ニンジュツの授業
ニンジュツの授業が始まります。
幼稚園の授業は、ほとんどが自習かAIによる学習支援による授業形式で進んだ。これは、受験勉強のために様々な勉強をしていた俺たちであっても、日常生活や社会生活で必要な知識や考え方を身につけられるように用意された教育課程であり、各自の自由な進度で進めることができる。俺は前世で大学を卒業したが、今世の歴史や言語学などではまだまだ不十分なこともあり、苦戦している部分もある。一方で数学や化学などの理数系の科目は大きく常識が変わることもないので、比較的順調に課題をこなせていた。
初めの数日間はほとんどが簡単な授業とお昼寝ばかりであったが、今日はニンジュツの最初の授業がある。ほとんどの生徒にとって初めて触れるニンジュツの授業は俺たちの担任であるヤオ・ユン先生が担当である。ニンジュツは習熟度別にクラスが分けられており、俺はもちろん初心者クラスだ。父に修行方法を少しだけ習ったが、修行をしているだけでニンジュツの習得を目指していたわけではないので当然である。
「ニンジュツの授業を始める。担当のヤオ・ユンだ。習熟度別のクラス替えまで約半年間このクラスと基礎クラスを受け持つので、よろしく。ニンジュツの習得は人体や環境への影響もあるから、慎重に行うこと。部屋で自習して消えてしまいました。なんてことがないようにしてくれ。」
このクラスと、一つ上のクラスを受け持ってくれるユン先生はいきなり不穏なことを口にした。
「ニンジュツに必要なのは、正確な自己同一性の認識だ。これは心理学的に君たち自身が自我を確認できていると言うことと、今の肉体を十分に把握できていることの二つを指している。心理学用語ではないから気をつけてくれ。知っての通り、ニンジュツ使いは自他の存在を変化させることで日常生活や社会生活の中で活躍している。」
ユン先生はそう言いながら手をヘビのように変化させ、教室の反対側へと伸ばした。
「このように肉体を大きく変化させて届かないところへ手を伸ばすこともできる。」
次に鳥に変身して部屋の中を飛び回って戻ってくる、
「空を飛び回ることもできる。しかし、基本は自分自身であることを忘れてはいけない。一番最初に君たちが変身できなければならないのは、自分自身だと言うことをよく覚えておいてくれ。それがニンジュツの基礎であり、最初の修行なんだ。もし失敗すれば、鳥のまま生活することになったり、空気に紛れて世界に散らばることになってしまうからな。」
ユン先生は子供たちを目一杯脅した。これは父からも聞いたことがある話だった。
ニンジュツ使いの技術の根幹は「物質や現象を変化させる」ことにある。それを利用することで体を強化したり、動物に変身したりすることができるが、戻ることも同様に変身による変化で行う必要がある。動物に変身した後に術を解除すれば勝手に元の状態に戻るといった便利なものではないのだ。そのため、最初に必要なのは自分自身をよく理解し、戻り方を練習しておくということだった。
これには先達の存在が必要で、熟練者によって体の一部を変化させてもらい、それを修復するつもりで変身術を行使することで、ニンジュツの修行をすることができる。
「では、みんなのグライアイに身長や体重といった身体のデータと3Dスキャンしたデータを送る。これは、これから君たちが寮を出て外出するときに毎回スキャンされたデータを受信するように。これを間違うと、一生大人になれないから気をつけろよ。老けるのが嫌でも、精神と肉体が一致しないと、結局事故を引き起こすからな。」
寮には「外出するときは玄関で寮母か寮父に立ち止まって挨拶をすること」というルールがあったが、これがその理由なのだろう。寮の玄関にセンサー類が整備されており、巨大なスキャナーとして機能していると言うことだろうか。データ受信設定画面を表示して、量から送信される情報の受け取りを許可しておく。
「では始めに君たちがニンジュツを使うために必要なエネルギーである『チャクラ』を現時点でどれくらい持っているかを確認しよう。教材セットに入っていた袋をとし出してくれ。」
ユン先生の指示通りに大きな袋を取り出す。
「みんなはある程度知っているとは思うが、調べたことのない人向けに一度だけ説明するぞ。魔法使いが魔法を使うにあたって消費する魔力と言うものを消費している。その正体はわかっていないが、ある程度の限界がある。これは魔法の授業で知ることができるだろう。この魔力とは別に、人間には神秘の力がある。それが『チャクラ』だ。解いても、魔法のように科学的にどのようなエネルギーなのか確認はできていないが、魔力とは異なる存在であることが確認できている。」
ユン先生はそういうと、俺たちに映像資料を配布する。映像では成人男女が魔法を使って水を沸騰させている様子が早送りで表示されている。魔力が尽きたのか、水の沸騰が収まると同時に、男女はニンジュツを使ったのだろうか、犬と猫の姿に変身した。
「魔力が底をついた状態であっても、ニンジュツを行使することが確認できた実験の映像だ。こう言った実験が第三次世界大戦後に各地で行われて、魔力とチャクラが別のエネルギー源であるということがわかっている。そして、ニンジュツは非常にコストパフォーマンスに優れていて、魔法なんかよりも使いやすいことは言うまでもない。」
どうやらユン先生は魔法文化アンチのようだ。実際、ニンジュツのコスパは高い。変身に使われるチャクラの量はそこそこあるが、変身中に継続して消費することはなく、最初のコストだけで済む。先日ドッヂボールで使用してもらった霧を吐き出す術のように周囲まで変化させていくとなると消費量も多いが、それでも魔法に比べると継戦能力には勝るだろう。
「それでは早速みんなのチャクラ量を計測していこう。これを後ろに回してくれ。」
ニンジュツの授業は順調に進んでいく…。
魔力とチャクラは、それぞれが別のエネルギーであることは確認されましたが、どのような存在なのかまでは科学的に説明できていないままです。また、その量を即時に判断することも難しく、ゲームのように魔力ゲージなどがあるわけではありません。
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