能力を身につけて、相手の銃口から身を隠せるようになることが挙げられるよ。一緒に送ったファイルを解凍して、プログラムをインストールしてください。」

 前世に比べて便利になったもので、教材等は全てペーパーレスだ。ファイルを解凍すると、そこには弾道解析システムと呼ばれるデータ塊が存在しており、グライアイに最適化される形でインストールされた。


 「君たちにインストールしてもらったのは、銃火器等を自動で認識して、その射出方向をAIが識別・表示してくれるシステムです。要するに相手が銃を持っていれば、どこに攻撃が飛んでくるかがわかるようになったということです。今までもドローン戦の時とかにドローンの機能として搭載されているもので見たことがあると思います。」

 一同それぞれが頷いた。


 「これからは基礎的な体力向上のトレーニングや足捌きの練習、拳闘術の練習を通して、相手の攻撃を避けて素手で倒すということに慣れていってもらいたいと思います。まあ、最悪避けられなくても防ぎ切りながら殴ることもできるけど、リスクは最小限に減らすに越したことはないからね!」

 マッテオ先生の終始笑顔が絶えない表情筋に狂気の色が見え始めた頃には、すでに覚悟は決まっていた。何を言ってもやるしかない環境なのだから、諦めることが肝心だと最近学習してきたように思える。配布されたブーツとグローブを装着し、弾道解析システムを起動する。


 「それじゃあ、初めはレクレーションだと思って、気軽にランニングをしてみよう!上空からドローンが君たちを攻撃しようと照準を合わせてくるので、避けながらグラウンドを3周しようか!当たった人はその場でジャンプ五回ね!スタート!」

 

 必死の闘争が始まった。マディナなどは早々にサイバネティクスを起動して機動力を確保し、児童によっては同様に移動能力にアドバンテージのある装備を次々と起動しながら走り始める。俺も体内にあるナノマシンであるクローフィーを起動して筋肉や神経の補助、酸素の効率的な運搬が始まった。

 初めは優しくしてくれているのだろうか、銃口を一定の方向に向けたままただ真っ直ぐにドローンが飛行してくるのを避けるだけだった。しかし、二周目に入った頃には照準がぶれるようになり、直前になってから回避しようとすると運が悪ければ当たってしまうだろうといった状態になった。

 三周目は地獄であった。どの方向にいるドローンも最も近くでジャンプしていない児童に優先的に標準を合わせるようになり、こちらも能動的に撹乱するための動きをしなければならなくなった。マディナなどはドローンが連携して標準を合わせにきているので、上下左右に高速で飛び回っていた。俺はもはや逃れるのは困難と考えて、先日ユン先生から見て盗んだ対AI迷彩を使用した色彩変化のニンジュツで身を隠しながら移動した。認識されずらいとは言っても、距離が近づけば意外と狙われることや、周囲にいた児童の巻き添えで狙われることもあったので、結構な回数ジャンプすることとなった。


 これでもまだトレーニングの段階なのかと先が思いやられたが、サイバネティクスならではの格闘術などがこの後に控えているため、気を引き締めて望まなければならないかと考えながら、一人ゴールしてみんなを眺めていた。


マクサコフのエージェントは武器の携帯を推奨されていません。なぜなら武器を使って上司を殺した方が昇進が早いからです。こういった社内の『事故』防止のために銃器の傾向は上役や護衛などに限られており、一般社員や派遣スタッフなどは自分の身一つであらゆる脅威から身を守らなければならないのです。

護身術だけでなく、サイバネティクスを有効活用した格闘技なども流行しているため、企業間の格闘技大会等も行われており、非常に賑わっている界隈でもあります。


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