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−25〜−18話:武器

 目が覚めた俺は、いつもどおり朝日に体を照らされながら胸を押さえた。

「俺の中に……あんなやつがいたなんてな」

 俺はガロンの姿を頭に思い浮かべ、心の変な感じを漏らした。


「今日はどんな指令なんだ?」

 俺は、前日の中途半端な修行にまだ納得がいかなかった。

 俺は指令の書いてある紙・指令紙(しれいし)って呼ぼうか。を、探した。

 しばらく部屋の隅々を探したが、どこにもそれらしきものは無かった。

「? 無い」

(もしかすると……)

 もしかすると、昨日のトレーニングの続きをやるのかもしれないと思った俺は、部屋を出てトレーニングルームに向かった。

 

 トレーニングルームに着いた俺は、急いで中に入った。

 だが……辺りを何度も見渡したが、ここには誰もいなかった。 

「誰も……いない」


 その後、悩みに悩んだ俺はやっぱり自分の部屋に戻ることにした。

 誰かいないか探し回っているうちに部屋の中央まできていた俺は、顎に手を当てながら扉のほうへゆっくりと歩いて向かった。

 考え事をしながら歩いていると……


「わっ!」

 突然俺の前に出てきた誰かにぶつかった。

 そこまで痛くは無かったけど、意識はしてなかったうえでの突然の衝撃は大きかった。そのせいで俺は体のバランスを崩してその場にしりもちをついた。


「わりぃ、痛かったか?」

 俺はしりもちをついたまま顔を見上げた。

 するとそこには、俺が機関に入りたての頃、声をかけてくれたベゴンが立っていた。

 ベゴンは慌てて俺のみを案じ、手を差し伸べてくれた。

 俺はその手を握り、起き上がった。


「ありがとう」

「いや、まぁ今のは俺が悪かったろ」

 ベゴンは少し顔赤くして、右頬をポリポリと掻いた。

 恥ずかしがってるのか?

「っと、そんなことより、お前なんでココにいるんだ?」

 ベゴンはそう俺に聞いてきた。

「え……それが、今日は部屋に修行の居場所とかが書いてある紙が無かったんだ。で、どこにいけばいいのか分からなくて、ココに来たんだ」

 俺は理由を正直に言った。

「なるほどな。まあ、教えといてやる」

「?」

「指令の無い日ってのは、それ自体が指令なんだ」

 俺はますます意味が分からなくなった。

「つまり……自分で見つけ出せって事だ」

「自分で見つけ出す……?」

 

 俺がそう聞くとベゴンは少し間を空けて、腰に手を当てて一つため息を吐いた。

「いつまで覗いてんだっよぉ!」

「えっ!?」

 ベゴンは突然体を反転させて、手からを水の塊を扉に向けて放った。水の塊は扉に直撃しただけで、ドアが壊したりはしなかった。

 よく見ると扉がほんの少し開いている。

 すると、扉が全開して見たことの無い男が入ってきた。でもその男は組織の服を着ているから“(テネブラ)”の一員なんだろう。

「やれやれ、そんなに怒ることは無いだろう」

「……何のようだ」

 その男はドアを閉め、俺たちのほうに向かって歩いてきた。


「まあ、そこの小僧を見に来たって感じだな」

「え……俺を?」

 男は俺を指差し、そう言った。

「様子を見にきたんだ。今日のお前の相手は俺だからな」

「ばらしちまっていいのかよ?」

 ベゴンが男にそう言った。

「退屈してたとこだ。しかも今日の修行はなるべく時間をかけた方がいい」

 男はそう言うと、指をパチッ!と鳴らした。

 すると、トレーニングルームの壁全部に結界のようなものが張られた。その結界は紫がかっていてずっと見ていたら吸い込まれそうな感じがする。


「おい! 結界なんて張ったら俺でられねぇじゃねぇかよ!!」

「ふっ。今日の修行はな、お前も合同なんだよ」

「!」

 ベゴンと男のそんなやり取りをただ呆然と見ていた俺に、突然背後から何かに体を捕まれた。

「うゎ!」

 俺を捕えていたのは、見たことも無い化け物だった。

 高い鼻に鋭く尖った赤い目、体全体は細く、その手には木で出来た棍棒が握られている。この化け物は棍棒を持ったまま、俺の脇の下から手を通し、体を捕えていた。

「なんだこいつ……」

 俺は命いっぱい力を入れたが、化け物の力は予想以上に強く、ビクともしなかった。


「ゴブリンか。お前が出したのか?」

 ベゴンが俺のほうを1回見た後、男にそう言った。

「あぁ、この結界には守護獣を呼び出す力がある。とまぁ、下級しか来ないけどな」

 

 俺は2人の会話を何となく聞いたまま、暴れていた。足をばたつかせたり、肘で化け物の体を打ってみたり。けど、やっぱりびくともしない。


「レグオズ! 心の力を解放しろ。お前にはもうその能力(ちから)がある」

 男がそう言ったのを聞いて、俺はガロンの事を思い出した。

(そういえばアイツ、俺と一緒に戦う。みたいな事言ってたよな)

『そうだ』

 俺の中でガロンがそう返してきた。

(ガロン!)

『イメージするんだ。お前の理想とする、敵を滅却(ころ)す武器は何だ?』

(敵を滅却(ころ)す? そんなの、普通に剣とか銃とかじゃないのか?)

 俺には、滅却(ころ)すということが良く分からなかった。過去の記憶を失った俺には、わからなかった。だけど、滅却(ころ)すと言う事がどういうことかは分かっていたから、この答えにたどり着く事が出来た。

『そうか、決定だ』

(え?) 

 

 すると突然、俺の体が金色に光りだした。なぜか眩しく無い。この光に驚いたのか、化け物は俺の体を離し、その場から数歩後ろに下がった。


「出るか」

「あぁ」

 ベゴンと男も、俺のこの摩訶不思議な状態を只じっと見ている。


 光はだんだん収束していき、そしてまたその光はまた大きく輝き、俺の体全体を包んだ。

「どうなるんだよ、これ」

 俺はついそう漏らした。

 光は徐々にまた、収束していった。

 そして……光は一度最大の大きな輝きを放つと、一気に爆発するように弾けとんだ。

 さすがに驚いた俺は、目を思い切り瞑った。


 少しして目を開け、体を見渡すと……

「!」

 俺は鞘に収められている大きな剣を背中に背負い、組織服の腰部分に拳銃を二挺(にちょう)装備していた。体には剣を装備するための留め具も付いている。

 俺は鞘からその剣を抜いてみると、その威圧感に呑み込まれそうになった。白く染まった柄、両端に黒い髑髏の頭の付いている黒い鍔、銀色と漆黒に光る刀身。どれをとっても、その迫力はとてつもないものだ。 

 腰についている二挺の拳銃も普通とは違っていた。タイプとしては一般的な自動拳銃だが、銃口(マズル)は上下2つあり、銃身(バレル)は普通と比べて少し長く、奇妙な模様が描かれている。グリップ部分は太く、ココにも奇妙の同じ模様が描かれている。よく見るとその模様は、髑髏の頭から茨のようなものが四方八方に散らばっている絵だ。二挺の拳銃は一本が全体的に黒く、もう一本は全体的に白い。


 俺は、自分の突然の変化に心を惑わした。

「これが俺の武器……」

 何ともいえない心境に浸されていると……


「来るぞ、後ろだ! 小僧!」

 男の大きな声で、俺は目を覚ました。俺の心は今まで別の世界に行っていたのかもしれない。

 

 俺はとっさに後ろを振り向くと、化け物が棍棒を振り上げ、俺に向かって跳び上がってきていた。

 化け物は鬼のような形相で、棍棒を俺に向かって振り下ろした。俺はこの突然の出来事に体が動かせなかった。


「やばい!」

 目を瞑ろうとしたその時、


『剣を振るえ!』


「!」 

 ガロンが俺にそう叫んだ。

 俺は言われるがままに手に握っていた、剣を一閃。右から左に振るった。もちろん、目を瞑ったまま……


 俺は恐る恐る目を開けると、そこには体が真っ二つに裂けたあの化け物が床に横たわっていた。俺の剣には血が付いている。黒い刀身だから良くは見えないが、確実に血がべっとりと付いている。

「え……。俺が、やった……のか?」

 俺は自分のした行為が信じられなかった。自分がこの手で生物を殺めた。俺はショッキングな気分になった。

 その時……

「! うっぁ…!!!」

 激しい頭痛が俺を襲った。俺は握っていた剣を地面に落とし、頭を抑え、その場にうずくまった。


「お、おい大丈夫かよ!」

 ベゴンが俺に何かを言っている。だけど、よく聞き取れない。

 

 俺の脳裏で何かのイメージがよみがえる。


―――


「止めろ! ゼロ!」

「黙れ! あんたになんか命令される筋合いは無い」

 俺が大人の男と話している。

 この怖い口調のやつが俺? そんなのありえない。しかも、ゼロって誰だ? 俺の本当の名前? 違う、これは俺じゃない。でも、この顔は俺だ……!!


「止めなさいゼロ。母の言うことが聞けないの?」

「あんたを母親と思ったことは一度も無い!!」

 今度は女の人はなしている。酷いことを言ってる。女の人はショックだったのか、倒れてしまってる。

 

 それよりここはどこなんだ? 

 城? 男と女の後ろに城のようなものが見える。周りには血まみれの兵士が大勢……


 まさか、俺がやったのか?


 嘘だ……


―――

  

「! ……ココはどこだ?」

 俺は静かに目を開けた。頭痛はもう治まってる。

 俺の横に誰かが立っている。

「だれ?……」

「おっ、目ぇ覚めたか!」

 ベゴンだ。

「俺がココまで運んだんだよ。だいぶうなされてたぞ? その証拠に……今日はあの修行の日から一週間がたってる」

「え!?」

 俺は思わず体を起こした。

 その時初めて、ここが自室だということが分かった。 


「ずっと……寝てたのか」

「あぁ。俺もついさっき、様子を見に来たんだ」

「ありがとう」

 ふっと横を見ると、クローゼットの前に剣と銃が立て掛けられていた。

「やっぱ夢じゃないか……」


「……まあ、ゆっくり休めよ。グノウも休暇をくれるだろうからな」

 ベゴンは俺のそういい残して部屋を出て行った。


「……」


 ガシャン!!!


「!」


「わりぃ、もう一つ! 後でグノウのところへ行けよ! じゃあな!」

 ベゴンが突然戻ってきて、一瞬で帰っていった。

 

 俺の心臓が激しく鼓動を打っている。


「あれは……本当に俺だったのか?」

 俺は、脳裏に焼きついている、あのイメージを忘れることが出来なかった。

 今もまだ、信じられない。

 本当にアレが俺なら……


「俺、最低だ……」

やっと、武器を出すことが出来ました。


では、次をお楽しみに〜


できたら感想をくれたら嬉しいです。

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