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サイバーパンク転生〜企業戦士となって信仰を捧げる〜  作者: 石丼
サイバーお受験戦争
30/70

雪まつり

週末で早めに帰れたので、書いたものをアップします。

エージェントも会社員です。評価を気にするものです。

 ニンジュツ使いの腕を蹴り上げるために姿勢を崩した俺はビルの屋上を向いたまま落下していく。地面への距離感がわからず、落下速度と恐怖が比例していく。屋上には冷凍弾頭が着弾した時に発生する雪が飛び散っている。空気中の塵と水分が結合した証拠だ。


 どうやって着地するかと頭を抱えていると、突然体に衝撃を受ける。地面にぶつかった?いや、何かに包み込まれているようだ。徐々に速度を落としていく俺の体に安心する。無事に着地できそうだ。


 名実ともに地に足をつけた状態になった俺は、着地地点に現れた人物に声をかける。


 「助けていただきありがとうございました。俺はマクサコフのエリート人材育成援助プログラム参加者の神前孝です。」

 と言って頭を下げる。


 俺を助けてくれた相手は、驚いたような困ったような顔をして返答をくれる。


 「こちらこそ、正体不明のニンジュツ使い三名の確保に協力いただき、感謝する。神前孝くん。私はペーター・バイエルン。エージェントだ。魔法使いの技術資格を持っている。しかし、プログラム参加者というからてっきり高校生くらいかと思ってミサイルの誘導を任せてしまったな…。これはポチェレーヴィンは叱られるかもしれん。」

 勘違いがあったのか。まあ、ミサイルをいち早く発射してもらうためにハッタリを効かせようとした面もあったのは確かだが、それで助けてくれた人に迷惑がかかるのは心外だ。なんとかフォローできるようにしなければ。


 「いえ、本当に危険なところを助けていただきました。ポチェレーヴィンさんやバイエルンさんに迷惑がかからないように最大限お力添えできるように頑張ります。ところで、俺は初めて魔法を見たのですが、あれはどういう原理で減速させたのですか?」

 このバイエルンさんと俺が制御を握ったままの生廃墟へ向かいながら、せっかくなので気になったことを聞いてみる。


 「ああ、あれは『空気抵抗』という現象のアレテーを強化している。物体を減速させる時によく使われる魔法だ。自動車のブレーキシステムにも連動して制御されている魔法で、指定した空間内で推進体が減速する。水中や空気中で使いやすいから教科書にも載ってる。まあ君は数年後に勉強することだろうが。」

 

 「そうなんですね。自動車が減速する場面はなかなか見ないので気にしたことがなかったです。あと、まだ受験前なんで入学できるかもわかっていませんよ。」


 「いや、受かるさ。君がよっぽど暴君でない限り、覚悟を決めてあそこから飛べる奴が落ちるとは思えないね。勉強も苦手じゃないんだろう?」

 バイエルンさんは微笑を浮かべるが、そこには微かでない確信のようなものを感じ取れた。そんなに危険な試験なのだろうか?どんな意図があるのだろう。

 ビル前で待っていると、もう一人の人物がいた。

 

 「ハァ〜。本当に幼児じゃないか…。」

 おそらくポチェレーヴィンさんだろう。ミサイルの誘導権限を俺に移譲したことに落ち込んでいるようだ。不憫な同僚にバイエルンさんが声をかける。

 

 「もう済んだことなんだから、気にするだけ無駄だろう。結果としては最良の状態なんだ。ただし、兵器の非正規利用と、二歳児をビルから飛び降りるように命令したのが問題なのは間違いないけどな。」

 フォローになっていない。首を洗っておけと言っているようなものだろう。


 「あの、ポチェレーヴィンさん。助けていただいて本当にありがとうございました。本当にギリギリだったんです。あなたの判断がなければ僕はバラバラにされて売られていましたから。既にターゲットになっていたんです。彼らは今幼児誘拐をしているグルプの一員なんですよ。」

 そう言って、ここに至るまでの経緯のデータを二人に送信する。

 

 「これは…お手柄だな。少年。」

 そう言ってポチェレーヴィンさんは声を絞り出すが、俺は続けて話しかける。


 「彼らを確保したのはお二人の功績にできるはずです。私は二歳児で、追いかけられていただけ。逃げることができたというだけで十分に評価されるでしょう。そちらは誘拐犯の確保を手柄にできるはずだと思いますが?」


 そういうとポチェレーヴィンさんの血色は良くなる。


 「そうだ!あいつらは凍結させただけだから、尋問して情報を引っ張れるはずだ。今は世界中でニンジュツ使いによる誘拐が起きている。末端の構成員かもしれないが、警察が来る前に確保できればマクサコフの、ひいては我々の功績になるはずだ。運がよければ帳消し以上もある。すぐにいこう。少年は案内を頼む。」


 そう言った側から走り出している。俺の足では追いつけないので、バイエルンさんが担いで走ってくれる。ストリボーグは警備部隊のドローンと連携状態になっているので、今の自分の権限では動かせない。大人しく抱っこされていよう。


 屋上に到着すると、そこには三人分の雪像があった。舞い上がった雪が冷凍された誘拐犯をおおっているのだろう。腕をヘビに変化させて伸ばしたニンジュツ使いの雪像は非常に幻想的だ。作ろうと思っても簡単に行かないような構造である。グライアイの分析結果では、三人とも死んでいることがわかる。冷凍弾なら死なないと思っていたのだが…。


 「あの…、三人とも死んじゃったんですか?」

 俺の質問に対し、慎重に言葉を選ぶようにバイエルンさんは返答する。


 「うーん、考え方次第だね。生命活動を停止しているという考えなら間違いなく死んでいる。ただ、蘇生できる前提で冷凍しているだけという考えなら、生きているともいえる。」

 バイエルンさんはあやふやな言葉を返してくれた。声色には優しさのようなものを感じる。ポチェレーヴィンさんは呆れた声で言葉を発する。


 「殺さないために凍結弾を使うのはコスパが悪いぞ。対ニンジュツ使いの兵器の中でもなかなかの値段だ。電撃兵器は安上がりだけど、効果時間が短いし、意識を奪えないと回復されてしまうから、選択は間違っていないが。」


 それぞれの雪像を床から切り離し、ドローンで牽引していく。犯人の確保は完了し、俺もビルの状態を元通りにした。

 「それじゃあ神前孝くん。君の担当の管理官が到着したようだから、我々とはここまでた。君の健闘には敬意を表するが、しっかりと叱られることだろう。覚悟しておくといい。」

 バイエルンさんは最初に見せたような微笑を伴って、俺を松下管理官に預けてから去っていった。



ニンジュツ使いは変身能力を悪用して致命傷以外はすぐに修復してしまいます。また、毒薬等は体外に血液ごと排出したり、電撃はアースを作って逃れたりと、やりたい放題しています。

そのため、マクサコフでは、相手に返信する隙を作らせずに対応するために、冷凍弾頭を利用することを推奨しています。凍結してしまば意識を一瞬で刈り取れるだけでなく、逃亡されやすいニンジュツ使いを捕獲しやすいという理由です。

しかし、魔法使いはそもそも魔法の性質自体が火力の増強に向いているため、ニンジュツ使いに奇襲さえされなければ正面から押し切れるというのが、第三次世界大戦での戦況でした。バイエルンがやっていたように空気抵抗を強化して機動力を削ぎ、射程と威力を強化した火器で削り切るというのは、シンプルかつ強力な戦術でした。


いいねや評価、ブックマーク数がいつの間にか増えていてびっくりしました。

みなさんどうもありがとうございます。これからもお楽しみいただけたら嬉しいです。

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