忘備録:現代病
この世界の病気について記録しました。
苦手な人は読み飛ばしてください。
前世とは異なり、今世では現代病の定義が変化した。前世においては生活習慣病を筆頭とする生活環境を土台とした病気のことを指していたが、今世においてはこれらのほとんどが医療技術の発達によって解決された。
特に癌やアトピー性皮膚炎などの治療の難しかった病気は根絶され、社会全体の寿命が伸びるようになった。一方で新種の物質によるアレルギーや放射能による人体汚染による病気等も新たな悪として現代医療の敵となっている。
では今世における現代病とは何か。それは、サイバネティクス、魔法、ニンジュツの発達によって発生する病のことを指す。
サイバネティクスを移植した人類にとって最初の障害と言えるのは、機械に対する拒絶反応、すなわちアレルギーだった。前世でも金属製の時計をつけられない人は木製だったりゴム性のバンドを着用していたのは珍しくなかった。そして、今世では体内にまで金属を入れることが非常に多く、金属アレルギーや電子制御部品に対するアレルギーを持つ人々にとっては、アレルギーの解決は急務であり、サイバネティクスを多用するマシーナの我々にとって重大な障害だと言える。
俺はこの世界で生きる武器としてこの拒絶反応をなくすことができているが、もしなんの対策もなくサイバネティクスを移植していたならば、現時点で出世コースを降りている可能性もあっただろう。
そして、アレルギーを克服したりそもそもアレルギーの出なかったものが次に罹りやすい病気は「情報中毒」と言われる病気である。
今世では多くの人々が企業製のサイバネティクス等の情報端末を移植しており、日々あらゆる情報を高速で処理しながら生活している。これらの情報による飽和状態は脳に強い刺激を与えることが判明しており、前世で言うところのゲーム中毒やスマホ中毒のような精神病としての症状を発症することがある。刺激を求め、集中力を欠き、凶暴化するマシーナは低年齢において非常に多く、俺もかかる可能性があるため、注意しなければならない。
脳の働きを抑制する薬剤や、しばらくサイバネティクスを使わないオフシーズンを作るなどして情報中毒を和らげることが可能だそうだが、発症した時点で「何もしない」ことができない状態になっているため、対処療法としても成立していないようである。
最期に、サイバネティクスによる病気として最も恐れられているのが、「サイバネティクスフィードバック脳症」と呼ばれる病気である。
俺たちの世代が移植したグライアイのように、脳へ直接的に情報を送受信する機器は非常に多く、前世の生活と比べると脳の負担は比べ物にならないくらいに大きい。そのため、体に移植しているもしくは接続しているサイバネティクスの量が多ければ多いほど脳の負担が増大し、神経系を酷使した結果アドレナリンやドーパミンの過剰分泌、脳神経の鈍化を引き起こして機能不全に陥る。これがSF脳症と呼ばれる病気である。
俺たちの世代がグライアイを移植されたのは、今までの世代でのSF脳症の発症率が他の学園の卒業生に比べて有意に高いということが判明したためである。グライアイには通常の眼球型サイバネティクスとしての機能のほかにも、各サイバネティクスの操作や、フィードバックの処理を軽減する機能があり、俺たちにとっての第二、三の脳としての役割を担っているわけである。
なお、SF脳症による死亡は今世の死因ランキング第二位である。癌や脳卒中なんかよりも恐ろしいのである。一位は何か?非公表になっていた。恐ろしい。
魔法使いたちにとって恐ろしい病気は、「魔力枯渇突然死症候群」と呼ばれる病気である。現在、科学的に魔力というエネルギーの存在を確認することはできているが、実際にどんな存在であるとか、何をリソースに生産されるエネルギーであるのかを解明・立証することができていない。歴史的権威のあるMCUの魔法技術継承管理官(魔法技術を未来永劫伝承し続けるための栄誉職)は世界に充満する奇跡のエネルギーを吸収した人類が体内で変換することで魔力を生産していると主張しているが、根拠となる文献やデータがなく、現在は多くの科学者に無視されている。
この魔力枯渇突然死症候群は魔法の使用中に発症することが多く、老人に多い。そのため、第三次世界大戦終了直後はほとんどが突発的な過労死や老衰であると考えられていたが、どう考えても魔法のせいではないかという状況が多く、仮定として病名が考案された。いまだに原因が究明されていない病気であるが、重要なことは今後魔法を使う際に俺はいつ生命の灯火が消えるかわからないということだ。このリスクを全ての魔法使いが抱えている。老後は安静に過ごしたいものだ。
ニンジュツ使いに多い病気は「テロメア不完全性DNA崩壊症候群」と呼ばれる病気だ。ニンジュツ使いは自他を変化させることで肉体を強化したり特定の現象を起こすことができる。特に自分の身体を変化させる技術は非常に多いが、その変化の過程でテロメアが大きく欠損することがわかっている。テロメアはDNAを再生させるために重要な末端部分であり、テロメラーゼと呼ばれる物質によって都度再生されるようになっているが、ニンジュツの連続使用によって再生が阻害され、DNAの複製に支障をきたすことになる。つまり、ニンジュツを使えば使うほどに、自分自身の設計図にバグが発生してしまい、元の自分に戻ることができなくなるというわけだ。
初めてこの病気で死亡した患者はダイエットのためにニンジュツを四六時中発動しており、すでに自分自身の意志でも元の自分に戻ることができなくなっており、最期には異形の存在となって処分されたと言われている。俺も自分の体色を変化させる術を練習してしまった以上、このリスクは常に抱えることになるんだろうか。今後はできるだけ自分自身を対象としたニンジュツの習得は控えるようにするべきだろうか。
サイバネティクス、魔法、ニンジュツのどれにしても、この世界で生きる上では重要な存在である。いつか家族を見守れるようになるためにも、こういったリスクを背負いながら生活していかなければならないだろう。
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サイバーパンク世界特有の病気なんかもあるかなと、色々想像をしていた時きのアイデアでした。
この世界でも某ゲームのように情報中毒などで暴れるヤバい奴らがいますので、そのうち登場するかもしれません。




