表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイバーパンク転生〜企業戦士となって信仰を捧げる〜  作者: 石丼
サイバーお受験戦争
25/70

血の力

選ばれたのは血液でした。

 俺はどのサイバネティクスを選ぶか散々悩み親を待たせた末に、血液型サイバネティクス『クローフィー』を移植することに決めた。俺の気にしすぎであるとも考えたが、管理官が二回訪問していることや林田の言動が気になる以上、マクサコフへの依存度が高いサイバネティクスを使うことで、信頼の構築につなげるのは効果的な方法であると信じたい。

 

 移植とは言ったが、血液中にクローフィーのナノマシンを注入し、足りなくなれば携帯注射器や経口補充剤(俺はまだ錠剤を飲み込むのが苦手なため座薬である)を使えばいいだけとのことで、短時間で移植手術は終わった。グライアイから機能を選択して実行することができるため、専用のインターフェースや機器を体に身につける必要はなく、便利なものだった。

 医師からは拒絶反応が強いサイバネティクスであることを注意されたが、移植後の検査も全く拒絶反応や炎症もなく、注射がすごい痛かっただけである。泣かなかった俺を両親は褒めてくれた。


 帰宅してから早速クローフィーでどんなことができるのか取扱説明書を確認してみた。肉体強化・環境適応ユニット「クローフィー」は名前の通り、肉体の強化と環境に適応するための機能を備えている。

 免疫強化能力を起動すれば未知の病原菌や毒物であっても血液中で排除することが可能であり、ほとんどの感染症に特効薬がある時代とはいえ、病気や中毒のリスクを大きく低減させられるのは魅力的だ。

 肉体強化能力は、血中のナノマシンを筋肉や神経付近へ移動させ、ほんの小さな電気刺激を与えることで短時間身体能力を向上させることができるが、どちらかというと補助的な機能であり、ニンジュツや強力な肢体型のサイバネティクスの方が有用である。しかし、見た目に強化してあることがわからないということや、子供では肢体サイバネティクスやニンジュツを使えるものは少ないという固定観念にをつけこめる可能性が高い。

 体温調節機能は雪原や砂漠などの極限環境において有用な機能で、血中のナノマシンが体温を調節してくれるため熱によるダメージを抑えやすい。レポートでは冷凍庫内で一ヶ月生活することも可能だそうだ。これがあればアイスクリームをどれだけ食べようが頭痛になることはありませんとか、しょうがない売り文句も書かれていた。もっと製品の長所を売り出せよ…。しかしこの温度調整機能は欠陥もあり、人間の体はそもそも適温でないと機能しない部分もあるため、極端な温度変化はするべきではないようだ。あくまでさまざまな環境下で健康を守る程度だと考えておこう。


 ところでクローフィーを導入したことで、俺には失敗が許されなくなった。受験に失敗すれば継続的なメンテナンス補償がなくなるため、クローフィーはただの血中の不純物でしかなくなる。無事に排出されれば問題はないとは思うが、医者のあの発言があった以上、そうは問屋が卸さないだろう。


 グライアイⅢ、ストリボーグⅤ、クローフィー。そして五十三歳になってしまった俺の精神力。この四つが俺の今の武器だ。これらを十分に活用して、約2年後にある公立幼稚園の入試に備えなければならない。


 余談だが、クローフィーの体温調節機能は俺が飲むためのミルクや離乳食を人肌に温めるのに便利で母は喜んでいた。父は家に帰ってくると俺を自分のベットに放り込んで遊ぶように誘導するようになった。絶対に寝る前にベッドを温めておいて欲しいだけだろう。お前のためじゃなくて母のためにやるんだからな。


 クローフィーの身体能力強化は身体全般に及び、特に握力を強化できることは俺の可能性を広げてくれた。クローフィーで握力を強化することでストリボーグに掴まって飛行することができたのだ。縦横無尽にとは言えないが自分で歩くよりははるかに高速で便利なため、頻繁に使用してはクローフィーのナノマシンを補給していたらまた松下管理官に訪問されてしまった。おおかた補給量や使用状況を監視していたのだろう。初老の男が一年近く赤ん坊の体で引きこもり生活をしていたのだから多少ははしゃいでしまうのも無理はないだろうと、相手に理解してもらえない愚痴を忘備録に書き残しておいて、松下管理官には無駄遣いしてごめんなさいと塩らしくしておいた。営業マンとしての力は謝罪の時に現れる。相手にも罪悪感を覚えさせることが大切である。


 「松下お姉さん。クローフィーはとっても便利ですね。マクサコフは素敵な会社だと思います。受験がんばりますね。」

 と初めて肉声で話したが、松下管理官はこれをどう扱ったものかという困惑した表情を見せていた。互いにある程度の意思疎通ができている証拠だろう。


 「うーん、そうね孝くんみたいに将来有望なお子様がエージェントになってくれると助かるわ。でもあんまり暴れん坊さんだと首輪をつけなくちゃいけないですからね。」


 お互いに共通認識を持てているようで何よりだ。俺は松下管理官にワンとひと吠えしてドローンに尻尾を振らせておいた。お受験まであと2年。戦争の準備はもう始まっている。



 

次回忘備録です。

拙作を気に入ってくださった方はぜひブックマークをお願いします。

お便りもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ