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−29話:守護獣(ガーディアン)

 “(テネブラ)”としての第三日目。

 俺はいつもどおり、ベッドから起き上がって目をこすった。

 周りを見渡すと、ドア付近の壁に何か紙が張ってある。

 また、グノウからの指令なのか?

 と推測した俺は、ドアに近寄った。

 するとその紙には、


    準備ができ次第トレーニングルームに向かえ


 と書いてあった。

 今日は、大広間には集まらないようだ。

 

 特に準備をすることがない俺は、すぐさまトレーニングルームに向かった。


 トレーニングルームのドア前に着くと、そこに一人男が立っていた。

「よーやく来たかぁ。早速トレーニングをはじめるぞ」

 無造作な金髪で前髪は後ろに流し、一塊の毛だけが前に長くたれている。目は標的を射抜くようなするどい金色の瞳。

「っとまあ、トレーニングはしねぇんだけどな!」

「……」

 俺は言葉が出なかった。その風貌からは想像できないような軽いキャラに俺は、なんて反応したらいいのか分からなかった。

「ほら、入れ」

 その金髪の男は、トレーニングルームのドアを開けて中へと入った。俺も男に続いて中に入った。


「さて、今日は俺たちの敵についての説明だ」

「敵? 人間じゃないのか?」

 俺が昨日ここにきたときにあった、パッフィムという霧は今日はすでになかった。

「確かに人間も標的になる。だが、人間以外にも俺たちの目的を邪魔するやつらがいる」

「……」

 変に緊張した俺は、一回つばを飲み込んだ。

「そいつらの名は、守護獣(ガーディアン)。世界のいたるところに存在している、人の姿をした獣だ」

「?」

「理解が鈍いな……坊や」

「坊やって言うな!」

 なぜか、そう呼ばれることにムカついた。せっかくレグオズという名前がついたのに、これじゃ何で名前がついたのか分からない。

「ふっ、あだ名だよ。……で、その守護獣(ガーディアン)は人を食らって生きている」

「!! 人を食べるってことか?」

「そーだ」

 どういうことか俺には分からなかった。

 俺には記憶がないとはいえ、食事とかのことは知ってる。いくら獣でも人の形をしているならほかの魚とか肉とかを食べるもんじゃないのか。

「よく分かんないな」

 そう言うと、男はニヤリと笑った。俺はそれに少しの恐怖を覚えた。

「人の形をしているっつっても、もとの姿は獣なんだ。獣の理性があるんだろ」

「……」

 俺はますます意味が分からなかった。

 人であり獣? 意味がさっぱり分からない。


守護獣(ガーディアン)には3つのクラスが存在する。上級守護獣(ガーディアン)中級守護獣(ガーディアン)下級守護獣(ガーディアン)だ。下級は何千体以上も存在して、力も弱い。中級は体も少し大きくて凶暴性が増してる。数は数百体くらいだな。そして厄介なのが上級のやつらで、数は全宇宙に9体しかいない。凶暴さや獰猛性はトップクラスで、俺たちと同等かそれ以上の力を持ってる。こいつらは無差別に人を攻撃してくる。目的があるのはないのか……。でも、誰かそれを統率しているやつがいるの確からしい」

 

 話が長くてよく分からなかったが、上級はかなう相手ではなさそうだということが分かった。そしてそれが俺がこれから戦っていく敵になるということを……

 

「まあ、上級なんてやつらはめったに現れないからな」

「そうか……。そういえば、お前はなんて名前なんだ?」

「言ってなかったか? 俺は、第4の組織員ロウクゴットだ」

(ロウクゴットか……)

 俺はしっかりと新しい記憶の1ページとして頭に刻み込んだ。


「ちょっと早いけど、今日の修行は終わりだ。しっかり休めっつっても、ぜんぜん疲れてねぇか……」

「……」

「まあ、ちゃんと俺の言ったコトを復習しとけよ」

 ロウクゴットは頭を書きながらそう話すと、闇の渦を出現させて、その中へと消えていった。


 復習しとけといわれなくても、俺の頭の中にはしっかりと全ての話がき刻みこまれてる。まだまだ記憶の少ない俺は、なんでもすぐに頭に入ってくる。

 便利なようで、若干不安もある。

 昔の俺が記憶を失った理由(わけ)がもし、事を覚えすぎてあふれ出てしまったとかなら、俺はまた記憶を失ってしまう。

 そうでないことを祈るばかりだ……。


 部屋に戻った俺は、ベッドに寝転んだ。  

 特に疲れていたわけじゃないのに、なぜか真っ先にベッドへ向かった。

「はぁ……」

 俺は、濃いため息を漏らした。

 理由は自分でもよく分からないけど、多分疲れとかそういう(たぐい)のものでは無い。

「暇だな……こんな時って何をすればいいんだ? 散歩とかかな?」

 でも今の俺には、歩く気力が湧き出てこなかった。

 それの理由も分からない。

 ついに俺は、目を閉じた。ここまできたら寝るしかない。


――――

「レグオズはどうだった」

「ふっ。やはり反応指数は軽く10000オーバー。そろそろ武器を教えてやる時期だろ?」

 この城の廊下でチェイグティとロウクゴットが話をしていた。

「それを導く役目が……ティーゴストだ。昨日、グノウ様がそう言った」

 その昨日の会話は、グノウとチェイグティの2人だけで、暗い薄暗い部屋で行われていた。

「ふっ、わざわざ様までつける必要があるのか? 特にお前がな」

 ロウクゴットは軽く鼻で笑った。

「どういう意味だ。あのお方は絶対的な存在だ」

 チェイグティが目をぎらつかせ、ロウクゴットをにらみつけた。

「おーおー怖い怖い。ま、お前の思惑通りにことが進むかどうかは……アイツ次第だな」

「これ以上、的外れなことをいえば殺すぞ」

「……やってみるか?」

「……上等だ!」

 互いをにらみ付け合った2人は広い廊下をまたぐように間合いを取った。


「吹き荒れ、我に風の魂を……」

 チェイグティが右手を天に伸ばし、そうつぶやいた。

「激しく鳴きを上げ、我に雷の魂を……」

 それに対しロウクゴットは、両手を横に広げた。


 そしてその時……

 チェイグティの掲げた手に激しい風がまとわりついた。その風は、徐々に何かを形作っていく。そして風は大きな槌へと変化した。その槌は青い色をし、奇妙な形をしている。長く、先は2つに分かれている。

 それに対し、ロウクゴットの両手には、雷のようなものがまとわりついている。その雷も何かを形作っていく。そして、その雷は各手に槍を生み出した。金色の刀身で、刃は両頂点についている。刃先は鋭くとがり、全てを貫くような、そんな感じさえする。


「さあ、殺し合いだ!」


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