とある男の前口上
時は未来――
と言いましても、百年や二百年では御座いませぬ。これは一千年も先の世の物語なんで御座りまする。
一千年と申しますと、この世も変わるもの、民主主義だの社会主義だのという政治思想は、とっくの昔に滅びちまいましたし、いやはや、地球を汚すばかりの科学技術も大方は消え去って、遺伝子技術のたまものか、ヒトの種さえ、平成の世とは多分に異なりまする。なにせ、首以外はとったりはずしたり自由自在なんですぜ、旦那。今じゃあ到底考えられねえ赤い目や金の目をした人間もうようよいるし、ここは地獄か魔境の地か。
いやいや旦那、この時代じゃあこれが当たりめぇ。地球のどっかの国の、平和な日常なんでさあ。
てまえが今から紹介致しまするは、天下一とたたえられた盗み屋と修理屋の物語。盗み屋と申しましても、小判大判宝玉の類なんざ盗りゃしねえ、盗むのは人の体――、そう先程も申しましたとおり、この時代は、指も手足も取り外し可能なんでさあ。盗ったもんは病人、老人の移植用やら、美容整形用やら、高ぁく売れるんで御座いやすよ。
ちなみに修理屋てぇなあ、平成の世で言やあ医者みてぇなもんでさあね。
始まりは、まだ若ぇ男女のいろごとの場面から。
おやおやそこのあんちゃん、そんな嬉しそうな顔するもんじゃねえですぜ。
おっと買い物帰りのねえちゃんも、あめ玉しゃぶったそこンガキも、魂だけのばあちゃんも、寄ってらっしゃい見てらっしゃい、楽しい楽しい未来絵巻の始まりでぃっ!
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