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神前孝 二十三歳

魅力的な導入が欲しいなぁと思って書いてみました。

機械と魔法とニンジュツのカオスが織りなす未来世界をお楽しみください。

次からが本編ですが、転生まで時間がかかりますので、

ゆっくりとお楽しみいただけると幸いです。

 俺は神前孝二十三歳、マクサコフ機械公社に勤める営業マンだ。前世でも営業マンをしたいたが、今世でも諸事情があって営業マンになることとなった。今日は俺がマクサコフの運営する学園に入学してからちょうど二十年。感慨深いがまずは仕事をこなさなくてはならない。

 いつの時代でも変わらないインターフォンを押してビルのフロントに連絡を取る。


 「こんにちは!マクサコフ機械公社営業部の神前と申します。先日ご連絡した商品の受け取りに伺いました!」

 俺は今日一日分の精神力を込めた笑顔で要件を伝える。無駄になるのはわかっているんだ。だからこそ全力を込めるのだ。


 「そちらさんとは取引しないと、結論が伝わっていると思いますが。お引き取りください。でないと、こちらも相応の対応をしますよ。」

 

 知ってます。だから交渉ではなく、「受け取り」に来たんだよ。

 

 「いえいえ、料金は『既に振り込んでおきました』ので、回収だけさせていただければと思います。案内は必要ありません。今から取りに行きます。」

 こうなることはわかっていたので、俺は周囲に展開させていた四台の戦闘用ドローンを移動させる。


 [防御ドローンは電磁シールド展開準備。索敵ドローンは音響センサーと振動スキャナを起動。俺の眼球型サイバネティクスと連携開始。攻撃ドローンは視界内に収めた対象のうち敵性認定を受けたもののみ攻撃、そのほかは迎撃のみ許可。]

 

 俺の眼球に埋め込まれた機械が光を帯びる。熱を持ちながらも各種機器と接続し、ドローンとの情報共有を瞬時に行う。


 ビル内の生体反応は八人。防衛装置はなし。「商品」は四階の机上。にしても、「先に金を送っといたから商品受け取りに行くわよろしく!」ってのは営業とは言わないと思うんだがね。これも仕事だから仕方ないか。


 目の前にあるビルの入り口が、ドローンから放たれたミサイルによって粉砕される。同時に俺は魔法を発動し、体に纏っている営業スーツを「強化」して身体を保護する。

 屋内に入ると歓迎の気持ちを目一杯に込めた銃弾が押しつけられた。お構いなく。すぐに帰りますので。


 防御用ドローンが展開する電磁シールドによって空中で静止させられた弾丸たちは運動エネルギーを失って地面に落下する。俺はニンジュツを発動して身体の組成をより強力なもの変化させ、吹き抜けを飛び越えて二階へ移る。


 「こんにちは!マクサコフ営業部の神前です!よろしくお願いします!」

 もう笑顔はいらない。友好的な対応はしたという記録を残すべくおざなりな挨拶のみを先に述べて、そのまま殴り倒す。

 「はい、こんにちは。」「どうも。こんにちは。」

 出会うたびに相手の「社員」を打ち伏せる。今後とも良い関係を築き、サスティナブル(持続可能)な搾取経営(地獄)を続けるためにも、殺しは御法度である。


 四階の社長室に到着すると、屋外で索敵をしていたドローンから室内の情報が送られてくる。内部の社員は五人。武装済み、室内の遮蔽は構築済み。こちらの存在に気付いたのだろう。部屋の中から声がかけられる。


 「貴様!!こんなことをしてタダで済むと思うな!あと二分もしないうちに民間警備会社の戦闘用ドローンが到着する!それまでの命だ!」


 「そうですか、それってうちの会社のドローンより強いんです?そんなことはないと思うんですけど。せっかくなら、次はうちの会社の警備保障に加入することをお勧めします。これにしておけば、今日こんな事になってなかったと思いますし。今ならお安くしておきますよ!一ヶ月ごとのサブスクサービスがお得でし…」


 返信は契約書でなく銃弾でいただけたようだ。ドアが穴だらけになる。シールドだけで受けきれない量だと困るため、魔法で対応しよう。

 「空気よ。そのアレテーを引き出せ。」

 俺の言葉によって周辺空間内の空気抵抗が「強化」される。こちらの弾丸も届かないが、相手のも届かない。

 「ニンジュツ、永眠香。」

 肺一杯に吸い込んだ空気を催眠ガスに「変化」させて室内へと吹き込む。屋内から鳴り響く銃声はだんだん落ち着き、ついには鳴り止む。念のために索敵ドローンからの情報を精査して安全を確保する。部屋に入ると、身なりと恰幅のいい男性がいたため、そいつを起こして話をする。


 「こんにちは!マクサコフ営業部の神前です!商品の方は無事にいただきました!お取引ありがとうございます!マクサコフ名義で勝手に振り込んでおいた代金を後で確認しておくよう、よろしくお願いいたします。今後ともご贔屓によろしくお願いいたしますね。逃げたら殺すからな。」

 男性は素敵な取引に感無量なのだろう。目から涙を流して喜んでいらっしゃる。両者が幸せになれる取引。なんていい仕事だろうか(反語)!



 「それと、万一このような取引が辛いなぁとか。救いが欲しいなぁ。って思った時は、マクサコフではなく、是非こちらへご連絡ください。融資相談、外国への渡航の手配、その他諸々請け負わさせていただいております。会員への無理な集金は行っておらず、一日三回の礼拝から、安心してご利用いただけます!」


 そういって俺は一枚の名刺を男性に差し出した。

 

 『ミクリマ教/教祖 神前孝 』

 

 「人類みんなで祈りましょう。幸せになれるように。」

 

 それでは!と一言だけ言い残して、俺はビルを脱出した。商品を家に持ち帰るわけにもいかないため、今日は直帰できない。さっさと本社へ戻って今日の営業詳報を作って部長へのゴマスリをするとしよう。営業マンはいつの世も大変な仕事だ。


一話目がなんとなく気に入っていただけた方はブックマークや評価、いいねなどよろしくお願いいたします。

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