−26話(後半):心の対話
この骸骨が俺自身??
意味が分からない……。
俺はまだ自分自身の目を疑っている。
骸骨が喋ってるし、動いている。
色んな意味で意味が分からない。
『まあ、この状況を信じれるやつなどいないか……』
「ここは……ティーゴストのあの鏡の世界じゃないのか?」
と俺は骸骨に聞いた。
すると骸骨は、
『ティーゴスト? あの男の名か。……あの男の力によってお前はこの精神世界へ送り込まれた』
それは何となく分かってる。と言おうとしたが、骸骨は続けて話を続けた。
『私は、お前の心を具現化したものと考えていい。誰にでも存在するものでは無いが……』
俺は何となく話が分かった。この世界では常識は元々通用しない。記憶の無い俺は、まだ戦いとか力とかを良く分からないけど。
でも誰にでも存在するものではないってどういうことなんだ?
俺は、そう聞こうとした。でもまた骸骨は話を続けて話し始めた。
『お前は特殊な人間だ。あいつはそれを知っているようだ。だからこの修行を行っている』
「あいつ?」
『お前の所属する組織のボスだ』
グノウのことを言っていると理解した。
その時俺は嫌な予感がした。グノウがもしかすると俺の記憶に関わっているのかもしれないと。なぜかは分からないけど、頭にその考えがよぎった。
『……』
その時、いきなり骸骨がさっきまでとは違って、その場で黙り込んだ。
「どうしたんだ?」
心配になった俺がそう声をかけても、全く反応しない。
(何だ? 怖いな……)
今の骸骨の顔はただならぬ恐怖のオーラを醸し出している。
怒っているのか何なのか……。
『そろそろ戻るか?』
突然骸骨は顔を上げて話しはじめた。
「でも体が……」
まだ体が動かない。動こうとしても何かに拒絶されるような感じがする。
『大丈夫だ。私に任せろ』
そういった骸骨は俺の傍でしゃがみ、背中に手を乗せた。
『私の名前はガロン。これで、武器が手に入る。また会おう……』
「ガロン……」
その時俺を眩い光は俺を包み込んだ。
―――
光が消えたら光景がトレーニングルームに変わった。
「戻った」
俺は、さっきまでの最悪だった体調も完全に回復していた。体がすごく軽く感じる。
「お疲れ様です」
ティーゴストが俺の背後から歩き、俺を通り過ぎた。
「結局俺の精神世界だっていう、あの世界は何なんだ? 武器を得ることに意味があるのか?」
「誰かと会いましたか?」
「え?」
俺はその問いに頭を悩ませた。それまでは、体が軽くなったという安心感とかで忘れていたが、俺はあの世界で骸骨に会った。
「ガロン……」
去り際にあの骸骨が名乗った。それを俺は今思い出した。
「会えたようですね。では……今回の修行は終わりですので、部屋に戻ってください」
そういうとティーゴストは、長い前髪をひらっとさせた。そしてそのまま部屋を出て行った。
「……。武器、見つかってないのに……」
俺は少しの不安と疑問が頭に浮き出てきた。
でも、今はティーゴストの言うとおりにしたほうがいいだろう。と思った俺も、部屋を出て自分の部屋に戻った。
―――
部屋に戻ったらそこにはもう、グノウとティーゴストの姿は無かった。
「そういえば、怪我してたんだよなアイツ。グノウもやってきて……」
すごく懐かしく感じる。ちょっと前のことなのに、ずいぶん昔のことのように感じる。
「はぁ……」
突然体の力が抜けた俺は、ベッドに寝転んだ。天井を見上げたまま、無心でずっと。
この数日、ありえないことが起こった。
自分が自分の精神世界に行って、骸骨・ガロンと出会った。その骸骨は……俺が話す前にいつも話を始めていた。まるで、俺の心を読んでいるかのように……。
「!」
俺はその時、全ての謎が解けたような、そんな感覚になった。
「そうか、そういうことか。ガロンは俺自身と言った。つまり……」
ガロンは俺の考えていることを全て分かっている。それなら、話を聞かずに次々と話を進めることにも納得がいく。
(そういうことなら今俺がガロンに話しかけることも可能なんだろうか?)
『その通りだ』
俺の中でガロンがそう言った。不思議だ。この感覚は空耳を聞いている感じだ。
(お前は俺の心を具現化した存在なんだろ? じゃあ、こっちの世界に来ることは出来ないのか?)
『それは分からない。だが、私の力をお前が使うことは可能だ』
(ガロンの力?)
『そうだ。そもそも武器と言うのはその者の心の力だ』
(つまり、俺はガロンと一緒に戦うのか?)
『結果的にはそうなるな』
そんなやり取り続けていた。
―――その頃、グノウは自室にチェイグティとロウクゴットを呼び出していた。
「組織内での抗争は違反に値する……」
グノウは静かに怒りを表している。
「申し訳ありません、グノウ様」
チェイグティは片膝を付いて頭を下げた。これは本心ではないかもしれないが、今はそんなことは言っていられない。
「すみません」
ロウクゴットは体に包帯を巻いた状態でその場で立ったまま、一度頭を下げた。
「2人にはそれ相応の罰が必要だ」
「何なりとお申し付けください」
チェイグティは汗を一筋たらし、そう言った。その表情は焦りからか、やや曇っている。
「上級守護獣を2匹拘束し、連れて来い」
「! 2匹……」
ロウクゴットの何か詰まったような表情から、その任務の難しさが窺がえる。
「分かりました。……行くぞ、ロウクゴット」
チェイグティは立ち上がると、ロウクゴットの体を引っ張り部屋を出て行った。
「フフフ。さてどう出るか……」
1人部屋に残ったグノウは不敵な笑みを浮かべた。
久々の更新でした。
話はもう出来上がってたんですが、投稿するのをずっと忘れてまして……。
とまぁ、そろそろ夏休みと言うことでこれからは積極的に定期的に更新していくので!!!
小説のほうは、まだまだ謎な部分も多いし明かされて無い面も多いです。
バトルにも中々入れていない状況ですし。。
ではもしよければ、ご意見・ご感想・評価のほうをお願いします。