お食事会
予約投稿失敗していました。あまりいないとは思いますが、
楽しみの方には申し訳ありません。
「目は口ほどに物を言う」という言葉があるが、眼球型サイバネティクスを用いるマクサコフの人間に関しては、目は口以上に物を言う。短距離赤外線通信などを利用して音に乗せず、秘密裏に情報を伝えることができるのだ。先ほどからマディナと目を合わせるたびに苦情のメッセージを発射されており、目に優しくない。
聴覚強化をしているクラスメイトが教えてくれた話では、俺たちのチームは相手を「血祭りに上げた」とされていて、風評被害が発生している最中である。このまま食事会が進むのは好ましくないが、打つ手もない。
会場に幼稚園の上級生も集まってきた。これから学年交流をしながら食事をするとのことだった。約五百人いる上級生に紛れながら、寮生活の話や学校の授業のこと、先生の特徴などを教えてもらえる。保護者たちは上階へ移動して、親は親で交流するようである。
俺たち幼稚園生を一年生として、前世の小学六年生までを九学年とするから、彼らは二年生と三年生である。二年生も三年生も飛び交っている情報を集めつつ、俺たちに甲斐甲斐しく世話をしてくれる。俺もプリンもどきをもらった。とは言っても食べるものに味付けがしてあるわけではなく、自分で味をネットから落としているため、プリンのような食感のネクターを取り分けてもらっているだけだが。杏仁豆腐にもなるし、チョコムースにも感じられる。
「君はネクター食べ慣れてるね?僕の家は郊外だったから生の食材を食べたことがあってさ。あれはひどい味だったよ。」
「食堂の入り口に週替わりでオススメの味付けが掲示されるから、気に入った味があれば記録しといたほうがいいよ。二度と出会えないかもしれないからね。」
「木曜日の食事はいっつも同じメニューなんだ。昔の軍隊の方式を取り入れているそうだけど、眼球型サイバネティクス入れてる俺たちには関係ないよな。」
「ニンジュツの授業の前には食べ量を減らしておいた方がいいわ。術の失敗で胃が縮んで破裂したやつを見たことがあるの。」
ちょっと耳を傾けただけでこれである。情報の宝庫だ。ニンジュツの話はしっかりと記録しておこう。
「あそこにいるアイツですよ。四組のクラスを血まみれにして一方的に倒してました。アイツも手から出血してましたから、もしかしたら霧に紛れて殴りに行ったのかも…?」
「いや、流石にそんなことはできないよ。先生方も一緒にいたんなら絶対に止めるって。」
「ボールを投げてその反動で出血したとか…?」
俺の噂も広まってしまっている。
「君の噂かな?なんか物騒だけど。」
目の前に座っていた少年が声をかけてくる。3年生の先輩だ。
「そうですね…。自分の血液型サイバネティクスを散布して索敵をしたので、その、ビジュアルが悪かったのが影響していると思います。」
俺も悪いことをしたと思っているので、反省した様子を相手に示す。冤罪なんだ!頼むから疑惑を晴らしてくれ。
「うーんそうなんだ。まあ、三年生には変な噂が広まらないように学年チャットに流しておくね。君達も早めに作っておくといいよ。授業変更とか、学年行事とか結構役に立つ機会があるから。入学生みんなでのチャットは早めに作るように働きかけなね。」
そう言って先輩はしばらく目を瞑った。学年の園児に連絡しているのだろう。俺も前世ではようやくSNSやチャット業務に関われるようになったと言うのに、この世界では標準でできなければならないのだろう。ひとまずクラス単位で連絡の交換をするように働きかけてから、あとでまとめるような形で動いてみようか。そんなことを考えていると、少年が目を開き、話しかけてくる。
「そういえば、君は…、神前くんはニンジュツか魔法は使えるのかい?」
…この質問は危険だ。事前に松下管理官に話を聞いていてよかった。これは俺が今後どの派閥に入る予定なのかを聞いている。
マクサコフの運営する学園には主に密の派閥がある。マクサコフ公社の社長を筆頭とした理想派、副社長の二人がそれぞれの長である親自然派と親古典派の三つの派閥だ。幼稚園においては理想派は純粋な理想派だけでなく、意見を保留にしている子供も多く、現在の社長が地を維持している限り、安定している。しかし、現社長が退陣した時には副社長のいずれかが次のトップになるため、今から旗色を決めておいた方がいいとされている。ちなみに松下は理想派に所属しているようだ。これらの派閥は功績の奪い合いや案件、営業の取り合いなど社内業務を奪い合い、自派閥の成績を向上させることで地位の獲得につなげようと動いているため、結局は会社の利益につながっているため、歴代の社長はこの状況を受け入れている。
さて、ここは当然保留である。
「うーん、父はニンジュツを使えるみたいなんですが、自分にはまだ早いって教えてくれなかったんですよね。なので魔法もニンジュツも使えないんです。これから授業で勉強できるのが楽しみなんですよ!」
事情を知っているそぶりを見せずに、全力の子供スマイルで返答する。楽しみなのは本心だ。見抜かれることはないだろう。
まだまだ三歳児だと言うのに、すでに企業社会に巻き込まれている。これからのことを思うと憂鬱にもなるが、じっくりと旗色を見極めて有利な方につかなければならない。
食事もほどほどに解散し、俺たちは寮へと案内されることとなった。
みなさんの会社には派閥はありますか?筆者の会社にはあります。
派閥を超えてのコミュニケーションやお土産などは怖くてできないですよ…
でも結果が出るからやめられないんですよね〜




