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1. 転生者殺し

「『炎堕球ヴォラ・カイガス』、『狂風刃ゼヴァレス』、『付加魔法・破壊(サレント・ミラ)』」


 全身を白金の鎧で覆った金髪の男が詠唱を開始する。

 右手に握られた片手剣には付加魔法の効果で紫色の文字が浮かび上がり、左手に具現化された魔法陣から打ち出された無数の風の刃と火球は自然現象と見紛うほどの相乗効果を生み出している。


「ひゃー、転生者ってのは魔力が尽きたりしないのかね。

 あんな大魔法、ぽんぽん撃つもんじゃないよ」


 彼と相対するは、背中から奇妙な白い翼を生やした男である。

 鎧の男と同じく、この世界では珍しい黒髪を持つ翼の男もまた、前に突き出した両手から魔法陣を生やした。


「『原始武現・斬式(アガミリ・レサル)』」


 魔法陣から両手剣の形をしたエネルギー体が生み出される。

 たった今具現化したそれをまるで数十年連れ添った相棒のように扱いながら、男は火球を切り裂き、鎧の男に接近していく。


「くっ……!『光陽群パルメティオ』ッ!」


 手を突き出す動作に意味はあるのかないのか、左手を突き出した鎧の男の背後に無数の光球が現れる。


「眩しいな、それが転生の時にもらった固有魔法ってやつかい?」


 光球を見ても接近を止めない翼の男に、むしろそれを好機と見たのか鎧の男が魔法を発動。


「貫け」


 孔雀のように展開された光球から、男の合図と同時に目映い光線が目にも止まらぬ速度で発射される。

 

「そりゃさすがに斬れねぇ。『原始武現・防式(アガミリ・ケタル)』」


 数本を避けながら翼の男が詠唱を開始するが、その魔法の発動を確認できる前に光線が着弾。

 夜中の町外れの丘の上には似つかわしくない閃光と轟音が鳴り響いた。


 数分間反撃を警戒していた男だったが、舞い上がった砂塵が晴れると、そこには既に翼の男のいた痕跡さえ残っていなかった。


「…………はぁ、やったか」


「なわけないでしょ」


「!?」


 背後からの声に剣を振るう男だが、空を切った片手剣はヒュンと虚しい音を立てるだけだ。


「これで終わりかな」


「待て!」


 いつの間にか再び背後に回っていた翼の男の剣が、文字通り首の皮1枚切ったところで止まる。


「お前は一体何者だ。何が目的なんだ。

 俺はただ勇者としてこの世界を救っていただけなのに──」


「この世界を救う?そりゃ奇遇だな。俺も同じ目的だ」


「なら尚更なぜなんだ!?

 俺は女神様からこの固有魔法と固有スキルをもらってこの世界に転生してきた!きっとお前の力にもなれるはずだ!」


「まずお前じゃあ弱すぎて話にもならねぇ。

 まあ────その女神様とやらを殺してくれれば考えてやらないこともねえぜ」


「は?それってどういう────」


 ゴトン、と。言い終わる前に男の首が落ちた。

 たった今1人の勇者を殺した翼の男は、通信魔法を起動させる。


「あーもしもし。『勇者』は潰したぜ。あとはただの素人高校生の集まりだ。勝手にそこらの魔物にやられて死ぬだろうよ」


 男は耳に手を当て話しながら勇者の死体に火をつける。

 その作業も慣れたもので、数秒もしないうちに死体は黒炭となって、誰かの判別もつかなくなってしまった。


「あれ、もしもし?神様?もしかしてお取り込み中……って訳でもないよな」


 ブツブツと呟きながら意味もなく辺りを見渡す男。


「仕方ねえな……転移魔法で直接聞きに行くか」


 男が右手を地面にかざすと、足元に肩幅くらいの大きさの白い魔法陣が現れる。

 光る魔法陣を見て、男は首を傾げた。


「なんか魔力の流れがおかしくないか?…………ま、こんなもんか」


 脳内に生まれた悩みを即座に自己解決すると、居眠りでもするかのように目を閉じて呟いた。


「『天界転移クランペリューク』」


 全身が分解・再構築される馴染みのある感覚。


 いつも通りの不思議な感覚に、男は転移魔法が無事成功したのだと安堵する。





 そして、次に目を開けると、男は誰もいない真昼間の草原に立っていた。

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