忘備録=公国立ボンデーキン学園幼稚部 一次試験 二次試験
入園試験の一部をご紹介
設定資料のようなものなので、不要な方は読み飛ばしてください。
マクサ国機械公社が運営する公国立ボンデーキン学園は、公社が求める人材を育成するための幼稚園〜高等学校までの全寮制一貫校だ。基本的に入学者はサイバネティクスを移植している人間であり、最初の入り口である幼稚園においても、眼球型サイバネティクスが移植されていることを前提とした試験が行われる。
眼球型サイバネティクスはインターネットに接続する能力と高度な演算能力を有しているため、試験内容は単純な知識や計算能力を求める試験ではなく、言語能力や感受性、思考能力を問う問題が多く出題された。三教科の試験があり、国語、「道徳」の二つである。
国語は前世で行われたようなリスニングテストは廃止された。今年の受験者はグライアイⅢの機能で音声は全て字幕表示されるし、巻き戻しもできてしまうためだ。その代わり、討論の試験がある。
大門三 次のQRを読み込み、指示に従って討論に参加しなさい。
QRを読み込むと、目の前には二人ずつキャラクターが席についた机が表示され、「環境破壊の加速と防止について」の討論が行われた。俺たち受験者はその討論を聞きながら、根拠の妥当性や論述の仕方などについて言及し、どちらの意見がより良いと感じられたかを判断しなければならない。
それぞれのキャラクターの発言に関するデータに根拠となる資料も表示されるが、試験時間内に目を通してインターネット上の資料と照会する必要があり、改ざんされている部分もある。他にもキャラクターは論理が飛躍したり、話を逸らそうとするが、それも指摘しなければならない。もうすぐ三歳のお子様にさせる試験とは到底思えない難易度ではあるが、ここにいるほとんどの子供はこの試験に合格する可能性を秘めているのが驚きだ。今後学年が上がるごとにどのように難易度が上がるのかが今から恐ろしい。
道徳の試験では、日常生活から社会生活における行動について自分の考えを述べるという自由解答の形式が取られていた。
大門二 次のそれぞれの問いについて、あなたの考えを四百字以内で解答しなさい。
問一 あなたと寮で相部屋になったAくんの机が非常に散らかっている。あなたはこの状況に対してどのように行動するか。また、そのように行動する理由を答えなさい。
問二 あなたの両親が敵対する組織の人質となってしまいました。誘拐犯は、あなたがマクサコフに対するスパイになることで家族を助けると主張しています。あなたはどのように行動するか。また、そのように行動する理由を答えなさい。
えげつないよ…。こんな問題は道徳と言っていいのだろうか?私の前世の経験を持ってしても正解がないと言える問題だ。しかし、実際に起こり得た問題でもあったのだろう。私にもその未来があったかもしれない。
問題を見通してわかったことは、受験者が解答する時に「会社の利益」を解答に含めることができる問題になっていることが多いということだ。選択肢を選ぶ問題は少なかったが、明らかに禁忌択と思えるような選択肢もあった。
二次試験は体力診断と健康診断だった。体操着なのか、上下一体型の薄い服を渡され、みんなで一斉に着替える。未就学児に人権意識などないと思っているのか、男女一緒にまとめて着替えをさせられて焦ったが、男子は男子、女子は女子でなんとなく集まって砦を作ってコソコソと着替えた。意外なところにサイバネティクスを移植している児童もいて、なかなか興味深い時間だった。
体力診断では、二百メートル走や、垂直跳び、反復シャトルラン(正面を向きながら右、左方向に音楽に合わせて走る運動)ハンドボール?投げなどが行われた。俺はクローフィーを移植しているので、周囲と見比べてみても十分上位の成績を残せていると思うが、驚くような記録を残している児童もいた。特に手のひらに空気ほうを移植している女児は手に持ったハンドボールを射出して誰にも届かないほど遠くまで飛ばしていた。
児童虐待かと思われる体力測定もあった。射出するボールを手で受け取る試験だが、難易度が時間に合わせて上昇し、最終的にはものすごい速度で飛んでくるため、最後にに腹や顔で受け取った子は保健室へ連れてかれていた。他にも寒い部屋や暑い部屋に入れられてどんな反応をするのかや、電撃を与えられたりなど、これが本当に必要なのか疑問に感じた。ガス室がないだけマシであるが。正直言って、こちらの覚悟を試しているか、サイバネティクスの耐久実験をしていると言われた方が理解できるほどであった。
健康診断では、先までの体力診断で疲弊した体を診断され、問診も行った。俺の場合は血液検査の中でクローフィーをどれほど消費したのか、効率を測りたいと言われて、データを提出した。他にも、機械への拒絶反応の数値を確認したり、骨の強度を確認したりなど、前世では体験したことがないものが多く、ひたすら精神的に疲弊した。みんな最初は笑顔でお話していたのに、今ではみんな黙って俯いたまま話し声など聞こえはしなかった。満員の退勤電車かな?と意外なところで前世を思い出してしまった。
基本的には「合格者を出す試験」でなく、「不合格者を出す試験」です。ひたすら負荷をかけ、これからの生活に耐えることができるのんかを測定します。筆記試験は比較的先進的であり、討論試験は今や他企業でも真似されているようです。
一次試験と二次試験で約二万人の受験者が半分以下になります。知識はグライアイのお陰で身につきますが、ここから先は忍耐の世界なのです。最終的な合格者数は二千人程度であり、世界中にあるマクサコフの学園で就学します。一校あたり三百人弱が入学し、卒業時には二百人弱になっています。退学の理由は学力不振だけではありません…。




