空間攻撃
未来の戦闘ではどんなことをするのか想像すると楽しいですよね。
[こちら最後尾一号車担任のユン。各担任へ伝達。護衛部隊にプレス弾による援護を要請。効力確認は児童の神前のドローンが担当。送れ。]
この世界における現代兵器は「空間攻撃」と呼ばれる考え方で実行される。
拳銃などによる一発の弾丸による攻撃は、被害者側からすると「点」の攻撃であり、攻撃の精度を向上させたり、命中箇所を選ぶことで最大の効果を発揮する。狙撃銃による射撃などは特に顕著であり、効率重視ならこの攻撃が選ばれる。
機関銃による連続射撃は弾丸を間隙なく発射することで「線」の攻撃を行うことができ、横なぎにしたり攻撃対象を追跡しながら射撃することでいつかは当てられる。弾丸の消耗を無視すれば効率良く、誰でもできる。今世では光学兵器に取って代わったが、非常に便利な攻撃方法だ。
散弾銃や擲弾による攻撃は「面」の攻撃といえよう。相手への攻撃面積を向上させることで大雑把な狙いで攻撃を命中させやすいほか、移動先へ「置き撃ち」できるため、ドローンによるAI回避対策にも使われる便利な攻撃方法だ。特性上、射程が短いことが欠点に挙げられるが、消耗品が接近して攻撃するのだから問題ない。
では現代戦における空間攻撃とは何か。それは複数の爆弾による包囲爆撃である。
前世の数学の時間、集合の単元で勉強したベン図のようなもので想像すると理解しやすかった。ネットで公開されている「良い子のための現代戦Part3」では「三つの爆弾の場所にコンパスを使って円を書くと、重なるところがあるね!これが効力空間だよ!」と書かれていた。これを円ではなく、球に置き換えると現実のプレス弾の原理につながる。
爆弾によって発生する爆風は球状に広がる。それらが複数あり、重なる部分は複数方向から爆風を受けることになり、空気によって「圧縮」される。そして、プレス弾は前世の戦争で使われていたフレシェット弾と呼ばれる砲弾を改良したものであり、無数の爆弾を効率良く散布することができる。大量の爆弾によって作られる空気の壁はまるで空間をプレス機にかけたような惨状を生むため「プレス弾」という蔑称で呼ばれるようになった。
児童の前で使うべきではない。
空間攻撃には他にも巨大な電磁波発生装置による空間蒸発攻撃や、大量破壊兵器も含まれるが、特に携行がしやすく、規格の合う砲弾と砲塔さえあればいつでも使える簡便さから、空間攻撃といえば「プレス弾」と言われるまでに至った。
俺はプレス弾の効力確認をするべく、ストリボーグの高度を上げて敵全体を視認することが出来るようにする。敵側は全部で四両の車両があることが確認でき、一応相手の申告通りに後方には変異種の群れがあった。ユン先生にも映像を共有する。
数秒後、バスの進行方向から轟音が響く。こちらのプレス弾の射撃音だろう。砲弾はおそらく俺のドローンの上空を通り抜け、敵上に爆弾の雹を降らせるだろう。
相手もこちらの攻撃を察知したのか、速度を上げた。一撃目は無駄になろうだろうと予想されたが、後方に群れていた変異種達が一瞬にして舞い上がる。プレス弾による爆風で巻き上げられたのだろう。一定以上の大きさや重さがなければ足元からの風圧で巻き上げられるのだ。それでも爆風を受けないわけではなく、皮膚の内部へ浸透した衝撃波によって骨は砕けて筋肉が断裂する。水風船を宙へ放った時のような不自然な歪みを見せながら変異種達は浮かんでは沈む。
見たくもないものを見てしまった衝撃にしばらく俺は何もできなかったが、ユン先生に肩を叩かれることで正気に戻る。報告を俺にしろというのだ。
[初弾、敵部隊の加速により効力を認められず。敵後方の変異周の討伐のみ。次弾は敵の最高速に合わせての射撃を。]
これで相手が死んだら俺の所為になるのだろうか。にわかに罪悪感が俺の胸の中に湧き上がり、その熱は吐瀉物へと具現化して喉を駆け上がる。反射的に抑えて飲み込むが、喉が焼けて唾も飲み込めない。
未だ決めていなかったが、ミクリマ教では間接殺人は罪ではないことにしよう。今決めた。俺のすることは今後罪にはならんのだ。神がそうお決めになるのだ。
次弾が発射される。敵車両四台の内、二台へ命中し、車は金属でできた小籠包のようになる。「肉汁」もたっぷりだろう。俺の僚機としてドローンを派遣したマディナは俺の隣で顔面を蒼白にしている。今までも白くて美しい肌をしていたが、今では白ではなく青であると言い切れるだろう。敵の数を半分へ減らすことができたが、彼我の距離が近すぎるため、おそらく砲撃はできないだろう。相手の車両の方が小回りも効き、速度もでる。みんなが不安な表情をしているなか、ユン先生だけが表情に余裕が見られる。
「ユン先。余裕そうな顔をしていますが、そうであるならみんなを安心させることに一つでも言っていただけないのですか?」
俺は自分の問題を全体の問題にすり替えてユン先生に尋ねた。
「ん?ああ、もうすぐ『都市の』射程内だろう?もう相手は終わりだよ。ここまで来たら撤退するか、そうでなければ決死隊なのだろう。そうなれば俺にできることはそう多くないからな。お、外を見てみろ。防壁が上がった。なかなか見れないからな、よーく見ておくことだ。いい遠足になったな。」
ユン先生は俺たちの見るべき方向を指差し、希望を見せつけた。
以前主人公を助けるために使われた冷凍弾頭も空間攻撃の一種であり、範囲内を液体窒素で浸潤させることで空間内の気温を急激に低下させ、凍結。もしくは窒素による酸欠を引き起こして空間内の対象を無力化できます。
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