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サイバーパンク転生〜企業戦士となって信仰を捧げる〜  作者: 石丼
サイバーお受験戦争
29/70

氷鬼

予約投稿です。

戦闘シーンとはいえ、まだ銃も持てない主人公では、これが限界です。

 神前孝のモニタリングをしている林田は、プログラム参加者からの連絡にいち早く対応することが多い。それは昇進して補佐から管理官へとなった今も変わらない。初めて担当するプログラム参加者たちへの感情移入がまだ抜けないのだ。


 [松下管理官!至急神崎孝からのメールをご確認お願いします!]


 職員同士でのみ利用できる通信機能で上司から先任に変わった松下へ連絡を取ると、すぐに返信が来る。


 [ハンドラーに連絡。手の空いているエージェントを複数人手配してもらうこと。武装車両をエントランスに配車、護衛用ドローンを先行派遣すること。]


 好きな先輩ではないが優秀な先輩からのアドバイスに林田はすぐに動く。間に合うだろうか…。幼い子供たちを狙う誘拐犯への憎しみに焦りと不安が混ざり込んでいく…。



 誘拐犯が生廃墟内を素早く捜索しながら上階へと登ってくる。俺はすでに最上階から屋上へ繋がる階段に待機していて、誘拐犯との距離の差は残り二階層しかない。ビル内の照明と音響は前世の古きよきバブル時代のような喧騒を生み出している。まあ俺は当時学生だったからそこまでいい思いをすることはできなかったが。


 そんなことを考えているとプログラム航行を終えたストリボーグが戻ってきた。俺が結びつけた衣服は器用にマニピュレーターで外されており、一階層下には俺の匂いが程々に漂っているはずだ。当初の予定では相手が捕獲を考えているうちにこの一階層下ですれ違って下層へと逃げ込みたかったが、相手は殺傷前提に計画を変更したため、諦めるほかなかった。あとは追い詰められた後に屋上からドローンに乗って飛び去るしか逃げ道がないが、これも今となっては危険である。相手には鳥類に変身できるニンジュツ使いがいる。銃器の類を隠し持っていない保証もない。空に出た途端に撃ち落とされる可能性が高い。俺のドローンがクアッドコプターでなく、有翼型なら撃たれたり撃墜されても軟着陸ができたのにと、マクサコフに対してカスタマークレームを送信しておく。思考入力だから時間をかけているわけではない。無駄行動ではないはずだ。多分。


 誘拐犯との彼我の距離が一階層に縮まった。こうなった以上俺は屋上に逃げるしかない。屋上にも少しは隠れる場所はない。音が出ないように慎重に扉を開き、屋上へと出ると、濁った空、星の見えない夜。遠くまで見渡せる高さなのに、街の明るさがそれらを覆い隠す。まるで大きな宝石の中から外を観れいるようなそんな光景が広がっていた。そういえば今世でやあ系をみたことなんてなかった。景観を楽しむ余裕も外出する自由もほとんどなかったから。


 そんなことを考えていると、遠くから胡麻粒ほどの小さは飛行体の反応が複数近づいてくる。識別コードが表示されており、マクサコフの警備部隊のタグが付けられている!救援だ!俺は最後の賭けに出る。唯一の戦力であるストリボーグを警備部隊のドローンの元へ急行させる。


[緊急通報!緊急通報!こちらはマクサコフ機械公社エリート人材育成援助プログラム参加者、神崎孝!現在位置で所属不明のニンジュツ使いからの追跡を受けている。追いつかれるまで残り数十秒しか時間がなく、接近してからの攻撃では間に合わない!俺のグライアイⅢでの視線誘導で射撃誘導を行う!至急冷凍弾頭を発射されたし!!]

 急行させたストリボーグなら通信が届くはず。こんな無理が通るだろうか。この世界に来て初めて神に祈る。ミクリマ神よ!仕事をちゃんとするから助けてくれ!


 果たして願いは通じた。


[こちらマクサコフエージェント、ポチェレーヴィン!射出開始!有効半径八メートル十二発!優秀な後輩の無事を祈る!誘導をカウント中まで行い、今の位置に近い端から飛び降りろ。]


 マクサコフのエージェント、ポチェレーヴィンから連絡があるとともにグライアイにカウントダウンが表示される。二十秒間だ。エージェントの冷静な声に俺も落ち着きを思い出す。


 同時にニンジュツ使いたちが扉をくぐってくる。


 「かくれんぼは終わりだ。クソガキ。バラバラにしてうっぱらってやるから覚悟しろ!」


 勝った気でいるのか、一人しか向かってこない。俺はグライアイから屋上から屋内への唯一の扉をロックし、時間を稼ぐ。


 「僕の父さんはI&Kの職員だぞ!僕にこんなことしていいと思っているのか!」

 できるだけ近所のクソガキの真似をしてみる。この発言に驚いたのか、迫ってきた男は足を止め手振り返り、確認を取ろうとする。


 「関係ないんだよ。俺らの上はI&Kじゃないんだからな!」

 「おい!話し過ぎだ!!」


 いい言質をもらえた。そしてもう時間だ。


 「おじさん勘違いしてるよ。僕がやってたのは、かくれんぼじゃない。『氷鬼』だよ!」


 そう言って俺は屋上から飛び降りる。飛び降りる間際、ニンジュツ使いの腕が蛇のように伸びて俺に噛みつこうとしたが、強化した肉体で渾身の蹴りを放ち、難を逃れる。


 直後、十二発のミサイルが生廃墟の直上から降り注ぐ。気づかれないために上空から迂回して来たのだ。ミサイルは俺がグライアイで誘導したので相手にとって至近弾になったはずだ。屋内への扉も施錠してある。



 あとは俺がどう助かるかだけだ。




お読みいただいた方、ブックマークを評価してくださった方。御礼申し上げます。

飛び降りた孝がどう助かるのか。楽しみな方は是非ブックマークを!

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