ニンジュツの第一歩
昨日は新しい第一話を更新しました。
短いですがお楽しみいただけたら幸いです。
今日の授業では、初心者クラスの中から三つの班に分かれてそれぞれのニンジュツを学習習得する事になる。選択肢は三つで、どれも隠れるための術であるという点で共通している。
一つ目は先日のドッヂボール大会で使用された「霧隠しの術」であり、肺の中の空気の変化を切欠に空気中に霧を生み出すニンジュツだ。一歩間違えると肺の中に水が溜まってしまい、相応に苦しむ事になるのでしっかりと練習する必要があるだろう。
二つ目が「熱源迷彩の術」。自分の周囲の温度を変化させることでドローン等の熱源探知から逃れたり、オート照準の対象から逃れるための術である。ニンジュツ使いは体を変形できるため、AIの自動照準にかかりにくいが、そういった場合は熱源探知で射撃管制をとる事になっている場合が多いので、有用な術である。自分の周囲の温度を変化させられることから、民間ニンジュツ教本の「エアコンの術」という項目とほとんど同じ内容になっている。非常にエコな術だが、弾幕から逃れるために広範囲に発動しなければならないため、チャクラ量がものを言う術であると言えよう。
三つ目が「色覚迷彩の術」である。いわゆる普通の迷彩である。カメレオンのように自分の衣服や体色を変化させることで相手に視認されても気づかれないようにするための術だ。現代の迷彩パターンであれば、音響探知や熱源探知にかからない限り高確率で相手に発見されない。さまざまなパターンに変化できるようにしなければならないため、他の二つに比べると術を覚えた後の勉強が大切であり、それだけの効果はあるとされている。
最終的には全てのニンジュツを修めるのが良いと思うが、俺の場合はまず色彩迷彩の術を選択した。熱源迷彩は俺の場合はクローフィーで代用できる。霧隠しの術も魅力的だが、相手から見えないだけでなく、自分から相手も見えなくなる状況はあまり好ましくないだろう。ドローンのサポートを受ければ自分がどのように見えているかが第三者視点で確認できるため、迷彩の精度も向上する。今回はこの術の修行に取り組む事にした。上達すれば相棒のストリボーグに自機用ペイントが出来るだなんて魅力的だしね。
その結果、今俺は全裸で自分の体の状態をクラスメイトと見合っている。三歳児ゆえか、裸になることへの抵抗を無視されている状態だが、男女を一緒のペアにすることには人権意識が働いたのか、男児同士のペアになっていた。相手の男の子は将来的にはエンジニアのエリートコースを目指しているそうで、今回のニンジュツ修行は初めからこれを狙っていたらしい。わかる。
互いにグライアイとストリボーグのそれぞれで色彩迷彩の状況を確認しあいながら、さまざまな色彩パターンの練習をしていく。自分の肌の色はグライアイが登録してくれているのでほぼ問題なく体の色を元に戻せているが、自分に蒙古斑があることを忘れており、色と範囲の確認をしていなかったため、自分の蒙古斑とは訣別する事になってしまった。まあ別に必要なものではないから構わないが。
相手の男の子も飽きてきたので、しばらくは迷彩の練習ではなく髪色を変えたり自分のお腹に絵を描いてみたりして遊んでいたところ、見回りに来たユン先生に見咎められてしまった。
「修行の時間に遊んでいるとは。随分と余裕があるようだ。さぞ十分な腕前になったのだろうね?」
本気で怒っている様子ではないが、ご立腹のようだった。
「すみません。どれくらい精密な変化ができるのかと言う話から発展して、細胞単位での変化までは難しいですが、絵を描くくらいまではできることがわかったもので…。ところで俺の蒙古斑消えちゃったんですけど、スキャンデータとかに残ってないですかね?自分のには無くって。」
「話を逸らすなよ…。まあいい。蒙古斑のデータなら、身体測定のデータに残っているだろうから後で医務室でもらいなさい。必要なものではないと思うがね。腹にお絵描きをしているくらいなら、化粧の術でもして見るといいだろう。現代の女性ニンジュツ使いで習得率百パーセントを誇るニンジュツだ。」
また後で来るからな。とユン先生は言い残した後、俺たちは色彩迷彩の術を利用して変顔大会を開催した。隣でペアを組んでいた男児たちも参加して非常に楽しい催し物になった。これで顔の形状まで変化させることができれば顔認証等もすり抜ける立派なニンジュツスパイになれるだろう。それにしても今回の授業は逃げる・隠れるためのニンジュツの指導ばかりであった。これはマクサコフの方針なのだろうか?
正面切って戦う能力のない自分達にとっては便利なのは間違いないが、助けを呼ぶための術だとか自己修復の術だとか、そういった術を先に学習しないのはどういった理屈なのだろうか。
学友たちと楽しいニンジュツ修行を終えた後にホームルームである一年一組へ戻ると、机上にプリントが配られていた。
遠足のお知らせ
来たる週末に学年合同の都市外遠足を行います。
参加する園児一同は十分な健康状態を維持し、サイバネティクス、ドローンの状態確認をしておきましょう。
マクサコフの精鋭部隊が君たちを安全にエスコートしてくださいますが、民族主義者のテロリストや変異種等の襲撃の可能性もありますので、自分の身を守るための準備をしておきましょう。
本日学習したニンジュツの実地試験も行いますので、しっかりと復習・修行をしておくこと。
なんだと…。
マクサコフの教育では幼稚園児から正しい(マクサコフ視点)倫理観の涵養を行います。
遠足って楽しいですよね。




