入園式
やっと入学。卒業までどれくらいかかるだろう。
本日はボンデーキン学園幼稚部の入園式。ここ幼稚部講堂には帝国内の本土近郊から集まった選りすぐりの幼稚園生が百二十人とその保護者、担当した管理官が集まっている。もちろん俺の両親と松下管理官も参加している。周囲を見渡してみると、子供たちのと彼らが身につけているさまざまなサイバネティクスが目につく。猫耳のようなファーの付いた頭部移植型の音響探知機、体幹補助・義肢として利用できる疑似尾、MAGE…の新型など、それぞれの特有のサイバネティクスを身につけているようだ。
入園式が始まり、一人ひとり呼名され、返事をしていく。その中に自分と共に受験したアンディやマディナがいたことにほっとした。一次試験や二次試験で見知った顔も見かけて気分も高揚してくる。入園生の代表は以前トイレの前で出会ったヨシダ・アキコもいた。空気砲を放つことのできるサイバネティクスを移植した両手で入園者の代表と記念品のバッジを受け取っていた。一瞬目があったが、俺がこの場にいて当然という何とも表現しづらい視線を送られた。そのまま二十人づつのクラスに分けられ、親元を離れて席に座ると、園長(学園全体の長ではない)からの挨拶があった。
「伝統あるボンデーキン学園への入学おめでとう。私は幼稚部の最高責任者であるサマンタ・ブラゼッティです。みなさんと今日お会いできることを楽しみにしていました。ここはマクサコフ機械公社が運営する学園。みなさんには将来マクサコフ機械公社の一員として働いてもらうことに期待しています。世界に科学と機械による光を照らすため、我々は日々努力と研究を重ねなければいけません。それは試練と苦難に満ちた道であるとともに、闘争の日々であることを意味します。ですが、みなさんが互いに競う合うことは求めません。マクサコフは機械と人体の調和を大切にするだけでなく、人と人の調和も尊重します。みなさんが手を取り合うことで学び合い、高め合うそんな関係を築くことができるように我々教員陣は最大限の指導力を持ってみなさんの教育にあたります。現在は帝国や合衆国ではニンジュツや魔法など、それぞれの国の特色を生かした学校教育を行なっています。しかし、我々人類が真に調和した世界を作るには、ニンジュツ使いも魔法使いもサイバネティクスを移植したマシーナたちもそれぞれが協力していく必要があります。そのため、本学園ではサイバネティクスの活用、ニンジュツの修行、魔法の学習全てが教育課程に含まれています。今までの生活になかった学びや発見にみなさんが積極的に取り組めるよう共に歩んでいきましょう。」
最高責任者としては短い時間だったが、この学園の理念と情熱が伝わってくるスピーチであった。この世界を三分する先端技術であるサイバネティクス、ニンジュツ、魔法。三つの技術を十分に身につけないものには、マクサコフの門はくぐれまい。未来の目標に向けて気を引き締めなければ。
その後、俺たち園児はそれぞれの教室へ向かい、園児同士で自己紹介をしたり、担任の紹介を受けたりした。俺たち一年一組の担任は帝国出身者の公国移民、しかし教職となり帝国に出戻りした男、ヤオ・ユン先生であった。
「初めまして。私はヤオ・ユン。担任として君たちの生活のサポートや教室の整備等を担当する。サイバネティクスの不調や体調不良などの相談は受け付けるけど、進路の相談だけは受け付けない。君たちの進む道は一つしかないからね!ははは!」
笑顔で、おちゃらけた口調で恐ろしいことを言ったユン先生に対し、園児一同は冷たい目線を送る。俺たちはまだ三歳だが、知能は成人並みだ。冗談が通じるものはそう多くはない。
「…えーと、担当する科目はニンジュツ入門と基礎。体育科目も兼任、補助をする。ニンジュツの修行は困難だが、君たちなら時間がかかったとしても大なり小なり体得することができるはずだ。不足する部分はマシーナなりにサイバネティクスで補強すればいい。これから一年間よろしく。」
そう言ってユン先生は保護者を連れて保護者会へと向かった。俺たちは新入生交流会という名目のレクレーション大会に参加することになっているようで、各クラス対抗でドッヂボールを行うことになった。いやいや、俺たちのうち何人かはソフトバレーボールで人の骨を折れる子供だぞ…。この企画を考えた教師の正気を疑いながら体育館に向かい、各クラスごとに集まって作戦を考えるのであった。
ドッヂボールっていくつからでもできて便利ですよね。このままだと死者が出ますが。
この世界の球技については次回多少解説します。




