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暗殺ヘン  作者: 林 広正
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01


 俺には出来なかった。

 あいつを思いとどませるのが、俺の仕事だったんだ。

 あいつがしたことは、少し道を外れているとも言えなくはない。けれどな、この世界が暴力の上に成り立っていることは確かなんだ。完全な間違いだったとは言い切れないのが現実だとも思う。

 俺はただ、あいつを救いたかった。

 それが出来なかった俺は聞き屋失格だよな。


 横浜のこの場所で、俺は聞き屋として生きてきた。駅前の一角を陣取り座っている。ただそれだけなんだがな。

 俺が座っていると、見知らぬ誰かが話しかけてくる。俺はその話を聞くのが好きなんだ。適当な相槌を打ち、ときにはアドバイスを贈る。無言で微笑むだけってときも多い。

 けれど俺はお節介なんだよ。その話に事件性やらなにかしらの問題を感じると身体が疼いてしまうんだ。調べずにはいられない。

 最初は俺の出しゃばりでしかなかった。そもそも俺は暇潰しにこの場所を陣取り座っていたに過ぎないからな。それがたった一つのきっかけで聞き屋になってしまったんだ。しかも始めはそれさえ趣味のようなものでお金にはならなかった。幾つかの偶然と俺の好奇心によって報酬を得られるようになっているだけで、今でも正式な職業として旗揚げしているわけじゃないんだけどな。

 俺の肩書きはプー太郎っていうのが真実だ。まぁ、税金対策として探偵事務所の登録をしているってことは内緒だよ。稼ぎはきちんと申告しなければならない。けれど過大な税金には不満があるのも事実なんだよな。

 ここに座っていると、色んな輩が俺に話しかけてくる。大抵はつまらない世間話やよくある悩み相談だ。俺はそれを聞くことが好きなんだよな。けれどそれだけではお金にはならなかった。あるとき事件性のある相談を耳にしたことで俺のその後が変わったんだ。

 俺は勝手にその事件を調べて解決した。すると、その相談者が俺にお金をくれた。分厚い封筒を触ったときの感触は今でも忘れていない。

 その後に俺の噂が広がり、あからさまな依頼も増えたんだ。俺はそれを解決することで報酬を得ている。特に決まった料金なんてない。相手の気持ち次第だ。俺のお節介で解決した事件も多いんだが、そんなときにでも報酬を貰えることは多い。噂っていうやつは、心強いこともあるってことだ。

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