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暗殺ヘン  作者: 林 広正
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07



 そして今日、事件が起きた。俺はそれを、街行く誰かに聞いたんだ。

 嘘だろ! って言うのが本音ではある。けれど、そうきたのかって思いも少しはあった。

 これからどうなるんだ? 俺は頭の中のモヤモヤを整理する為、その日はいつもより多くの声に耳を傾けた。俺は他人の意見を真剣に聞くことが冷静さを保つ一番の方法なんだと経験から学んでいる。

 元総理大臣が銃撃された。しかも心肺停止状態だと言う。犯人はその場で拘束されたらしい。

 情報はなかなか進展しない。散弾銃を使用していたらしい。犯人は元自衛官のようだ。名前も公表された。発泡は二度あった。その他の被害者はいない。そして総理大臣は死亡した。

 その日に俺が知り得た情報はそれだけだった。それは家に帰ってから見たニュースの情報そのままでもある。

 犯人の名前を聞いた俺は安心していた。あいつじゃなかった。そりゃあそうだよな。あいつはそこまでバカじゃない。テレビに映る犯人の顔を見てまた安心する。

 ・・・・けれどなんだこの違和感は?

 そいつの顔はなにかがおかしい。イカれた殺人犯だからなのか? 俺はこれまでにあんな表情の人間を見たことがなかった。

 家にいると家族が気を使う。俺は基本仕事を家には持ち込まない。考え事は外に限る。

 俺は妻と子供達を抱き締め、夜の街に引き返した。こんなにもどんよりとした雰囲気は珍しい。人気やその実態はともかくとして、流石は一国の元総理大臣だよな。

 この街では多くの表情が行き交っている。その表情を見ればその人と成りは想像ができる。外れることはあっても、なんとなくなにかを感じられるんだ。

 けれどテレビの中の殺人犯は、まるで掴めない表情をしていた。あれは人形かも知れない。本気でそう考えた。

 まぁ、考えているだけじゃあなにも解決はしない。俺は取り敢えず動くことにする。このままここに座って時間を過ごすのはどうにも性に合わないんだ。せっかく引き戻って来たっていうのにな。まぁ無駄な時間っていうのは時に冴えた閃きを与えてくる。

 俺は真っ直ぐあいつの家に向かうことにした。この閃きは家の中じゃあ生まれない。あいつに会うことの意味を、俺まだ見出せてはいなかった。

 俺の頭の中にはずっとあいつの顔が浮かんでいた。そして時折、殺人犯の顔が重なってくる。散弾銃に総理大臣。元自衛官。キーワードが三つも重なるなんて偶然とは思えない。

 あいつの家は暗かった。当然かも知れないよな。夜中に起きている方が少数派だ。時計の短針は真上を越していた。

 けれど俺は、あいつがそこにいるのなら当然のように明かりが灯っていると考えていた。

 暗いっていうのは、そういうことだ。

 失礼とはいえ念のためだ。俺は玄関まで行きチャイムを鳴らした。家の中に気配はない。ノックもしてみた。寝ているから気がつかないっていう雰囲気ではなかった。家が死んでいる。そう例えれば分かるだろうか? 少なくともこの数日間は誰かが暮らしていたとは思えなかった。

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