表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗殺ヘン  作者: 林 広正
11/14

11



 世間の流れがどんなに変わったとしても、正直俺には興味がない。哀しいけれどそれが現実なんだ。

 俺はもう退屈でどうにかなりそうだった。事件性のある会話が全く来ないのはいいとしてもだ。あいつへと繋がる情報が待てど暮らせど来ないんだよ。

 正直俺は何度もその側近に連絡を取ろうとしては我慢をしていた。

 それもまぁ、もうすぐ報われるんだろうな。遠目からでも分かる雰囲気。奴が来たってことは、そういうことだ。

 駅と一体化しているデパートの裏口から姿を表した奴は、その瞬間から物凄い存在感を示していた。その姿に目を奪われたのは俺だけじゃあない。その瞬間に道行く多くの者が振り返っていた。

 これを受け取って下さいと、奴は裸のままの小切手を手渡した。

 それほど大きな額ではなかったが、場所はわきまえてほしいものだ。せめてみんなと同じように封筒にくらいは入れるべきだよ。前回来た時はそうだったしな。

 まぁ、状況が違うってことだ。

 まだ完全ではないけれど、奴らの思惑通りにことは進んでいる。余裕の態度なんだろうな。今まで隠していた存在感を存分に発揮しているのもその証だ。

 姿形は変わらないのに、不思議だよな。俳優のオンオフがこんな感じなのかも知れないと思ったよ。まぁ、俺の知っている有名人でそんな芸当ができる奴はいないがな。そこそこのスターを知っているが、オンもオフも変わらず存在感がダダ漏れだ。

 奴は決して座らない。俺を見下ろすのが好きなようだ。

 それで、計画通りにことは進んだってことか?

 見上げながらそう言う俺を、奴は嘲笑するかのよな表情を浮かべてこう言った。

 あなたの助言通りに行動をしただけですよ。あなたはやっぱり期待以上でした。

 褒められるってのは嬉しいものだ。

 けれどまぁ、素直に笑顔なんて見せやしない。

 ・・・・で、あいつはどうなっている? 今回の仕掛けは理解した。だがあいつをどうするつもりだ? まさかこのままってわけはないだろうな?

 奴は俺を嘲笑うのが好きなようだ。街行く女子はそんな奴の表情をウットリ眺めているけれど、俺にとっては寒気しか感じない。

 そこは任せて下さいよ。あの顔にピンと来ないなんてあなたらしくありませんね。まぁ、あの表情では無理もありませんが。

 ぅん? テレビ画面で見た犯人への違和感。その答えがその言葉だってことは気が付きたが、あれは誰だ? 俺はそんな助言はしていない。

 きっともうすぐ、全てを理解する日がきます。まぁ、その日まで妄想を膨らませて待つのも粋ですよ。

 ふんっ・・・・ なかなかに面白い奴だよ。立場がなければ友達にもなれたことだろうな。

 この次は是非私服で参りたいと思います。そのときはそこの隣に座りたいものですね。

 俺はほんの少し目を見開いてから頬を緩ませて頷いた。

 では! なんて言いながら右手を軽く上げる仕草まで絵になる。キャアーなんていう悲鳴が聞こえてくる程だよ。全く、絵になる奴ってのは憎いものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ