帰っても遠足ではない
仕事も忙しいので、今後は22時までにはなんとかアップできるように頑張ります。
都市の防衛部隊が集結している外縁部に俺たち幼稚園児たちは降ろされた。輸送車から降ろされると、車両の外観が乗った時とは大きく変化していることに気がついた。
これは「対AI迷彩』と呼ばれる迷彩模様であり、図柄の明暗や色彩の工夫により、AIからの自動照準等を防ぐための技術として知られている。対AI迷彩の有益性は第三次世界大戦から知られており、当時はこれを身につけていないとマクサコフ製の高速ドローンに認識されて爆撃されることが多かったため、多くのニンジュツ使いや魔法使いがこの色彩の迷彩服を着用していたものだった。現在では対「対AI迷彩」に対する…と、いたちごっこの状況が発生しているため、俺は前回のニンジュツの授業では練習をしなかった迷彩ニンジュツであった。これもユン先生が室内から変化させたのだろう。自身の知覚範囲外でも変化もできるのか…。試しに俺のドローンで照準を合わせてみたが、車両を地面としか認識することができず、自動誘導などは機能しなかった。今後の参考にするためにドローンで全周を記録しておいた。先人から学ぶことも大切だとユン先生が言っていたから許されると信じたい。
バスからは最後にユン先生に抱えられてマディナが降りてきた。顔面の蒼白さは余計に酷くなっており、流石に心配な状態である。
「マディナ大丈夫か?サイバネティクスの不調か!?」
マディナの口からは涎のような吐瀉物のような何かが滲んでいた。話せないマディナの代わりにユン先生が説明してくれた。
「マディナは…ドローンの画面酔いだ。」
意外な症状に俺を含め、クラスのみんなで唖然とした。
「マディナはどうもAI自動回避最中に視覚接続したまま周囲の索敵をし続けたらしくてな。高速ランダム軌道をとったドローンの資格情報は乱雑だから人にはよろしくない。脳みそがミキサーにかけられたような感じになるそうだから、お前らも十分に気をつけるようにな。AI回避と手動回避の合わせ技なんて中等部に入ってもそうそうやらん。幸いグライアイの安全装置があるから脳が焼けるほどではなかったが、しばらくは知恵熱のような症状で授業には出席できないだろう。友人同士で相談して授業のレポートを作ってやりなさい。映像を記録して送るのもいいが、しばらくは映像を見たがらんだろうな。」
ユン先生は俺たちに宿題を言い残してから都市内の病院へ輸送してくれる救急車両へとマディナを届けに行ってしまった。取り残された俺たちは視線を右往左往させながら次の指示を待っていた。
「皆さん、体調に問題はありませんでしたか。ここからは二組と合同で都市内を移送しますので、こちらへ集合してください。」
差し伸べられたのはエイヴリル師の手であった。
「念のために皆さんの制服に魔法をかけておきま『した』ので、安心してください。さあ、都市内移動用の大型バスを学園が用意してくれました。戦力の集中と護衛対象の集中は基本ですからね。」
この人も大概物騒なこと言ってるな。という感想を持つが、エイヴリル師は張り付いたような笑顔で愛想を振りまいているために、批判的にはなり難い。普段あまり関わりのない教員との行動は案となく違和感を覚えるものの、守ってくれる人間の存在は重要なのはみんなわかっているため、ついていくことにした。エイヴリル師は魔法至上主義の人間であるため、俺のクラスの担任であるユン先生とは相性が悪い。率直に言って敵対していると言っていいほどだ。それを園児である俺たちもしっかりと感じているためクラス内では魔法使いの家系の子以外はなんとなくエイヴリル師が苦手なのである。
「さて、一組と二組合同の移動になりますので、せっかくですから、まだ知り合ったことのない子同士で座ってくださいね?席にはつけましたか?ではシートベルトを閉めてください。学園の正面玄関まで輸送してくださるそうなので、そこまでは私と、皆さんの先輩が護衛しますよ。」
バスの前後を挟むように二台の車両がバスに接近した。
「さて、私も予防はしておきましょう。『固く、硬く、堅牢なる守りを生み出せ。』」
エイヴリル師から漏れ出た魔力を感じ取ると同時に、バスの内外に魔法発動時特有の淡い光が漏れ出る。バスの強度を強化したのだろうか。
「結構な魔力を注ぎ込みましたから、ミサイル程度じゃびくともしないですよ?ニンジュツと違って魔法というのはすごいでしょう?皆さんも積極的に魔法の学習をしてみてくださいね。いつでも個人指導や相談には乗りますので。あ、でも私は連絡用の端末をあまり使わないので、アポイントメントは手紙や掲示板を利用するか、授業後に直接訪問してくださいね。」
ここぞとばかりに宣伝と布教をするということがなければ頼れるし、優秀な先生なのだが。緊張が解けたのか、バスの中には微睡む雰囲気が漂い、みんなウトウトと、眠り始めている。俺も、今できることは何もない。マディナのことは心配だが、今どうにかすることができるわけでもないのだからと、少し眠ることにした。帰るまでが遠足とはいうが、そもそもこんなものを遠足とは呼ばないと、今日という日を振り返っていると、いつの間にか眠りに落ちていた。
マディナが今回罹ったように、サイバネティクスを移植した人間特有の病気というものがこの世界にはあります。
今後忘備録にて色々書こうと思います。
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